【18-03】大学イノベーションインテリジェンス導入の新たな動向 注目は 「985」でも「211」でもなく「111」

2018年9月6日 李艷(科技日報記者)

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 2006年から始まった「111プロジェクト(大学学科イノベーションインテリジェンス導入プロジェクト)は、継続的に調整が加えられ、目標が一層鮮明になっている。その目標とは、世界一流の学科、学部、研究拠点を構築することを目指し、中国全土の地方大学向けに開放して、選出された地方大学の人材導入業務を促進し、1998年から始まった985プロジェクトの対象大学などの中央部門直属大学との差をある程度縮めることだ。

 最近、中国の国家外国専家局と教育部が共同で「2018年度地方大学の新建学科新設・イノベーション人材導入拠点のプロジェクト立ち上げに関する通知」を発表した。111プロジェクト開始から12年経った今年、再びインテリジェンス導入拠点25ヶ所の増設に向けてプロジェクトが立ち上げられた。それら拠点の設置期間は5年で、1年当たりのサポート経費は180万元以上だ。5年の間に、それら拠点は世界で最も優秀な人材を導入し、中国の学習、融合、発展に貢献してもらわなければならない。

 広く知られている985プロジェクトや211プロジェクトと比べると、イノベーションインテリジェンス導入プロジェクトは、海外人材を導入することから着手し、業界関係者の間では大学の発展のための重要な措置との見方で一致している。

重要な意義を持つ国際的な競争力に照準を絞った111プロジェクト

 111プロジェクトは、中国の世界一流大学等の設置を推進するのが目的だ。端的に言うと、世界ランキング100位内に入っている著名な大学や研究機構の優位性を誇る学科の中から、優秀な人材1000人を導入して、ハイレベルの研究チームを作り、世界一流の学科イノベーションインテリジェンス導入拠点約100ヶ所を設置する。そのため、「111プロジェクト」と呼ばれている。

 中国人事科学研究院の副研究員・呉帥氏は、科技日報の取材に対して、「111プロジェクトは、2006年から、教育部と外国専家局が共同で実施し、国際学科の発展に常に照準を絞り、国の目標を中心にし、国家重点学科を基礎に、外国の人材や知恵を導入して、国に貢献してきた。インテリジェンス導入を通して、中国国内の学科の発展や人材育成を促進することは、中国の科学研究や教育の水準の向上にとって、大きな意義を帯びている」との見方を示す。

 呉氏は、人材強国、教育、テクノロジー人材の育成の3分野を結合し、整ったクローズドループを形成することが、このプロジェクトの最大の意義で、価値のあるポイントとの見方を示す。

 「111拠点」は、学科イノベーションインテリジェンス導入拠点建設プロジェクトの形式で実施され、「統一した計画やサービスの需要、科学教育の融合、優れたものを選んだ建設、動向管理」という原則に基づいて進められている。

 これまでに選ばれてきた「111拠点」の目標は全て、国際的な影響力を誇るテクノロジー成果を生み出し、国際的な競争力や中国の大学の全体的な水準、国際的な地位を向上させ、中国の世界一流大学建設を推進することだ。

方向が継続的に調整 今年も新たな動向

 公式ファイルの規定によると、各「111プロジェクト」インテリジェンス導入拠点には5年で900万元以上が助成されることになっている。始動した年である2006年、「111プロジェクト」は、教育部や工業信息(情報)化部、国家民族事務委員会、国務院僑務弁公室、中国科学院など所属の「211プロジェクト」と「985プロジェクト」により中央部門直属大学に認定されていた大学だけが対象となった。

 しかし、その対象は2016年に大きく調整された。同年、初めて地方の大学もその対象となり、地方大学15校が選出された。2017年には、地方大学21校が選出された。2018年にはさらにその数が増え、地方大学25校が選出された。

 呉氏によると、「選出された大学のリストを見ると、今年選出された大学は基本的に、高い実力を誇る省属重点大学だ。うち、一流大学建設大学が2校、一流学科建設大学が9校、その他の地方重点大学が14校を占める」。

 今年のもう一つの特徴は、人文・社会・科学の分野の大学の選出が明らかに増加した点だ。

  データの変化から、「111プロジェクト」は継続的に調整が加えられているものの、目標は一層鮮明化していることが分かる。その目標とは、世界一流の学科、学部、研究拠点を構築することを目指し、中国全土の地方の大学向けに開放して、選出された地方の大学の人材導入業務を促進し、985プロジェクトの対象大学などの中央部門直属大学との差をある程度縮めることだ。

 呉氏は、「『111プロジェクト』は十数年、時代に即して変化が加えられてきた。2016年と2018年には大きな調整が加えられた。今年発表された『通知』を見ると、国家重大戦略の需要やテクノロジーイノベーションの任務、学科の発展、地方経済・社会の発展の需要に一層照準を絞り、研究任務を洗練して実行するという姿勢が見られる。拠点管理と運行メカニズムを継続して改善し、外国人専門家チームの中国における技術教授・科学研究、訪問・交流活動などを統一して計画し、外国人材が、学科のイノベーションにおいてその特有の役割を果たすことができるようにしなければならない」と強調する。

 そして、「これら全ては、国家発展の過程での需要と密接な関係がある。中国共産党第18回全国代表大会開催以降、政府は、国家重大プロジェクトと重大需要の問題を解決し、オリジナルイノベーションの推進に取り組まなければならないと強調している。そのため、『111プロジェクト』は、今年も必要な調整が加えられた。中でも明確なのは、技術系、基礎研究系のプロジェクトでは、最先端の議題が選出されている点で、さらに、ハイエンド機器などをめぐるプロジェクトも選出されている。それら全ては中国が重点的に発展させ、難関突破が急務な分野だ」と指摘する。

中国国内外の人材に通用する体制のイノベーション模索

 実際には、「111プロジェクト」には専門家らが大きな期待をかけている。呉氏は「『111プロジェクト』は、中国国内外の優秀な人材を組み合わせ、基礎研究能力を強化するためのとても良いスタイルだ。特に、近年継続的に調整が加えられるにつれ、インテリジェンス導入の幅や深さも大きく変化、向上している。今年認可された『111拠点』の数は、過去最多で、人文・社会・科学分野の7プロジェクトをカバーしている。政府が科学教育の融合や外国人人材の導入に強い決意を持って力を入れていることを示している」と分析する。

 しかし、12年の発展を経て、「111プロジェクト」の実施過程でも、多くの課題も存在していることは注目に値する。元培教育科学研究院の洪文・副院長は、「国外の大学や科学研究管理体制と中国のそれとの間にはまだ大きな差がある。外国の優秀な人材の考え方や業務スタイルも、中国の教師や科学者とギャップがある。双方は協力の過程で、いかに違いではなく共通点に目を留め、互いに適応し、協調し合うかが、多くの拠点にとって課題となっている。今後の発展において、いかにそれらの課題を乗り越えるかが、『111プロジェクト』が最終的に成功するかのカギとなる」との見方を示す。

 呉氏は、「外国人材の管理の観点や管理自主権の線引きという面では、さらに一歩進んだ試みもできる。中国と海外では科学研究管理体制において大きな差がある。それには、外国人専門家と中国国内の学科のチームの協力という問題が関係している。協力のメカニズムや2種類の制度を融合した『新しい道』を歩むことが急務だ。その道は、国外の体制でもなく、国内の科学研究管理体制でもなく、中国の特色を持ちながらも、中国内外の人材チームに適した管理のメカニズムで、それは、『111プロジェクト』の最終的な発展や科学教育融合の新たな方向性に大きな意義を持っている。その『新しい道』の模索は、中国の科学研究管理体制の発展にも積極的な影響を及ぼすかもしれない」との見方を示す。


※本稿は、科技日報「高校創新引智有新動向 985、211都out了,111了解一下」(2018年08月23日,第08版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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