田中修の中国経済分析
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【14-04】第13次5ヵ年計画

2014年 5月30日

田中修

田中 修(たなか おさむ):日中産学官交流機構特別研究員

略歴

 1958年東京に生まれる。1982年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。1996年から2000年まで在中国日本国大使館経済部に1等書記官・参事官として勤務。帰国後、財務省主計局主計官、信 州大学経済学部教授、内閣府参事官を歴任。2009年4月―9月東京大学客員教授。2009年10月~東京大学EMP講師。学術博士(東京大学) 

主な著書

  • 「2011~2015年の中国経済―第12次5ヵ年計画を読む―」(蒼蒼社)
  • 「検証 現代中国の経済政策決定-近づく改革開放路線の臨界点-」
    (日本経済新聞出版社、2008年アジア・太平洋賞特別賞受賞)
  • 「中国第10次5ヵ年計画-中国経済をどう読むか?-」(蒼蒼社)
  • 「中国経済はどう変わったか」(共著、国際書院)
  • 「中国ビジネスを理解する」(共著、中央経済社)
  • 「中国資本市場の現状と課題」(共著、財経詳報社)
  • 「中国は、いま」(共著、岩波新書)
  • 「国際金融危機後の中国経済」(共著、勁草書房)
  • 「中国経済のマクロ分析」(共著、日本経済新聞出版社)
  • 「中国の経済構造改革」(共著、日本経済新聞出版社)

 4月23日、国家発展・改革委員会は、第13次5ヵ年計画編成作業始動記者会見を開催し、計画編成作業始動の基本情況を解説した。本稿では、発展改革委首脳の主要発言の要点を紹介する。

1.李朴民秘書長

 18回党大会以来、わが国の発展は新たな段階に入り、直面するチャンスは未曾有のものであり、直面するリスク・試練も未曾有のものである。第13次5ヵ年計画期間(2016-2020年)は、わが国現代化建設プロセスにおいて非常にカギとなる5年であり、①小康社会の全面実現という目標の実現を勝ち取り、②重要分野・カギとなる部分で改革全面深化の決定的成果を得て、③経済発展方式の転換が実質的進展を得ることを確保しなければならない。このため、第13次5ヵ年計画は特殊重要な地位を占めるものであり、第13次5ヵ年計画をしっかり編成する意義は重大であり、影響は深遠である。

 新たな情勢・新たな任務は、第13次5ヵ年計画編成作業に対し新たな要求を提起した。深刻に変化する世情・国情、改革全面深化という歴史的な重大任務に直面して、我々は内外環境の変化の情況及び影響を深刻に認識し正確に把握し、戦略的思考とグローバルな視野を樹立して、①計画の性質と機能の位置付け、②計画の編成方法とプロセス、③計画の内容と表現形式等の方面において、大胆に模索・刷新し、時代と共に進み改革・イノベーションを行うことを堅持することにより、第13次5ヵ年計画を時代の要求に更に適応させ、発展法則に更に適合させ、人民の希望を更に反映させる。

 今年について言えば、重点は次の4方面の作業にしっかり取り組むことである。①前期の研究を深く手堅く行う、②「基本的考え方」を起草・形成する、③関連計画の編成作業を始動する、④計画の立法作業を積極的に推進する。

 各方面の知恵は、計画をしっかり編成するための源流であり、衆知を集めることは計画成功のカギである。開放的で民主的な計画編成を堅持し、前期研究を深化・実際化するため、我々は全局に関わる25の重大課題を選び、本日発表するとともに、公開入札方式を通じて社会のパワーを組織し研究を展開する。

2.徐林発展計画司長

(1)第13次5ヵ年計画の重点課題

わが国は現在すでに1人当りGDPが6700ドル余りに達し、既に中高所得国家の列に属している。我々の目標は第13次5ヵ年計画の努力を通じて世界銀行基準で高所得国家の列に接近したいということであり、もし更にうまくやれれば、高所得国家の列に入ることも可能である。当然、このような目標を実現するには、18回党大会で提起された小康社会の全面的実現という目標も含め、我々はなお脆弱な部分を有している。たとえば、我々の転換・グレードアップは決して特別理想的ではなく、もし高所得国家の列に入ろうとしても、現在の労働力コストがますます高くなり、資源・環境の制約がますます激化する条件の下では、イノベーションによる駆動と構造のグレードアップなくして実現は難しく、「中等所得の罠」の中で長期に徘徊する可能性がある。このため、どうすればイノベーションによる駆動、転換・グレードアップをより好く実現できるかは、我々の第13次5ヵ年計画が必ず重点的に研究を要する問題の1つである。

 また、我々は現在農業現代化建設を加速しており、中国は人口大国なので、食糧問題・食品供給問題は我々の永遠のテーマである。我々は過去に食糧生産の「10年連続増産」を維持しており好い成果を得たと言えるが、わが国の農業はずっと弱体産業であり、農業の労働生産性・現代化レベル・食品の安全等は、農村の発展、農民所得の持続的引上げを含め、いずれも大きなプレッシャーに直面している。これらの問題は、第13次5ヵ年計画において新たな方法を探し出して解決することが必要である。

 当然、我々は第13次5ヵ年計画においてその他多くの問題を抱えている。環境保護問題・生態文明建設問題などはいずれも庶民が特別に関心を払っている問題である。これらの問題について、我々は新たな考え方、新たな方法、新しく更に有効な体制・メカニズムを研究しなければならない。

 我々の過去の旧い方法ではうまく解決できない多くの問題がある。我々は新たな制度設計・新たなメカニズム設計により方法を探さなければならない。これらはいずれも、我々の第13次5ヵ年計画前期研究プロセスにおいて、真剣に対応を要する問題である。

(2)政府と市場の関係

 政府と市場の関係をどのようにしてより好く処理するかも、第13次5ヵ年計画編成プロセスにおいて重点的に研究を必要とする問題である。

市場と政府の関係を正確に処理し、確実に政府が役割を発揮すべき分野では、我々はその拘束性を強化しなければならない。計画には具体的内容の要求・目的の要求のみならず、手段の要求、考課・評価の要求もなければならない。

市場が役割を発揮する分野では、資源配分において市場に決定的役割を発揮させるという要求を体現させなければならない。第13次5ヵ年計画という大きな計画体系からすれば、競争的分野では計画編成を減らし、ないしは計画を編成しないようにしなければならない。なぜなら、これらの分野は主として市場主体が市場競争を通じて役割を発揮するのであり、政府の計画が編成されても役割を発揮できるか定かでなく、もし関与が過ぎれば計画は出過ぎた真似をしたことになるからである。

このため、このような問題を第13次5ヵ年計画編成プロセスにおいて我々がしっかり把握することにより、我々の計画が不十分にも出過ぎたことにもならないようにし、政府と市場の役割がいずれもより好く発揮されるようにしなければならないと考えている。

(3)地域の協調発展

 地域発展の問題では、我々は過去に最も早く沿海で経済特区の設立・都市の開放を経験した。こうして、沿海地域が率先して開放・発展を進めてきた。その後、さらにそれぞれ西部大開発、中部興隆、東北等旧工業基地振興等の一連の地域計画・政策を打ち出してきた。

 十数年の努力を経て、わが国の地域発展格差は既に縮小傾向が現れており、とりわけ東部地域と中西部地域について1人当りGDPを用いて量った相対的格差は、既に縮小傾向にある。このことは非常に積極的な進展である。しかし現在、地域の協調発展のメカニズムはまだ完全には確立されていないと我々は考えている。このため、第13次5ヵ年計画は、健全な地域協調発展メカニズムをどのようにしてより好く整備するかという任務に直面している。とりわけ我々が注意しているのは、中西部地域の経済発展速度が加速するにつれて、現在東部沿海地域の転換・グレードアップのプレッシャーがますます大きくなっていることである。我々は第13次5ヵ年計画において、東部沿海地域の優位性をどのようにして発揮させることができるかを更に好く考慮することにより、東部沿海地域に転換・グレードアップの面で全国の前列を歩ませ、全国の転換・グレードアップを牽引する役割をより好く発揮させることを考慮することになろう。

 我々は研究を通じて東部地域には現在、より良好な経済的基礎があることを発見した。GDP総量が全国の総量に占めるウエイトは57%に接近しており、東部地域が毎年生み出す特許件数は全国の70%余りを占め、東部地域の労働力中高等教育を受けている者のウエイトは全国平均水準と比べて10ポイント近く高く、さらに東部地域は開放・市場化改革の方面においてもより良好な基礎がある。

 このため、我々は第13次5ヵ年計画を全国1つの碁盤という角度から見た場合、現行の西部大開発、中部興隆、東北等旧工業基地振興政策の基礎の上に、東部沿海地域の役割をより好く発揮させることを十分に考慮しなければならないだろう。なぜなら、東部沿海地域の転換・グレードアップがなければ、私の見るところ全国の転換・グレードアップはありえず、東部沿海地域が決定的な役割を担っているからである。

3.第13次5ヵ年計画前期研究の重大課題目録

(1)国際環境の変化及びわが国の発展に対する影響
(2)経済の転換・グレードアップの動力メカニズムと制度・環境
(3)イノベーション駆動による戦略の重点とイノベーション型国家の建設
(4)教育の現代化と人材強国・人的資源強国建設の推進
(5)経済構造調整の主たる攻め口と戦略措置
(6)消費需要拡大のための長期有効なメカニズム
(7)工業の構造のグレードアップと配置の最適化
(8)現代農業の発展戦略と食糧安全戦略
(9)情報経済の発展
(10)戦略的新興産業の発展
(11)サービス業発展の重点とメカニズム
(12)住宅保障システムと不動産の健全な発展
(13)わが国の地域発展の重点と地域の協調発展メカニズム
(14)生態文明の建設及び制度
(15)環境対策の重点及びモデルの刷新
(16)地球気候変動への対応及びグリーン・低炭素の発展
(17)社会主義文化強国の建設
(18)人口の発展戦略と政策
(19)健康の保障・発展問題
(20)貧困扶助・脱貧困のメカニズム整備
(21)国有企業改革と非公有制経済の発展
(22)公共サービスの重点と財政保障メカニズム
(23)金融市場システムの整備とリスク防止
(24)対外開放戦略及び開放の新たな構造
(25)わが国企業の「海外進出」発展戦略