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中国製造業の発展と「中国製造2025」計画(その1)

2015年10月30日  郭朝先(中国社会科学院工業経済研究所)、 王宏霞(中国社会科学院大学院)

概要

 現在、中国はすでに世界一の製造業大国となり、世界一の生産量を誇る工業製品も少なくなく、一部製品では国内生産量が国外生産量の総計を上回るほどである。但し、中国の製造業は「大きくとも強からず」であり、一人当たり生産額で比較すれば製造業強国である米・日・独の1/3にも及ばない。中国の製造業はなお、技術の遅れ、生産能力の過剰、資源利用効率の低さ、労働力に対する給与の急激な上昇、低迷する利益率、国際バリューチェーンにおける低付加価値という位置づけ、などの多くの問題に直面している。今後30年間、中国における製造業発展の主眼は、「大から強へ」となろう。「中国製造(メード・イン・チャイナ)2025」は中国の製造業大国から製造業強国への転換を促すための試験的取り組みとして打ち出した、初の専門的プランである。「中国製造2025」とは、第三次産業革命や「インターネット・プラス」の技術開発、先進国における「再工業化」に対応するものとして生まれ、その内容を概括すれば「11223410」計画に集約できる。すなわち、「一大使命、一大基本路線、二大方向、二大任務、三大ビジョン、四大モデル転換、十大分野」である。「中国製造2025」のプランが目指す効果を達成するためには、一連の問題を解決する必要がある。これにはイノベーション主導の発展戦略の実施、新たな経済インフラの整備、実体経済分野への資源配分、重点技術・分野リストの柔軟な変更、「工匠精神(職人魂)」を打ち出した技能人材育成の強化、国外のノウハウの参照、などの課題が含まれる。中国が製造業において「第三グループ」から「首位グループ」へ順位を上げるためには、「中国製造2025」だけでは到底不十分であり、引き続き「中国製造2035」、「中国製造2045」の採択と実行などの取り組みを進める必要があり、これら計画は、中国が今世紀半ばを目途に製造業の「第一グループ」入りを果たし、真の製造業強国になるためには不可欠である。

キーワード:中国製造2025 、製造業大国、製造業強国、インダストリー4.0

 製造業は国民経済の重要な基幹・基盤である。今まさに工業化プロセスを加速させている中国にとって、製造業の発展はとりわけ重要である。1949年の中華人民共和国の成立以降の製造業の発展過程は、大まかに二つの段階に分けられる。第一段階は、1949年の建国から1978年の改革開放初期までの時期であり、製造業発展の主眼は「無から有へ」を実現することにあった。約30年間を経て、中国は独自の比較的整った工業システムや国民経済システムを概ね構築した。第二段階は、1978年の改革開放から21世紀最初の10年間までである。2010年までの製造業発展の主眼は「小から大へ」の実現である。30年余りの発展を経て、中国はすでに世界最大の製造業大国となった。但し、中国の製造業は「大きくとも強からず」であり、製造業強国ではなく、世界の主な製造業強国と比較するとまだ大きな格差がある。世界の主な製造業大国のうち、中国は「第三グループ」に属している。今後30年間における中国の製造業発展の主眼は、「弱から強へ」の転換となろう。まもなく発表される「中国製造業発展綱要(2015~2025)」プラン(略称:中国製造2025、メディアの報道では「中国版インダストリー4.0プラン」とも)こそ、中国の製造業大国から製造業強国への転換を促すための試験的取り組みであるが、製造業大国から製造業強国へのステップアップを図るためには、「中国製造2025」プランのみでは到底十分でなく、更なる努力が求められる。今後制定される「中国製造2035」プラン、「中国製造2045」プランに沿って、製造業の「第三グループ」から「第二グループ」、さらに「第一グループ」への躍進を目指して段階的な取り組みを進め、今世紀半ばには「第一グループ」入りを果たして真の製造業強国となることが求められる。

一.中国はすでに世界一の製造業大国

 中国の産業分類に基づくと、工業は鉱業、製造業、電力・熱供給・ガス・水の生産及び供給という、三部分に分類される。このうち、製造業は工業の主体で、通常は工業生産額(付加価値ベース)の80%程度を占める。一方、工業は第二次産業(これには建設業も含まれる)に属し、第二次産業の主体として、通常は第二次産業の生産額(付加価値ベース)の85%以上を占める。データ取得の容易さや記述の便宜を考慮し、本稿では製造業データの代わりに工業のデータを採用する。また第二次産業のデータにも一部言及する。

1.成長状況

 図1は、中国における工業の成長状況を示したものである。1978年の数値を100として計算すると、2013年の工業の成長指数は4,164.0となり、40倍余りの成長を遂げたことになる。同期間、GDPの成長指数は2,608.6で、25倍余りの成長に留まる。また、2013年の第一次、第二次、第三次産業の成長指数はそれぞれ474.9、4,105.3、3,542.6となり、工業の成長指数は第一次産業(農業)や第三次産業(サービス業)を上回り、また工業が属する第二次産業全体の成長速度も上回った。1978年から2013年までの間、工業は国民経済の中でも最も力強い成長分野であった。

図1

図1 中国における工業の成長指数(1978年=100)

出典:「中国統計年鑑(2014)」中国統計出版社、2014

 図2は、中国において工業が国民経済に占める比重を示したものである。1978年、工業生産額(付加価値ベース)がGDP全体に占める比重は44%だった。その後、次第に比重を下げて1990年には37%となり、その後上昇に転じて1997年の42%となった後、再び下降に転じて2002年には39%となり、さらに上昇に転じて2006年には42%となり、再び下降に転じて2013年は37%であった。改革開放以降、中国の工業は小から大への変化を遂げ、工業の成長指数も最も急速に伸びた。但し、長い間、工業の国民経済における比重は全体として横ばい(40%ライン上で推移)であり、比重は増えていない。この原因は、工業の構成比を当年価格に基づき計算したことにあり、工業製品の供給が充足するに従い、工業製品の価格が全体として常に下降する傾向にあったためである。工業製品価格の下降は、国民に経済的な恩恵をもたらす。つまり、工業がその国の国民経済にとっての「支柱」あるいは「筋骨」であるばかりでなく、重要な民生産業でもある。事実、比較的長いスパンで見ると、工業の比重は下降傾向にあり、1997年の44%から2013年37%へと7ポイント下げている。つまり、現段階の中国における産業構造の変化は、工業化進展の一般的な法則性に合致している。工業化の進展に伴う第一次、第二次、第三次産業の構造変化は、通常の法則から言えば、経済発展に伴って第二次産業が第一次産業を凌駕して主導的な位置づけになり、その後第三次産業の発展に伴って第二次産業が第三次産業に凌駕されるというプロセスを辿る。すなわち、産業構造は「一二三」モデルから「二一三」、「二三一」モデルへと移行し、最終的には「三二一」モデルへと移行する。

図2

図2 中国の工業の国民経済における比重(当年価格に基づく計算)

出典:「中国統計年鑑(2014)」中国統計出版社、2014

2.総量規模の国際比較

 図3は、米ドル換算額(当時の為替レートを採用、以下同)を尺度とした中国及び世界の工業規模の変化と、世界の工業に占める中国の比重を示したものである。米ドル換算額で計算すると、1995年における中国の工業規模は4,000億米ドル足らずだったが、2013年には4兆米ドルとなり、規模が10倍に拡大したことがわかる。同期間、世界の工業規模は1995年の10兆米ドルから2013年の20兆米ドル(価格変動要素は考慮せず)に拡大した。これを基に計算すれば、中国の工業が世界の工業に占める比重は大きく増え、1995年の4%足らずから2013年の20%に拡大したことになる。

図3

図3 世界全体の工業規模における中国の比重

出典:国連統計データベース(http://data.un.org/)。

 国別比較では、1995年以前、中国の工業規模は主要先進国(図4)に比べて小さかった。1995年以降は、「追い付き、追い越し」の傾向が強くなり、1995年には中国の工業規模が初めてイタリアを抜き、1996年はさらに英国やフランスを抜いた。2001年にはドイツを抜いて世界第三位に、2006年には日本を抜いて世界第二位に、さらに2011年には米国を抜いて世界一の工業大国となった。

図4

図4 中国と主要先進国との工業規模の比較

データ出典:国連統計データベース(http://data.un.org/)。

3.主な工業製品の生産量

 中国の工業製品生産量は世界でも重要な位置づけにある。2010年、中国の化学肥料生産量は5,553万トンとなり、世界の総生産量1億7,956万トンに対して、30.93%のシェアを占めた。2011年の自動車生産台数は1,842万台で、世界全体の総生産台数の7,993万台のうち23.05%のシェアを占めた。2011年の粗鋼的生産量は6億8,327万トンで、世界の粗鋼総生産量12億6,779万トンに対するシェアは53.89%にも達し、国内生産量が国外生産量の総計を上回った。2010年の綿生地生産量は680億5,000万平米で、世界の総生産量である1023億8,000万平米に対するシェアは66.47%に達し、国内生産量が国外生産量の総計のほぼ2倍に達した。2011年のセメント生産量は20億6,000万トンで、世界の総生産量である28億8,000万トンに占めるシェアは71.63%となり、国内生産量が国外生産量の総計の2.5倍に達した。[1]

 中国の工業製品生産量の成長に従い、中国の製品生産量の世界ランキングも絶えず上昇し、毎年のように世界一を維持している品目も少なくない。表1のデータを見ると、中国の粗鋼生産量や化学肥料生産量は1999年以降、常に世界一を維持している。セメント生産量は1985年以降常に世界一である。綿生地生産量は1978年以降常に世界の上位にあり、1999年と2000年のみ2位に後退したが、他の年は世界一だった。テレビ生産量は1990年に、自動車生産量は2010年にそれぞれ世界一となった。国連工業開発機関の資料によると、現在、中国の工業の競争力指数は136カ国の中で第7位に位置し、製造業の貿易黒字額は世界一である。国際標準産業分類に基づいて見ると、中国は22の大分類の7つで世界一となっており、鉄鋼、セメント、自動車など 220余りの品目で生産量が世界一になっている。[2]

表1 中国の主な製造業製品の生産量の世界順位
出典:過去の「国際統計年鑑」(中国統計出版社)をまとめて整理
製品名称 1978 1980 1985 1990 1995 1999 2000 2005 2010 2011
鉄鋼 5 5 4 4 2 1 1 1 1 1
セメント 4 4 1 1 1 1 1 1 1 1
化学肥料 3 3 3 3 2 1 1 1 1 1
綿生地 1 1 1 1 1 2 2 1 1 1
テレビ 8 5 3 1 1 1 1 - - -
自動車 - - - - - - 8 4 1 1

その2につづく)

※本稿は『経済研究参考』2015年第31期にて発表され、中国社会科学院より許可を得て翻訳・転載したものである。


[1] 国家統計局編「国際統計年鑑2012」、「国際統計年鑑2013」を基にデータを整理

[2] 馬建堂:「六十五年間の奮闘、鍛練、前進を経て壮麗な一章を記す——中華人民共和国成立65周年を祝う」『人民日報』2014年9月24日


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