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珠海:新たな出発点に立った経済特区、「新天地を開拓」

2018年9月20日 竜躍梅(科技日報記者)

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空輸飛行に成功した大型水陸両用機AG600「鯤竜」(001号機) 撮影:廖文峰

改革開放から40年 地域の力―

 珠海で開発され、最終組立を終えた中国初の大型水陸両用機AG600「鯤竜」(001号機)が8月26日、珠海を出発し、広東省、湖南省、湖北省の空域を経由し、湖北省荊門漳河空港に無事到着、空輸飛行(フェリーフライト)を無事終えた。これにより、同機は全面的に水上試験およびテスト飛行の段階に入った。

 これは、珠海が改革開放から40年間にわたり積み上げてきた多くの技術的成果の一例に過ぎない。1980年に経済特区となった珠海は、中国で最も早く対外開放政策が実施された4つの経済特区の1つである。かつては珠江デルタの小さな県だった珠海は、今では珠江口(珠江の河口湾)西岸の重要都市へと発展した。この過程において、大きなサポートとけん引の役割を発揮しているのが科学技術だ。珠海はこの40年、常に科学技術革新の最先端を走ってきた。▽全国に先駆けて、突出した貢献を果たした科学技術者に巨額の賞金を授与▽全国初となる「三来一補(注:委託加工貿易と補償貿易の総称。三来とは、原材料とサンプルの提供による委託加工およびノックダウンを、一補とは補償貿易を意味する。)」企業を設立▽珠海市とマカオの境界に全国初となるクロスボーダー(越境)工業団地、「珠澳跨境工業区」を設立――。このほかにも、生化製薬工場、金山軟件(ソフト開発販売会社)、格力電器(GREE、家電製造会社)、雲洲智能(無人艇開発会社)など、「実力派」の革新型企業がたくさんこの地で生まれ、成果を実らせている。

 珠海市委員会書記の郭永航氏は、「新たな出発点に立った珠海は現在、『新天地を開拓』し、新たな発展の局面を切り開き、全国・全省の改革開放に向けて道を探っている」と語った。

「全国一」の栄誉に幾度も輝く

 珠海珠華大厦(ビル)の向かいにある公園では、青々とした並木が影を落とし、通行人があわただしく行き交っていた。この場所を知る記者によると、「ここは物語がある」そうだ。

 40年前、ここで全国初の「三来一補」企業——香洲毛糸紡績工場が誕生した。同工場は1978年9月に着工し、翌年5月から試験生産が始まった。数年間の努力を経て、香洲毛糸紡績工場の名声は広く知られるようになった。1984年に鄧小平が珠海を視察した際も、初めにこの香洲毛糸紡績工場を訪れ、工場の発展を高く評価した。

 資料によると、同工場は「1984年、毛糸計135万ポンドを生産し、52万元の利益を計上した。同年10月、香洲毛糸紡績工場は操業開始から5年に満たないうちに、投資元本および利息を完済した」と記載されている。

 同時期、珠海では雨後の筍のように多くの企業が生まれている。1985年末には、珠海で計140社あまりの企業が設立された。

 珠海市の1990年の年代記を調べたところ、当時から技術革新が非常に活発に行われており、上半期だけですでに多くの「全国初」「全国一」の字が並んでいた。▽中国が独自に設計した、海洋エネルギーを利用する初の発電所、万山鎮波力発電所の試運転が成功▽珠海経済特区九洲特殊紙工場と天津造紙技術研究所が共同で生産するファックス用紙の試験生産が成功、中国がこれまでファックス用紙を完全に輸入に依存していた状況が打破された▽珠海経済特区江海航運公司が建造した中国初の第1世代沿海省エネ型旅客ダブルエンド・フェリー「匯川輪」が就航▽中国初の4ウェイポータブル電子植字機、EP—901が誕生……

 1992年には御年88歳を迎えた鄧小平が再び特区を訪れ、「日々、月々、年々新しいものを創り出さなければならない。絶えず新しいものを創造することで初めて競争力をつけることができる」と強調した。

 この時期の珠海は、すでに革新・創業の中心地になっていた。1992年には、史玉柱(巨人集団CEO)が巨人高科技集団を珠海に移転した。雷軍(実業家)は珠海の金山公司本部で実習を行った。その後、全国各地からますます多くの創業者が、発展の舞台を探すために珠海を訪れるようになった。

世界のイノベーションの舞台にも「珠海」の文字

 8月16日、珠海南方ソフトウェアパークで、張雲飛氏は無人船の技術開発に取り組んでいた。

 張氏は、「珠海は香港にほど近いが、生活コストは安く、生態環境も良好だ。落ち着いて仕事に取り組むことができる」と語る。

 張氏は2010年3月に珠海を視察に訪れ、それから1カ月後にここに引っ越すことを決めた。そして、珠海雲洲智能科技有限公司を設立し、無人艇技術の開発と応用に取り組んでいる。

 張氏の選択は正しかった。珠海の地はすでに多くの福を彼にもたらしている。8年間の努力を経て、世界初の環境友好型無人艇、中国初の測量用無人艇、中国初の海洋調査無人艇、中国初のステルス無人艇などを相次いで開発、同社の名声は広く知られるようになった。

 張氏は「現在、当社はすでに多くの無人艇のキーテクノロジーを掌握し、新型材料、自主制御、遠隔通信、システムインテグレーション、複数の無人艇による協調のための技術などを網羅している」と語る。同社はすでに無人艇のキーテクノロジーに関する特許を100件近く登録しており、これは世界の同分野の特許の約4分の1に達する。このうち、自律航法、スマート障害物回避などのキーテクノロジーは世界をリードしているという。

 業界内で高い名声を得ている珠海の企業はこれだけではない。業界では並ぶもののないほどの業績を上げている企業もあるという。

 珠海欧比特宇航科技股份有限公司は衛星「珠海一号」の打ち上げに成功し、中国初の、衛星コンステレーションを独立して運営し、さらに商用運営する能力を持つ民間企業となった。

 珠海賽納打印科技股份有限公司は、中国初となるレーザープリンタを自主開発した。そのフルカラー光硬化型直接噴射式3Dプリンタは、人の臓器の模型を作成することができ、世界をリードする技術を有している。

 このように多くのテクノロジー企業の後押しもあり、世界、全国、全省のイノベーションの舞台において「珠海」の2文字をしばしば目にするようになった。

 2017年、珠海の人口1万人あたりの発明特許保有件数は50件に達し、省内2位となった。同年珠海が招聘した国家「千人計画(海外ハイレベル人材招致計画)」の専門家は43人、累計93人に達し、いずれも省内の地級市でトップとなった。珠海ハイテク産業開発区は国家ハイテク産業開発区のランキングで24位につけた。ハイテク企業の数が1400社を突破した。一定規模以上の工業企業のうち、研究機関を有する企業の割合が27%に達し、省内トップとなった。

 科学技術革新も、珠海の発展に新たな活力を注入し、持続的な原動力を提供している。2017年、珠海の総生産額は2564億7300万元に達し、広東省内における1人あたりGDPは深圳、広州に次ぐ3位となった。

広東という世界レベルの産業クラスタで重要拠点を目指す

 1992年3月9日、珠海は全国に先駆けて、突出した貢献を果たした科学技術者に巨額の賞金を授与した。特等賞を受賞した第一受賞者の賞金総額は100万元を突破した。広東省委員会元常務委員、珠海市委員元書記の梁広大氏は当時を振り返り、「100万元もの巨額の賞金を科学技術人材に授与したというニュースが広まると、珠海はたちまち全国の科学技術人材と創業者が熱視線を寄せる場所となった」と語る。

 珠海の改革革新の遺伝子は今も受け継がれ、発展している。珠海で近年打ち出された「珠海英才計画」「才能ある人材を招聘するため、5年間で67億元を投資」「人材誘致のため、就業を戸籍取得の前提条件としない」などの新政策により、特区の「新天地開拓」に向けて多くの有能な人材が集まっている。

 珠海市委員会組織部副部長の羅紅氏は「珠江デルタで最も優秀な政策で人材を誘致し、中国内外の優秀な人材と革新・創業チームを珠海に呼び寄せたい」と語る。

 珠海の企業も取り組みを進めている。格力電器は将来の更なる発展を見据え、再び大きな動きを見せている。

 格力電器は2018年8月14日、チップ製造に向けた実質的な一歩を踏み出した。珠海零辺界集成電路有限公司が設立したのだ(登録資本金10億元)。8月25日には、同社初となる(技術・管理)人材向けアパート(3000戸)の定礎式が珠海で行われた。2021年2月に完成予定という。

 格力電器の董事長兼総裁の董明珠氏は8月25日、「当社はすでに世界のエアコン業界でトップの名に恥じない業績を手にしている。しかし、それで十分とは考えていない。いつか格力のスマートデバイス、金型、生活家電が世界各地で使われるようになることを望んでいる」と語った。

 このほど、ある橋が完成したことで、珠海の未来がさらに有望視されている。その名は「港珠澳大橋」だ。同橋の開通後、珠海・マカオと香港が陸路でつながり、珠海から香港までの所要時間が30分前後にまで短縮された。このルートによって香港・マカオから大量の人や資金が珠海に流れ、珠海に香港、マカオの創業者が多く集まると見られている。

 暨南大学(広東省)の特区港澳(香港・マカオ)経済研究所教授の陳章喜氏は、「港珠澳大橋の開通後、香港経済のスピルオーバー効果はますます強化されるだろう。現代サービス業の中心である香港から影響を受ける地域は、これまでの北・東方向から、西方向にまで広がる。さらに、国外の「ベッドタウン」のようなものが形成される可能性もある。これはすなわち、珠海などの西岸地域に住みながら香港で仕事するというライフスタイルだ」と予測する。

 科学技術革新は、これまで40年間にわたり珠海のベースであり続け、珠海はこれによって多くの財産を築き、エネルギーを貯蓄した。将来は、いかにして科学技術革新の役割をより良く発揮していくべきだろうか?

 郭永航氏は「珠海が現代的な経済システムの模索を行うには、産業計画と産業の誘導を全面的に強化し、革新という第一の原動力を堅持し、人材という第一の資源を上手く活用し、現代的産業体系というキーワードを十分に把握し、広東という世界レベルの産業クラスタにおける重要拠点となれるよう、努力していく必要がある」と指摘する。


※本稿は、科技日報「珠海: 老特区在新起点上“二次創業」(2018年09月03日,第07版)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。


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