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量子制御研究国家重大科学研究計画『12・5』特定計画

2012年5月 科学技術部

概要

「実用的量子暗号技術と量子通信技術、鉄系超電導とトポロジカル絶縁体などの研究領域において一連の世界トップレベルの重要成果を獲得した」。こうした自信を踏まえ、「量子制御研究国家重大科学研究計画『12・5』特定計画」は、量子計算、冷却原子系、相関電子新材料開発と量子情報技術の統合などの面でさらに強化が必要だとして、詳細な目標を掲げている。

 また、プロジェクト・拠点・人材の結合のため、地方政府と企業が量子科学技術サポートプラットフォームの建設に積極的に参加するように誘導するとしている。


量子制御研究国家重大科学研究計画「12・5」特定計画

一、情勢と需要

 前世紀初めに、量子力学の創始者はミクロ世界には豊富な量子効果が存在することを人々に深く理解させ、物理、化学、材料、生物などの学科の発展を大幅に進め、人々の自然に対する認識を根底から改めた。量子理論の発展は、大規模集積回路を基礎とする計算機技術とレーザーを基礎とする現代通信技術などによってグローバル経済の飛躍的発展をけん引することになった。

 ムーアの法則は、チップ素子の寸法が近い将来に古典物理学の極限に達し、各種の量子効果が出現して、かつ一般的現象になることを予言している。故に、量子効果に基づく新原理と新方法は将来の情報技術の重要な基礎となるので、すでに現在の国際科学技術界の激烈な競争の焦点となっている。

 量子制御とは、量子現象と法則の認識を基礎とし、新材料の開発、新構造の構築、新たな物質の状態の発見および外場条件の変更などの手段を通じて、量子現象の制御と開発利用を行い、古典制御の極限を突破し、新しい量子制御技術と量子デバイスを構築することである。量子制御研究の実施は、大きな可能性と重大な戦略的意義があり、情報科学技術の開発に計り知れない影響がある。量子情報、関連電子システム、小規模量子システムおよび人工バンドギャップ系といった重要領域を研究計画へ有機的に統合し、情報産業全体の技術革命を推進し、経済と社会の発展を促進する。

 量子制御研究計画を実施して以降、わが国は量子制御分野の研究水準が著しく進歩し、関連分野で一連の重要なブレークスルーを達成してきた。

 実用的量子暗号技術と量子通信技術には重大な進展があった。商業用光ファイバーバックボーンネットワークの中で初めて量子暗号通信メトロポリタンエリアネットワークを運行した。世界初の「量子政府業務ネットワーク」を構築した。世界初の拡張性のあるオールパス型量子通信ネットワークである5ノードのスター型リアルタイム音声暗号化量子通信ネットワークの開発に成功した。量子鍵配送速度などの面でブレークスルーを実現し、伝送距離限界を255キロメートル程度に伸ばした。デコイ法に基づく3ノード光量子電話網を初めて実現した。自由空間量子もつれと量子鍵配送を実現し、16キロメートルという長距離の自由空間テレポーテーション実験を最初に実現した。

 鉄系超電導研究は世界トップレベルである。多くの新しい鉄系超電導材料を発見し、それには、最初に報道した転移温度がマクミランの極限を越えた超電導体、最初に発見した複数の最高転移温度を記録した鉄系超電導材料が含まれる。輸送特性に対する系統的研究によって、鉄系超電導の相図を構築し、マッチングメカニズムなど重要な科学問題でブレークスルーを取得した。

 トポロジカル絶縁体研究は世界トップレベルである。室温3次元強トポロジカル絶縁体を最初に発見した。トポロジカル絶縁体のゲート電圧の制御に成功した。新規のトポロジカル絶縁体である磁性トポロジカル絶縁体が外磁場のない場合にも量子ホール効果を実現できることを理論的に予言した。高圧を利用してトポロジカル絶縁体における超電導状態を観察した。

 光超格子の研究は、非線形光学から量子光学までに広げられた。多重擬似位相整合を利用して、光超格子におけるマルチビーム連続変数と経路もつれの高次元もつれ状態を作出し、もつれ状態空間モデルの制御を実現し、相応するサブ波長干渉効果を観察した。

 「11・5」期間中、量子制御研究は、実用的量子暗号技術と量子通信技術、鉄系超電導とトポロジカル絶縁体などの研究領域において一連の世界トップレベルの重要成果を獲得した。量子計算、冷却原子系、相関電子新材料開発と量子情報技術の統合などの面でさらに強化する必要がある。

二、全体構想と発展目標

(一)全体構想

 わが国の実用的量子暗号技術と量子通信技術、鉄系超電導とトポロジカル絶縁体などの研究分野におけるリード地位を維持し続ける。同時に、国の重大な戦略需要と重大な先端科学問題を中心に、機能的統合と実用化を志向し、独創イノベーション研究を積極的に推進し、新材料、新しい物質状態および新原理のプロトタイプデバイスの研究にさらに力を入れ、機器設備の研究開発など研究手段のイノベーションを奨励する。

(二)発展目標

 新しい物質状態と新原理プロトタイプデバイスの研究分野で重要なブレークスルーを図り、若干の新しい相関電子系材料、小規模量子システム材料および人工バンドギャップ材料を探求・発見し、量子通信技術の実用化、量子技術基準とプロトコルの制定を推進し、自主的知的財産権を持つ関連材料の設計・計算ソフトウェアプラットフォームを開発する。量子情報、相関電子系、小規模量子システムおよび人工バンドギャップ系などの面で世界一流水準の成果を取得し、一群の国際競争力を有する研究チームとリーダー人材を養成し、複数の世界一流水準の量子制御研究基地を建設する。

三、主な任務

(一)、量子情報

 フォトンに基づく量子情報処理。シングルフォトン源を作成し、量子情報に用いる各種の良質光源を研究し、周波数スペクトル、輝度、もつれ度および制御性などの面でブレークスルーする。連続・離散変数に基づくフォトン系の量子情報処理技術を探求し、非古典的フォトン源の測定を研究し、各種光学的測定に基づく量子状態の再構築と新型シングルフォトン検出デバイス統合などを行う。量子情報のフォトンと物質界面との間のコヒーレント制御を実現するための研究を実施する。

 固体系に基づく量子情報処理。固体系におけるデコヒーレンス機構および抑制機序、量子ドットに基づく固体量子情報素子と量子チップを研究する。量子ドットに基づく高品質のシングルフォトン源と確定的もつれ光源を研究開発し、量子ドットに基づく新型量子メモリーを探求する。超電導ジョセフソン接合のマイクロナノ構造に基づく量子情報処理、空洞共鳴とカップリングする超電導量子ビットなどを研究する。ドーピングに基づく固体と分子クラスター系の量子情報、各種の量子計算プランおよびコア技術を研究する。

 冷却原子(イオン)、分子に基づく量子情報処理。冷却原子系における量子情報メモリーを研究し、確定的原子操作に基づく量子レジスタを作成し、量子コヒーレンスともつれにもたらされた標準量子および限界を超える測定技術を開発する。極性分子の閉じ込め・冷却・制御・探測、集積分子チップと極性分子間の双極子相互作用に基づく量子情報処理を研究する。原子・分子操作に基づく量子計算、および原子(イオン)、分子の閉鎖空間における量子特性および量子情報処理を研究する。

 量子シミュレーション。パラメーターをコントロールできる各種の量子系において、多体系の有効相互作用を実現し、相関系などの複雑系をシミュレーションし、関連する量子挙動を研究する。量子多体系を効果的にコントロールする新しい手法を開発する。

 量子通信と情報安全。量子中継器を研究開発する。衛星の量子通信と量子通信距離拡大の効果的な中継方法を研究する。遠距離の絶対安全な実用量子通信を研究する。都市内と都市間の多ノード光ファイバー量子通信網を構築し、大規模にネットワーク化した量子通信を実現する。量子通信関連理論を開発し、各種の盗聴と盗聴防止および安全性向上の方法を研究し、量子通信プロトコル規格の制定を推進する。

 量子情報理論。量子情報過程の物理的実現と関連する理論、量子もつれ理論、量子アルゴリズムと複雑性、デコヒーレンス機構と抑制方法、量子符号化、量子チャンネル容量、量子プログラミングと新型量子計算アプローチなどを研究する。

(二)相関電子系

 新しい相関量子材料。珍しい物性を有する強相関系新材料と新材料系を探索・発見し、相関量子材料の高品質単結晶とヘテロ接合を作成し、その寸法、成分、形状およびドーピングの精確制御を実現し、そのマイクロマシニング技術を開発する。

 競争シーケンスと量子相転移。各種非従来型相関量子材料におけるスピン密度波、電荷密度波と磁気秩序との間の共存と競争を研究する。電荷、スピンと軌道自由度との間の相互作用の効果と各種量子相転移と量子臨界現象を研究する。トポロジカル絶縁体の物理特性、重フェルミオン系の量子臨界現象、低次元構造における近藤効果、分数量子ホール効果系、スピンフェルミ液体および各種の磁気的フラストレーション系などを研究する。

 相関量子現象理論と数値シミュレーション。平均場近似を超える理論と方法を開発し、新型相関量子系を正確に描写する理論モデルを構築する。クロススケールの計算シミュレーション技術を研究し、物性研究の新しい計算方法を開発し、自主知的財産権を有するソフトウェアプラットフォームを構築する。

(三)小規模量子システム

 単一粒子と単一量子状態。高品質の小規模量子システムを作成し、単一の小規模量子システムのエネルギー準位、軌道波関数とその他の量子状態に対する制御を実現する。小規模量子システムの空間、エネルギー、時間域における高分解能で高感度のキャラクタリゼーション法を研究する。スピン信号を電気あるいは光信号に変換する新方法を開発し、高感度のスピン状態の電気学的もしくは光学的測定と操作を実現する。核磁気共鳴/電子サイクロトロン共鳴の局所プローブ技術、スピン状態の分光学的測定技術およびスピン量子状態の量子情報処理技術を開発する。特殊材料におけるコヒーレンス量子輸送とスピン操作を研究し、準一次元量子構造や単層グラフェンなど低次元材料の新原理デバイスを作成する。

 原子、イオンおよび分子系。原子と分子内の量子チャネルのアト秒、フェムト秒級コヒーレント制御と測定を研究し、電子レベルの超高速ダイナミクス挙動を提示し、先進的な分子内量子状態の作成、測定、制御方法と技術を確立・発展する。分子の減速、冷却および閉じ込めなどの技術を開発し、分子量子状態の変化などの基本プロセスを研究する。分子構造の変化がエネルギー準位構造、軌道、スピンおよび自己組織化特性へ与える影響、分子間の電荷とエネルギー移動を研究し、新しい分子デバイスを研究する。

 半導体量子構造。半導体量子構造におけるスピンコヒーレンスプロセスとデコヒーレンスの各種物理メカニズム、半導体構造におけるスピンコントロールの原理と方法、およびスピン流の発生と測定に資する新方法を研究する。単一量子ドットのスピン量子ビットの基本量子操作を研究する。励起子、励起子ポラリトンのボーズ‐アインシュタイン凝縮現象を研究し、無閾値ポラリトンレーザーデバイスとスピントランジスターの原理デバイスを作成する。

 磁性、希釈磁性半導体およびヘテロ構造。希釈磁性半導体、半金属と強磁性薄膜およびそのヘテロ構造などの新奇磁気輸送性と磁気光学性を研究する。巨大ゼーマン効果を研究し、磁性材料の電子状態密度の調整方法を開発し、磁性多層ヘテロ構造の中の結晶磁気異方性の量子制御を実現する。

 固体中の孤立量子系。ダイヤモンドの中の窒素空格子での孤立スピンのデコヒーレンス機構、エネルギー準位構造および量子光学性質を研究し、孤立スピンの光学測定系を確立し、孤立スピン操作の実験技術を開発する。固体中の孤立スピンの操作、制御可能なスピン結合の作成と量子ビットの構築に資するプランを研究し、量子情報と計算への応用を探求する。

(四)人工バンドギャップ系

 人工バンドギャップ材料のエネルギーバンド・バンドギャップ制御。人工バンドギャップ材料エネルギーバンドの形成原理、エネルギーバンド切断・制御原理、特殊色分散がもたらす新しい現象と効果、微細構造の励起・伝送・吸収および発射などの特性に対する制御を研究し、エネルギーバンドの計算・設計に資する有効な方法を開発する。対称性の破れが引き起こす欠陥状態とその新効果、非線形や無秩序などがもたらす新現象と効果を研究する。非ブラッグ機構人工バンドギャップ材料およびそのエネルギーバンド・バンドギャップ制御を研究する。人工バンドギャップ材料の中のマクロ量子現象、局所フォトン状態および電子状態の強結合効果、新しい線形と非線形の量子光学現象を研究し、新しい低閾値マイクロナノレーザーデバイス、量子スイッチおよび光起電力デバイスなどを開発する。

 フォトニック微細構造集積回路および関連デバイス。2次元フォトニック結晶集積フォトニックデバイスと回路を研究する。それには高性能フォトニック結晶導波路インターネット、高品質フォトニック結晶共鳴マイクロキャビティー、チャネルアップロード/ダウンロードフィルター、高密度波長分割多重技術、光スイッチなどが含まれる。

 サブ波長フォトニック構造。サブ波長構造に基づく回路ユニットおよび複雑デバイス、サブ波長フォトニックスおよび回折限界を超えた集束に関する重要な基本問題、サブ波長系の表面プラズモンと放射線源の線形および非線形効果の物理機構などを研究する。表面プラズモンにおけるもつれの形成、輸送、貯蔵およびリモート量子テレポーテーションへの応用原理を研究する。表面プラズモンに基づく新型量子光電子デバイスを開発する。

四、保障措置

(一)トップダウン設計を強化し、特定研究計画を徹底して実施する

 量子制御研究重大科学研究計画を引き続き実施し、トップダウン設計と統一計画調整を強化し、国の重大な戦略需要と世界の科学最先端に向かって、重大科学目標志向を一層強化し、プロジェクト首席科学者責任制とイノベーション奨励の評価メカニズムを改善し、部門横断・地域横断の相互協力を組織し、系統的で独創的な重大成果の創出を促進する。

(二)拠点建設を強化し、プロジェクト・拠点・人材の結合を促進する

 量子制御研究拠点建設を引き続き強化し、国家重点実験室をはじめとする拠点の科学研究プラットフォームとしての役割を十分に発揮し、プロジェクト・拠点・人材の緊密な結合を促進する。科学技術資源の開放・共有メカニズムを強化し、科学技術資源の合理的配置と効率的利用を促進する。地方政府と企業が量子科学技術サポートプラットフォームの建設に積極的に参加するように誘導し、量子科学技術産業化プラットフォームを共同整備するための協同イノベーションシステムを模索する。

(三)イノベーション人材の育成・誘致を拡大する

 各種のハイレベル人材計画を十分利用し、一群の国際的視野があり、量子科学技術発展をけん引できるハイレベルのリーダー人材を育成し、体制・メカニズムをイノベーションし、政策環境を最適化し、保障措置を強化し、海外優秀人材の誘致に力を入れ、世界一流レベルの量子制御研究チームをつくり上げる。

(四)国際協力と科学普及を強化する

 優秀な外国人科学者と海外の優秀な華人学者を吸引し、多様な方式で量子制御研究重大科学研究計画の実施に参加させ、わが国の科学者の国際協力への参加と国際組織での任官を支援し、国際協力計画の提案を奨励する。科学普及を重視し、科学精神を発揚し、科学普及活動を重大科学研究計画実施の目標と任務の一つとし、全国民の科学リテラシーの向上を促進する。


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