書籍紹介:「暴走する中国経済 腐敗、格差、バブルという『時限爆弾』の正体」
書籍名:暴走する中国経済 腐敗、格差、バブルという『時限爆弾』の正体
- 著者: 柯 隆
- 出版社: ビジネス社
- 定価: 1,500円+税
- 頁数: 223ページ
- 商品の寸法: 25.6 x 18.2 x 1.0 cm
- 発行日: 2014年11月刊
書評:中国経済の実態と本質をズバリ解明
小林 幹夫(葵総研代表)
本書の読みどころは第1章「デフレとバブルのはざまにある中国経済」の中の「世界第2の経済大国という“看板”と現実の巨大なギャップ」という15ページほどの一節だろう。
古手の中国経済ウオッチャーの間で半ば常識となっている知られざる現実を分かりやすく、解説している。たとえば中国の国民一人当たり国内総生産(GDP)は日本の六分の一で、1970年代初頭の日本と同じ。世界第二位のGDPの社会主義中国の労働分配率は40%で、主要国では最低水準だ。格差が問題となっている日本はそれでも60%。
李克強首相は政府発表のマクロ経済統計を信用していない。GDPを正確に捉えるために①電力消費量②鉄道貨物輸送量③商業銀行融資―の伸び率を計算している。
政府が公表しているインフレ率の統計は過小評価されている。インフレ率に算入されている食品のウェイトが不当に抑制されている。中国政府が公表しているマクロ経済統計は2~3ポイント割り引いたうえで見るべきで「7%成長は実際のところ、3~5%の成長というところ」という。
14年まで3年間年間7.5%だったGDP成長率の目標値を15年は7%程度に引き下げることが決まった(12月の党中央工作会議)という報道の読み方も変わってくる。重要なのは引き下げ幅ではなく、中国経済が刺激策にもかかわらず一段と停滞する見方を党中央が公表した点である。
習金平国家主席は「成長率が7%前後に落ちたとしても世界では上位だ」と強がっているが、中国の成長率は諸外国と基準が違うことを覚えておく必要がある。輸出と投資に過度に依存し、消費が非常に弱い経済構造。極端な貧富格差で逆Tの字型の社会構造。
シャドーバンキング(影の銀行)を第2章で解説しているが、突っ込み不足の感あり。経済誌の特集号を参照すると、よい。
中国人は高付加価値の世界を目指す努力を一切してこなかった、毛沢東はヒトラー、スターリンと並ぶ暴君と評する著者は南京生まれで、88年に来日したエコノミスト。日本の学界の不勉強ぶりも批判している。