書籍紹介:『爆買いと反日 ―中国人の不可解な行動原理―』(時事通信出版局,2016年3月)
書籍名:爆買いと反日 ―中国人の不可解な行動原理―
- 著 者: 柯 隆
- 出版社: 時事通信出版局
- I S BN: 978-4-7887-1444-1
- 定 価: 1,400円+税
- 頁 数: 276
- 判 型: 四六判
- 発行日: 2016年3月刊
書評:「爆買いと反日 中国人の不可解な行動原理」柯 隆
倉澤 治雄(中国総合研究交流センター)
日本人の8割が「中国を嫌い」という現状を反映して、街の書店にはいわゆる「反中本」がずらりと並んでいる。本書の著者である富士通総研エコノミストの柯隆氏は、中国経済の研究者として名を成しており、こうした「反中本」とは無縁の著者である。
とはいえ、柯隆氏の中国、および中国人への評価は手厳しい。
第1章の「中国人は本当に愛国なのか」では、中国ではいまだに毛沢東思想の影響を引きずっていると指摘する。毛沢東時代からすでに始まっていた腐敗、共産党の喉と舌と言われるメディアによる洗脳、事実に反する中国での歴史教育など、毛沢東時代への回帰に強い警告を発している。
一方、第3章「中国人の人相」では、権力欲と拝金主義にまみれた元指導者の人相の変化を写真入りで伝えている。
さらに第4章「中国人の人格」、第5章「中国人の生活」、第6章「中国人の建前と本音」では、経済的に裕福になりながら、何を信用してよいか分からなくなりつつある現代中国人のアンビバレントな状況を映し出している。
第8章「醜い中国人」では、中国人は「基本的に利己主義」であり、「短期的視野」であり、「批判を聞き入れない」という。現政権についても「独裁体制がこれ以上強化されれば、改革開放政策は頓挫する恐れがある」と厳しい見方を示している。
中国は巨大である。また長い歴史を持っている。ひと言で割り切れない複雑さを備えている。
2017年には5年に一度の共産党大会、2018年は「改革・開放」40年、2021年は中国共産党創立100周年と、時代を画するイベントが続く。まさに筆者の言うように「歴史的な分水嶺」に差し掛かっている。本書は今後の中国の動向、とりわけ人々のマインドの変化を占う上で大いに参考になるだろう。