書籍紹介:『トランプVS習近平 そして激変を勝ち抜く日本』(富坂聰,2016年12月)
書籍名:トランプVS習近平 そして激変を勝ち抜く日本
- 著 者: 富坂 聰
- 出版社: KADOKAWA
- I S BN: 978-4-0460-1832-8
- 定 価: 1,000円+税
- 頁 数: 208
- 判 型: B6判 変形
- 発行日: 2016年12月刊
書評:「トランプVS習近平 そして激変を勝ち抜く日本」富坂 聰
倉澤 治雄(中国総合研究交流センター)
大方の予想に反して、米国大統領選挙でドナルド・トランプ氏が選出されたことを受けて、今後の国際関について、さまざまな本が出版されている。本書はとくに東シナ海や南シナ海での海をめぐる問題を中心に、中国から見た米中関係に紙幅を割いている。
折りしも中国はこの12月、南シナ海で活動していた米国の無人潜水機を奪うと言う行為に出た。
筆者は現代中国の専門家で、独自の情報ルートから、日本の他のマスメディアとは異なる視点を提供している。
第1章「南シナ海の激突から読み解く米中の本心」では、仲裁裁判所の判断をめぐる「中国の論理」を解き明かすとともに、現実のASEANと中国の関係を事例を挙げて紹介している。
また第2章の「『海』の支配をしたたかに狙いアメリカ」では、今後の米・中・ロの戦いの場を、「宇宙」「サイバー空間」「海」と規定、南シナ海をめぐる米中の関係について、オバマ政権の政策と、トランプ新政権が取りうる対応の可能性などについて分析している。
さらに「尖閣問題の真相と日米同盟の行方」では、東シナ海と南シナ海の関係や、尖閣諸島領有権問題の歴史を振り返り、「実効支配」の重要性を強調する。
そのほか、核開発を続ける北朝鮮に対する中国の影響力を、正確に分析する必要性を強調するとともに、日本の憲法論議にまで踏み込んで、激変の時代に、日本が「勝ち抜く」道筋を探る。