書籍紹介:『科学者と中国古典名言集』(藤嶋昭・守屋洋,2016年11月)
書籍名:科学者と中国古典名言集
- 著 者: 藤嶋 昭・守屋 洋 共著
- 出版社: 朝日学生新聞
- I S BN: 978-4-9071-5096-9
- 定 価: 1,800円+税
- 頁 数: 256
- 判 型: A5判
- 発行日: 2016年11月刊
書評:「科学者と中国古典名言集」藤嶋 昭・守屋 洋
倉澤 治雄(中国総合研究交流センター)
「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」(エジソン)
人生や科学について、洋の東西を問わず、さまざまな名言が伝えられてきた。この本は当代一流の化学者にして東京理科大学の学長の藤嶋昭先生と、中国古典研究の泰斗でSBI大学院大学教授の守屋洋先生のコラボで誕生した。
時代、そして世界観を変えた科学者のひと言と、中国古典の哲学が、かくも重なるとは驚きである。
フランスの哲学者で「人間は考える葦である」と喝破したパスカルに、「隠れた高潔な行いは、最も尊敬されるべき行為である」という名言がある。これに対応するように、中国の古典「北史」には「陰徳は猶耳鳴りの如し、己独りこれを知るも、人知るものなし」との言葉がある。人知れず功徳を積むことは、洋の東西を問わず高潔な行いである。中国には、「陰徳あれば陽報あり」(人知れず徳を積めば必ず報われる)という言葉もある。
本書はまた動物写真家の田中光常氏による、美しい自然や動物の姿がふんだんにちりばめられている。
「夜の次に朝が来て、冬が去れば春になると言う確かさの中には、限りなくわたしたちを癒してくれる何かがあるのです。」
これは「沈黙の春」の著者で、生物学者のレイチェル・カーソンの言葉である。自然のすばらしさを謳うとともに、自然が失われる姿を最も憂いた科学者である。
中国の「菜根譚」には「天地は本寛し、而して鄙しき者自ら隘くす。風花雪月は本間なり、而して労攘の者自ら冗しくす。」とある。自然は大きく、風情はあるのに、人間の心が狭く、自然を味わい尽くすことが出来ない。
本書は「人生とは」「人のために」「自分を磨く」「希望をもって前向きに」「努力こそ大切」「成功するために」「研究は面白い」などをテーマに、古今の名言、科学者のひと言の意味にさかのぼって、まとめたものである。仕事や研究、あるいは人間関係に疲れたとき、一服の清涼剤のように、皆さんの心を洗ってくれるだろう。