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書籍紹介:『中国が世界を牛耳る100の分野 日本はどう対応すべきか』(光文社新書、2022年3月)

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書籍名:中国が世界を牛耳る100の分野 日本はどう対応すべきか

  • 著 者: 高橋 五郎
  • 発 行: 光文社新書
  • ISBN: 978-4-334-04595-1
  • 定 価: 990円(税込)
  • 頁 数: 263
  • 判 型: 新書
  • 発行日: 2022年03月17日

書評:『中国が世界を牛耳る100の分野 日本はどう対応すべきか』

大西 康雄(アジア・太平洋総合研究センター・特任フェロー)

 本書は、中国の農業・農村の実態に通じた碩学の筆になるものだが、タイトルにある通り、その視野は政治、経済、外交、科学・技術、社会・文化にまでわたっている。筆者の第1の意図は、中国が世界でトップの地位を占める項目を明示することで、読者の中国観を改めさせることにある。そのうえで、副題にあるように第2に、そうした中国にどう対応すべきかを客観的に考察することが目指されている。

 科学・技術(本書では科学・軍事)分野における中国の急発展と世界覇権を目指す姿勢が米国の警戒心を呼び覚ましたことが示すように、上記した問題設定の中では、敵・味方論理がすべてを決めてしまいがちだが、本書は、それを避けるために多数の分野を列挙し、客観的考察を試みている。

 考察の中で「中国の弱み」が見えてくるのは興味深いが、読者は、日本の凋落を確認させられることにもなる。本書では、凋落した現実を踏まえて日本が中国にいかに対応すべきかに紙数が割かれている。100分野を「日本が勝つ可能性のある分野」35分野)、「日本が存在感を示すべき定性的分野」(6分野)、「日本が存在感を示すべき定量的分野」(8分野)、「日本が競争するのは現実的でない分野」(51分野)に分類したあと、冒頭の35分野を中心に日本の対処策が示されるが、この部分の考察を読むことで、読者の頭は整理されるであろう。

 そして、筆者は最後に改めて日本の対中認識の訂正を求め、国家、企業、個人の3レベルに分けてあるべき対応策を説いている。そして、この部分は、巧まずして「日本論」となっている。一読をお薦めしたい。