第4回研究会「中国経済と産業発展の展望」/講師:沈 才彬(2007年4月16日開催)
科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター主催の第4回研究会は4月16日(月)JSTにて実施されました。
中国経済問題の専門家、テレビ・新聞等でもご活躍中のエコノミスト・三井物産戦略研究所中国経済センターの沈才彬(しん さいひん)センター長を講師にお招きし、急成長を遂げている「中国経済と産業発展の展望」についてご講演いただきました。
同氏はグローバルな視点に立って、「中国の台頭は世界の潮流」と捉え、「ステークホルダー」になりつつある米中関係、改善に向かう日中関係及び「上熱下冷」の中ロ関係を分りやすく解説し、「中国経済は2013年に日本を抜く」という予測を示す一方で、中国経済は当面「軟着陸」も「硬着陸」もなく「不着陸」で高い成長率を維持しながらの高空飛行を続けるが、2010年上海万博以降はバブル崩壊もありうるとの見解を示されました。氏は、中国が素材、エネルギーを必要以上に消費する「爆食型成長」から「省エネルギー型・節約型成長」へと成長方式転換を図る過程で、省エネ、新エネ、環境分野が得意な日本企業にとって大きなビジネス・チャンスが生まれる可能性があると分析、また、注目すべき中国の産業分野は、鉄鋼、自動車、住宅、IT、レジャー産業であり、中国における今後の注目すべき動向は「急速な都市化」「富裕層の急増」「貧富格差の拡大」「腐敗現象の蔓延」「外資優遇政策の見直し」「人民元の行方」だと指摘、少子高齢化時代の日本企業の進路を考える際、日本が持つべき3つの視点、つまり「国内だけではもう飯が食えない」「アジアと中国の視点」「外国人材活用の視点」、と「揚長避短」という中国の四文字の熟語で表す1つの戦略、つまり「日本企業は長所とする技術力を活かし、高付加価値の製品や技術、素材の創出に注力し、弱点であるコスト高の構造を是正するため、中国企業と分業体制を構築することが重要だということを強調されました。
講演の後質疑応答があり、活発意見交換が行われました。最後に中国総合研究センター馬場錬成センター長より閉会挨拶が行われました。
(中国総合研究センター フェロー 内野秀雄 記)