中国研究会開催報告&資料
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第25回CRCC研究会「「中国が日本を救う」~中国の成長を取り込むために中国への対応はいかにあるべきか~」/講師:和中清(2010年2月10日開催)

 科学技術振興機構(JST)中国総合研究センター(CRC)の主催により、2月10日(水)「『中国が日本を救う』~中国の成長を取り込むために中国への対応はいかにあるべきか~」と題する第25回研究会がJSTにおいて開催されました。

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 1970年代末に改革解放に転換した中国は、近年、北京オリンピック(2008)、上海万博(2010)などの国際的大イベントの開催を通じて国内では経済刺激、国外へは中国の存在感アピールを絶えず継続してきました。そして、建国から60年を経て中国はついに米国に次ぐ経済大国に踊りでようとしています。今回のCRC研究会では、この中国の飛躍する姿を20年間現場を歩いて見てこられた、株式会社インフォーム代表取締役の和中清氏をお招きしました。和中氏は昨年出版され、日中とも大きな反響を呼んでいる『中国が日本を救う』の著者でもあり、本日はこの最新作の内容を中心にご講演頂きました。

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 和中氏は昭和21年生まれ、同志社大学経済学部卒業。大手監査法人、経営コンサルティング会社を経て1985年に株式会社インフォームを設立、代表取締役に就任されました。その後、日本国内企業の経営コンサルティングと共に、1991年より中国を拠点として、中国投資のコンサルティングに取り組んできました。著書には他に、『中国マーケットに日本を売り込め―日本の商品、技術、ビジネスモデル、キャリアで思い切りチャンスをつかめ』、『中国市場の読み方―13億人の巨大マーケット』など多数があります。

 講演では、様々な統計数値データや図表が用いられ、1)日本の中国情報の問題とその読み方、2)2020年に向かう中国、3)動き出した成長の大回廊と4つの発展戦略、5)持続する経済成長,その7つのポイント、5)日本にチャンスを導く課題と対応、の5つのテーマに基づいて数多くのわかりやすい例示とともに話されました。まず、中国に関する情報の正しい理解の仕方については、まず失業率に関して挙げられました。

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 中国の発表する失業率には「低すぎる」という見方がありますが、それには農民工の問題があるそうです。中国の実際の労働環境を考える上では国有企業の思惑や過重労働に対する人々の意識等についても説明がされました。中国の経済成長とそれに伴う社会変化に関する展望に関しては、今後10年の中国については、現在都市部にいる農民工が農村に戻ることにより、社会が大きく変るだろうと予測されています。また、中国は交通網、都市計画における戦略的な建設により、各大都市間の時間的距離が約7時間に縮まってきました("成長の大回廊")。これにより経済成長はさらに加速すると期待されます。この成長が近傍の韓国、台湾、シンガポール、日本に波及する("アジア回廊の構築")ことは明らかであり、日本では特に地理的に近い九州が戦略的にこの効果を取り込んでほしい(九州回廊の構築)と和中氏は提案されました。

 講演後の質疑応答では活発な意見交換が行われました。最後に中国総合研究センター参事役細川洋治の挨拶により閉会いたしました。

 今回の研究会には、官公庁、民間企業、大学、研究機関、報道機関、及びJST内部から100名以上の方々が参加されました。今後とも皆様のお役に立てるような各種研究会を企画、開催して参りますので、引き続き温かいご支援、ご協力をお願い申し上げます。

(中国総合研究センター フェロー シンジャワ 記)