第83回CRCC研究会「中国の環境問題―現状と課題」/講師:染野 憲治(2015年 4月 9日開催)
「中国の環境問題―現状と課題」
開催日時・場所
2015年 4月 9日(木)15:00-17:00
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)東京本部別館1Fホール
講演資料 「 中国の環境問題-現状と課題」( 1.40MB )
講演詳報 「 第83回CRCC研究会 詳報」( 4.71 MB )
第83回CRCC研究会「中国の環境問題―現状と課題」
金振(中国総合研究交流センター フェロー)
2015年4月9日のCRCC定例研究会にて、東京財団の染野憲治研究員が、「中国の環境問題-現状と課題」につき、講演を行った。
講演において、染野研究員は、過去30年にさかのぼる環境データに関する整理・分析を通じ、中国が直面している環境問題の背景、現状、そして、今後の見通しについて分かりやすく説明した。9 0分という制限時間内で、51枚のスライドの内容を正確に伝えた染野研究員のテンポの良さが強く印象に残る。
染野研究員は、深刻化する中国環境問題の根本的な原因を、粗放的な経済発展のありかたに求めつつ、具体的な事例として、過剰な石炭依存や重工業重視、急激な都市化などを挙げた。また、日 本の環境行政と比較した場合の中国環境行政の問題点、すなわち、「法律による統治」の機能不全や「群龍共治」といった行政運営の非効率性問題についても指摘した。
中国の大気汚染問題の現状を伝えるため、染野研究員は大気汚染問題を取り上げ、PM2.5の発生原因や地域ごとの排出状況等にていて説明し、更なる対策強化の必要性を協調した。一方、S O2排出量に関する対策は進んでいると、排出量に関する歴年データから読み取っている。
中国大気汚染の今後の見通しとして、染野研究員は、近年における中国政府の環境対策の内容、環境対策投資額の推移、そして、人口等を含む今後の経済予測などの根拠に、環 境問題が大幅に改善される時期を2030年前後と予測した。
講演終了後の質疑応答において、染野研究員は会場から多数の質問を受け付けた。質問の内容は、環境被害関連医療費に関する中国政府の財政投与の状況や環境保護部トップ人事交代の環境政策への影響、国 営企業に対する環境公益訴訟の提起の可能性、中国の下水インフラの整備状況など、多岐にわたるのもであった。
中国環境問題に対する来場者の関心度が非常に高いことが今回の講演会を通じて確認できた。
染野 憲治(そめの けんじ)氏
略歴
慶應義塾大学経済学部卒業。1991年環境庁入庁。環境省(庁)のほか、厚生省、資源エネルギー庁、在中国日本大使館一等書記官を経て、現在は環境省中国環境情報分析官、桜美林大学非常勤講師。2 011年10月より東京財団研究員を兼ねる。著書は『環境法研究(第二号)』(共著 信山社、2014年)、『20歳からの社会科』(共著 日経プレミアシリーズ、2012年)、『 中国環境ハンドブック2009-2010年版』(共著 蒼蒼社、2009年)など。