中国研究サロン開催報告&資料
トップ  > イベント情報>  中国研究サロン開催報告&資料 >  第12回中国研究サロン「日本ファンと抗日ドラマ」(2015年 4月16日開催)

第12回中国研究サロン「日本ファンと抗日ドラマ」(2015年 4月16日開催)

演題:「日本ファンと抗日ドラマ」

image

開催日時・場所

2015年04月16日(木)16:00-17:30

国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)
東京本部別館1Fホール

講師

青樹 明子
(ノンフィクション作家、中国ラジオ番組プロデューサー)

講演資料

※講演資料の掲載はございません。

講演レポート

 中国人民ラジオなどで中国人向けの日本語放送パーソナリティを長く務め、中国の民間事情に明るいノンフィクション作家、青樹明子さんが4月16日、中国総合研究交流センター主催の「中国研究サロン」で講演し、中国の若者たちの対日観や抗日映画の影響、製作の舞台裏などについて報告した。

 青樹さんはこの中で、中国国内で反日機運が高まっているものの、「(英語は勿論だが、)日本語を学ぼうとする若者も少なくない」と指摘。「中国人の若者たちは政治と文化を割り切って考えている」と述べ、「Jポップやアニメなど日本のサブカルチャーに関心を抱いているためだ」とし、文化がもつ力の大きさを強調した。

 青樹さんはまた、日本語放送パーソナリティ時代に、投稿などを通して、交流した中国の若者について「彼らはすさまじい競争社会を生きており、一人っ子で兄弟がおらず、甘やかされて生きている」と鋭く指摘。「(その結果)リスナーからの手紙には孤独を訴えてくるものが多かった」と述べ、「(彼らの心をいやす)日本文化を通じ、日本に『心』を通わせてくる人たちがいる」ことを忘れてはならないと語った。

 青樹さんはさらに、2014年11月10日に死去した日本人俳優、高倉健さんの中国における人気の高さに言及。「訃報が伝わるとCCTV(中国中央テレビ)は直ちに特番を流し、高倉さんの足跡の大きさを振り返った」と語り、「NHKのクローズアップ現代が高倉さんの特番を流すよりも早かった」と語った。

image

 しかし、青樹さんによると、高倉さんが作った日本人のいいイメージは既に消え去り、旧日本軍兵士を鬼畜以下に描く抗日映画の影響は凄まじく、日本人のイメージを貶めているという。

 ただ、こうした抗日映画は必ずしも中国共産党宣伝部の指示で作成されているわけではなく、中国経済の悪化によって行き先を失った投機資金が株や不動産などからテレビドラマ制作にどんどん流れ込んでいるという。この結果、抗日映画の制作本数は増え、規制は受けたものの、今年が抗日戦争70周年に当たっていることから、今後復活していく可能性があるという。

 青樹さんはこうした複雑な中国の現状を踏まえ、日中関係の先行きに懸念を抱きながらも、「(中国には)日本ファンもいるし、日本語を学習しようとする若者もたくさんいる」と述べ、日中双方が現実を正しく認識し、両国関係の改善に努める必要性がると訴えた。

林幸秀氏

青樹 明子(あおき あきこ)氏:
ノンフィクション作家、中国ラジオ番組プロデューサー

略歴

早稲田大学第一文学部卒業。同大学院アジア太平洋研究科修了。
大学卒業後、テレビ構成作家、舞台等の脚本家を経て、ノンフィクション・ライターとして世界数十カ国を取材。
1998年より中国国際放送局にて北京向け日本語放送パーソナリティを務める。2005年より広東ラジオ「東京流行音楽」・2006年より北京人民ラジオ・外 国語チャンネルにて<東京音楽広場><日本語・Go!Go!塾>の番組制作・アンカー・パーソナリティー。
日経新聞・中文サイト エッセイ連載中
サンケイ・ビジネスアイ エッセイ連載中

主な著作

「<小皇帝>世代の中国」(新潮新書)、「北京で学生生活をもう一度」(新潮社)、「日本の名前をください 北京放送の1000日」(新潮社)、「日中ビジネス摩擦」(新潮新書)、翻訳「上海、か たつむりの家」