【18-002】「嫦娥」の月面再着陸、「長征5号」の復帰―中国、2018年に40回以上のロケット打ち上げを予定
JST北京事務所 2018年1月15日
2018年、中国は宇宙分野で数多くの大事業を実施することとなる。
中国航天科技集団が1月3日に伝えたところによると、同社は長征5号の打ち上げ、嫦娥4号の月探査、北斗3号ネットワーク構成等の重要な事業を実施する計画があり、長 征シリーズロケットの打ち上げを1年間で35回行うという。これは史上最高の記録となる。
「快舟」ロケット等を加えると、中国は2018年に実施予定のロケット打ち上げは40回を突破し、数多くの宇宙事業が期待される。
長征5号の復帰
2017年7月、遥2ミッション実施の長征5号ロケットは、実践18号衛星を載せて大洋に墜落した。
再整備を経て復帰する長征5号は遥3ミッションを実施するため、東方紅5号衛星プラットフォームを搭載し、再び文昌発射センターから打ち上げると予定される。
中国で現在、最大の輸送能力を持つ長征5号は、中国の将来の有人宇宙飛行、深宇宙探査等重要なミッションの遂行を担っている。今度の打ち上げが成功すれば、2019年に長征5号Bロケットを打ち上げて、次 世代の有人宇宙船試験を実施し、そして宇宙ステーションのコアカプセルを宇宙へ送り届けるとされる。また、長征5号によって嫦娥5号を月面へ届け、サンプリングを展開することも予定されている。
嫦娥4号、幻想的な旅へ
2013年に嫦娥3号探査機が月ローバー「玉兎」を載せて月面に着陸したことに続き、嫦娥系のもう一つのメンバー「嫦娥4号」は月探査の旅へ出る準備中。その旅はさらに奇妙で幻想的であり、神 秘的な月の背面に到着する予定だ。
今度のミッションは、英国「ネイチャー」誌主催の本年度もっとも影響力のあるサイエンスの出来事の一つに選出された。
ミッション実施地が月に遮られるため、地球−月のラグランジュ点(L2点)に中継衛星を6月に打ち上げ、嫦娥4号の観測コントロール通信とデータ伝送のための通路を構築する。
年末には、嫦娥4号は長征3号乙ロケットによって打ち上げられ、月南極付近のエイトケン盆地に着陸する予定。これは、月の背面に軟着陸し、そして探査を展開する初の探査機となる。月面の地形と地質構造、鉱 物の構成と化学成分、月の内部構造、地球-月間と月面の環境等を探査し、基本セットとなる月探査エンジニアリングシステムを構築することが予定されている。
北斗グローバルナビゲーションシステムの初歩的な進展
中国は2017年11月に、2基の衛星を同時に打ち上げる形で北斗3号のグローバルネットワーク構築衛星の第一陣を軌道へ届け、北斗の世界展開の幕が切って落とされた。
2018年、中国は長征3号乙ロケットと「遠征」上部段を組み合わせて、9回のミッションで十数基の衛星を軌道へ送り届けることを通じて、18基の衛星からなる基本的なシステムを構成し、「一帯一路」沿 線及び周辺諸国へサービスを提供する。
中国は、2020年までに、35基の北斗3号衛星が運転し、北斗システムによるグローバルネットワーク構成を実現することを目標にしている。
また、2018年に、北斗2号衛星を2基打ち上げ、間もなく退役する衛星と交替させる予定もある。
「高分」系の衛星、相次いで打ち上げへ
中国は、2013年に「高分1号」衛星を打ち上げて以来、宇宙に基づく高解像度地球観測システム重大特定プロジェクトとして、同シリーズ衛星を延べ4基打ち上げた。これらの衛星は、ア ロングトラック走査とステアリング走査によって、光学や赤外線、レーダーによる観測を用いて大量な高分解能データを獲得し、経済社会の発展へ大きく貢献している。
2018年、高分5号と高分6号を相次いで打ち上げる。
4月、高分5号は長征4号によって太原衛星発射センターから打ち上げられる。高分5号は環境専用衛星で、高分系では最も多くの装置を載せ、スペクトル分解能が最も高い衛星となる。衛 星に搭載される大気中微量ガス差分光学吸収分光器等6つの装置によって、エアロゾルや二酸化硫黄、二酸化窒素等多種の環境要素を観測することができる。
同じく年内に打ち上げる予定の高分6号は、光学リモートセンシング衛星であり、高分1号とネットワークを組んで運転することとなる。高分1号と比べて、同6号は複数のスペクトル域を追加し、地 上の農作物を識別することが可能になる。そして、中国国内で初めて対月キャリブレーション法を導入し、これによって、気候に影響される対地球キャリブレーション難の問題を解決し、イ メージング効果の向上を期待できる。
「張衡1号」、宇宙から地震を「見る」ことを可能に
中国地震立体観測システムにおける宇宙をベースとする観測プラットフォームに所属する初の衛星「張衡1号」は2月、酒泉衛星発射センターから打ち上げると予定されている。これによって、中国は、宇 宙から地震を「見る」ことが可能になる。
同衛星は、世界初の地震計を発明した後漢時代の天文学者張衡から名づけられ、中国が自主開発した初の電磁観測衛星である。これによって、全地球の電磁場、電離層のプラズマ、高 エネルギー粒子の観測データを収集し、中国及び周辺地域において電離層に対するダイナミックなリアルタイム観測と地震前兆追跡を実施することを通じて、地上からの観測の不足を補うことができる。
この1年のうちに、中国で様々な探査機の打ち上げが予定されているほか、輸送手段でも多様化が進んでいく。長征シリーズから成る「ナショナルチーム」の他、中国航天科工集団開発の「快舟11号」ロ ケットも初の打ち上げを迎え、ガンマ線バースト観測用ミニ衛星等6基の衛星を1回で宇宙へ送り届ける。宇宙ビジネスで初登場した「快舟1号」ロケットも、1週間に連続で4回打ち上げる予定が立てられる。これは、リ モートセンシング衛星コンステレーションの迅速な構築に挑戦するとともに、スピーディーな打ち上げ能力を実証するものと見られる。
このほか、中国初の民間ロケット事業体「零壱空間」も、同社のXシリーズロケットの初打ち上げを2018年上半期に実施する計画を立てている。
出所:中国政府網 2018-1-4 http://digitalpaper.stdaily.com/http_www.kjrb.com/kjrb/html/2018-01/04/content_385439.htm?div=-1-