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【18-003】マクロン仏大統領の訪中における科学技術関連の動きについて

JST北京事務所 2018年1月16日

 フランスのマクロン大統領は1月8~10日に、就任後初の中国公式訪問を行った。訪問期間中の科学技術関連とみられる動きについて、以下にまとめる。

1月9日に発表された中仏共同声明に、科学技術関連に見られる以下の内容が盛り込まれた。
(URL:http://www.xinhuanet.com/politics/2018-01/09/c_1122234958.htm

  • 7条:環境保全と気候変動分野における両国協力の深化・拡大。
  • 13条:民生用原子力分野の協力。
    但し、同分野の協力は、原発の建設・運営や、使用済燃料の再処理・サイクル利用工場の建設等、ビジネス面での協力が多い模様。
  • 中国の「中国製造2025」とフランスの「Industry of the Future」とのマッチング。両国関連企業間の協力支援、将来に向けた工業の基準・規 範の制定に関する協力が中心のようにみられる。
  • 17条:宇宙科学技術及びその応用分野での協力の継続・深化。主に、海洋衛星や天文衛星の共同研究開発、及び宇宙技術を気候変動共同研究と宇宙探査へ応用する面での協力が行われる。(下記関連情報を参照)
  • 20条:教育、文化と科学交流における協力の強化。科学技術の面では、イノベーションの協力強化や科学技術混合委員会を開催し、今後の科学交流の重点課題の策定等を実施することが含まれる。
  • 22条:中仏病院連盟の設立とアクティブ・エイジング社会に向けたパートナーシップの強化。武漢にある国家生物安全(P4)実験室をベースに実施する新規感染症分野最先端の共同研究等を含む。

関連情報

  • 宇宙分野に関するマクロン大統領訪中期間中の動き
    1月9日、チャイナユニコム社と仏ユーテルサット社(Eutelsat)は、「一帯一路」沿路地域へ向けた衛星通信業務共同運営の協力覚書を締結した。
  • 1月9日、習主席とマクロン大統領立ち合いの下、中国国家航天局(CNSA)とフランス国立宇宙研究センター(CNES)が「CNSA・CNESの宇宙技術を気候変動・宇 宙探査へ応用するための共同研究に関する覚書」を締結した。うち、気候変動分野では、宇宙気候観測の基盤整備、対地球観測の協力強化、地球気候変動分野の研究成果の流通促進、宇宙データの応用・革新等、宇 宙探査分野では、近地球軌道、月及び火星における無人・有人探査の協力等が含まれる。
  • 1月9日、北京航空航天大学とフランス国立民間航空大学校(ENAC)は習主席・マクロン大統領立ち合いの下、教育プログラムの共同運営に関するMOUを結んだ。両校は、浙 江省政府及び両国関連企業と提携の上、高レベルで国際的な新しい大学を共同で設立することになる。
    また、両校は2011年から、航空分野において研究協力を深く実施している他、人材育成にも取り組んでいる。
  • 1月10日、マクロン大統領は中国空間技術研究院で実施されている中仏海洋衛星(CFOSAT)プロジェクトを視察し、同時期に開催の中仏気候変動円卓フォーラムへ出席して両国同分野の研究者、高 校生代表らと交流した。
    ※CFOSAT衛星は、波長分散型X線分析装置とマイクロ波散乱計を搭載し、2018年下半期に打ち上げられる見込み。うち、中国側はマイクロ波散乱計の開発、ロケットと衛星の提供、及 び衛星発射後の観測コントロールを、仏側は波長分散型X線分析装置の開発を担当する。同衛星で得たデータは、世界の気候変動研究へ共有するという。
  • 共同声明に感染症分野の協力強化が記されたものの、今回の訪中期間中に具体的な動きは見当たらなかったが、以下の関連記事に、武漢のP4実験室での協力が詳細に紹介されている。
    【関連リンク】フランスのベルナール・カズヌーヴ内相が武漢のBSL-P4レベルの中仏新規感染症予防対策共同実験室の施設を視察(2017年3月)

    http://newsletter.cas.cn/wap/Lead/201703/t20170328_4525007.html

    【関連リンク】中仏新規感染症予防対策共同実験室が武漢で竣工(2015年)
    http://www.nhfpc.gov.cn/gjhzs/s3582/201501/f9c5e2ed18bb4b269a56fc979184f0f7.shtml
  • 同様に、民生用原子力の動きも見当たらなかったが、以下の両国2015年に調印した民生用原子力における協力推進のMOUを参照。

    【関連リンク】中仏・民生用原子力協力を更に深く推進することに関する共同声明(2015年)
    http://news.xinhuanet.com/2015-07/02/c_1115787971.htm

今回のマクロン大統領訪中を機に、両国は「原子力、宇宙、養老、航空、環境保全、金融、エネルギー総合利用等に及ぶビジネスの取引では、総 額約200億USドル(約2.3兆円)を成約した」という。詳細は以下の報道を参照。

記事中マクロン大統領の訪中についての言及はないが、中国科学技術部(MOST)とフランス原子力安全機関(ASN)は、1月11日、安 徽省合肥市で核融合共同研究センターを設立した。機関レベルから二国間政府協力へと格上げされた。

以上