【19-003】上海シンクロトン放射光源の開放十年の成果
JST北京事務所 2019年6月14日
~5,000編以上の学術論文が定期刊行物に掲載され、7つの国家科学技術賞を獲得~
上海シンクロトン放射光源(以下「上海光源」)は、中国で最初の第三世代シンクロトロン放射光源で、2004年12月に建設が開始され、2009年4月29日に竣工した。5月6日にユーザーに開放され、性能指標は国際的にリードしている。今年5月6日、上海光源はユーザー開放10周年を迎え、同日開催された10周年学術フォーラムで、これまでに専門家のレビューを経た実験課題が1万件余りを超え、全国500余りの機関、2,500余りの研究グループの24,000名以上のユーザーにサービスを提供したと発表した。
この施設の研究成果や国際的な影響力は、中国の科学技術の進歩に重要な役割を果たしている。上海光源を用いた研究成果が発表されたジャーナル論文は5,000編を超えており、そのうち「Nature」「Science」「Cell」の三大国際ジャーナルに発表された論文は100編近く、SCI-1に区分される論文は1,500編近くある。また中国内外の重大科学技術進歩の15件に選ばれ、国家科学技術賞を7つ受賞した。2012年以来、中国科学院が毎年行っている重要科学技術インフラの成果評価の中で、上海光源による重大成果の比率は1/3を超えている。
上海光源の第二期工事は急ピッチで進められており、最初のビームライン施設の一次試験が成功した。2022年までに、上海光源は40本のビームラインと60の実験室を稼働させ、毎年約1万人の研究者による利用を予定。第二期工事完成後は、その計測能力が第三世代シンクロトロン放射光施設の中で最先端のレベルを有し、直近5~7年間で最も国際競争力のあるシンクロトロン放射光源となる。
この10年で、TALENの特殊なDNA識別メカニズムやヒトGLUT1グルコース輸送体の構造解明、また北京-上海間の高速鉄道に応用された次世代高強度高伝導性クロムジルコニウム銅合金トロリ線や新分子構造体、また創薬等、上海光源により多くの新興戦略産業分野における核心技術が開発された。
10年に及ぶ安定運用により、大規模実験装置を活用することが促進されたこのとの意義は大きい。国が基礎研究による独創的な研究成果を重視するにつれ、上海光源は大規模実験施設の中心となり、軟X線及び硬X線自由電子レーザー装置等の大型実験装置と併せた一大クラスターを形成している。
世界を見渡すと、シンクロトン放射光施設の建設は依然として10年前と変わらぬ勢いがあり、第四世代の放射光施設も稼働している。上海光源は、引き続き重要な研究成果を生み出すとともに人材育成も行い、次世代のシンクロトン放射光施設を発展させる。
参考
《上海光源开放十年成果瞩目(キーワード:ビッグサイエンス装置(上海シンクロトロン放射光装置)の応用)》科技日報2019年5月9日付
http://digitalpaper.stdaily.com/http_www.kjrb.com/kjrb/html/2019-05/07/content_420553.htm?div=-1