【19-007】中国、2019年度の未来科学大賞を発表―女性研究者が初受賞
JST北京事務所 2019年9月11日
2019年度の未来科学大賞受賞者リストが9月7日に発表された。中国科学院院士で清華大学高等研究院楊振寧講座教授である王小雲氏が「数学と計算機科学賞」を受賞し、同賞設立以来の初めての女性受賞者となった。このほか、中国科学院院士で北京生命科学研究所シニアフェロー邵峰氏が「生命科学賞」を、中国科学院院士で中国科学院高エネルギー物理研究所研究員の王貽芳氏とカリフォルニア大学バークレー校物理学部教授の陸錦標氏が「物質科学賞」をそれぞれ受賞した。各賞の賞金は100万米ドルという。
邵峰氏は、病原菌と宿主との相関メカニズムを長年にわたって研究し、病原菌の毒性メカニズムと抗菌自然免疫分野において一連の重要な創造的発見を導いてきた。今回は、「ヒトの細胞における病原菌リポ多糖(LPS)の炎症反応を引き起こすレセプターと反応性タンパク質」を発見したとして、生命科学賞を受賞した。
王貽芳氏と陸錦標氏は共同で物質科学賞を受賞した。彼らが率いる大亜湾ニュートリノ実験共同チームは、広東省の大亜湾原子力発電所付近で初めて第三種のニュートリノ振動モデルを発見し、標準モデルで対応しきれない新しい物理研究、特に宇宙における物質と反物質の非対称性を解釈することを可能にした。
王小雲氏は「暗号学へ創造的な貢献をした」として、数学と計算機科学賞を受賞した。彼女の創造的な暗号分析法は、広く応用される暗号学的ハッシュ関数の欠点を解明し、次世代の暗号学的ハッシュ関数基準の設計を加速させた。
2016年に正式に設立された未来科学大賞は、中国本土において、初めて科学者、企業者らによって発起された民間の科学賞である。受賞対象者について国籍を問わないが、大中華地区(Greater China)で研究を完成した研究者で、そして研究はオリジナリティ、長期的な重要性及び大きな国際影響力があることが求められる。
2019年度の未来科学大賞審査委員会は21人から構成され、全員が生物、医薬、物理、天文、化学、数学、計算機等基礎・応用研究分野の有識者である。一つの賞は4人からの寄付を受け、寄付者はいずれも中国の科学技術事業に熱心な企業家、投資者等である。
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参考:《2019未来科学大奖揭晓 产生首位女性获奖者》科学網2019年9月9日付
URL:http://news.sciencenet.cn/sbhtmlnews/2019/9/349394.shtm