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【20-002】中国、戸籍登録制限の緩和・撤廃などによる人的流動促進の新方針を発表

JST北京事務所 2020年1月15日

 中国共産党中央委員会弁公庁と国務院弁公庁はこのほど、人材等の流動促進を求める「労働力・人材の社会的流動を促進させる制度・メカニズム改革に関する意見」(以下「意見」)を発表し、全国範囲での実施徹底を要求した。中国では、従来、出身地を問わず、父母の戸籍に入籍することが定められ、戸籍と異なる地域に居住する場合、様々な制約があった。また、学歴・職歴を含む個人の経歴に関する文書(中国語では「档案」)が記録・管理される。「意見」では、戸籍制度や档案の管理に関するもののほか、雇用や評価等に関する改革にも言及されている。以下に「意見」の概要をまとめる。

「意見」では、人の合理・公正・順調で秩序のある流動を、経済の持続的発展を支え、社会の調和的発展を兆し、人の健全的な発展実現させる必然な要求であることとして位置づけ、労働者や人材の社会的流動を阻害する制度・体制的な要素を取り除くよう要求した。

 主に以下の具体的な施策が提示されている。

・人の社会的流動に資する基盤を充実させる。

1)就職優先政策をマクロ的に講じ、流動促進の環境を醸成する。これにおいて、ロボットや人工知能技術の応用による就職への影響についての対策研究も求められる。

2)都市と農村、地域と地域の間の調和的発展を図り、人の均衡的流動を促進する。

3)民間や中小企業への融資支援、インキュベータや創業イノベーション拠点の整備等による創業・イノベーション支援を通じて、人材の流動を刺激する。

・流動の経路をスムーズにする。

4)戸籍登録の制限緩和と公共サービス改善によって地域間の流動をけん引する。「意見」に基づき、市街地エリアの常駐人口が300万人未満の都市において戸籍登録の制限を全面的に撤廃する、同300万~500万人の都市において戸籍登録の条件を緩和する、同500万人以上の超大型都市においてポイントベースの登録制度を改善する等を求める。戸籍制度の改革推進と同時に、公共サービスの改善によって、就学や就業・創業、社会保険等における当該都市に戸籍を有する居住者と戸籍を持たない居住者の同等化を進める。

5)雇用制度を改革し、一般社会人の党・行政機関や国有企業等への異動を促進する。

6)キャリア履歴書(原語:档案)管理サービスの改善によってスムーズな転職を促進する。

・評価・インセンティブメカニズムを改善、社会流動空間を拡充する。

7)一般の組織勤務者のキャリアパスを拡充し、大学卒業生の辺鄙な地域や環境が厳しい地域への就職を誘導する。

8)一般の組織の現場従事者に対する奨励を強化し、評価における現場業績や勤務年数等のウェイトを上げる。研究成果の移転に関する法令の規定に基づいて、研究者が職務成果の技術移転によって得た現金賞与を所属先のパフォーマンス賞与総額に計上するが、総額の制限を撤廃し、総額基数に計上しないという具体的な方法の制定を検討する。

9)技術・技能者の昇進の道を広げる。職業資格、役職名および職業技能を有機的に結びつけ、これらの認定への道筋を示し、主席技師や特級技師等のポストの設置を奨励する。学歴やキャリア等による制限を撤廃し、能力や実績、イノベーション成果等の要素を合わせた形での賃金とポストの決定を後押しする。

・貧困対策の充実化を図る。

 貧困支援策等による貧困地域の人々の収入改善を図る一方、平等に就学、就職できる権利をこのような人々に享受させていく。

・上述の施策を確実に実施するため、行政的指導を強化するほか、法に基づく保証、良質な環境の醸成なども求められている。

関連サイト

中共中央办公厅 国务院办公厅 印发 关于促进劳动力和人才社会性流动体制机制改革的意见(2019年12月25日付)