【20-005】新型肺炎に関するニュースソースと中国の対策
JST北京事務所 2020年2月3日
1.新型肺炎に関する日中のニュースソースについて
日本でも連日報道されていますが、現在、中国では、湖北省を中心に全国的に新型肺炎を引き起こし新型コロナウイルスとの戦いが繰り広げられています。「戦役」ではなく「戦"疫"」と付けた見出しを多数目にします。
日本語で状況をまとめたものとしては、下記サイトがあります。
外務省海外安全情報ホームページ(中国)
また、日本の国内対策に関しては、下記内閣官房のサイトがあります。
新型コロナウイルス感染症の対応について―内閣官房新型インフルエンザ等対策室
中国での状況をリアルタイムにご覧になりたいときは、例えば、下記のサイトがあります。
1つ目は人民日報のサイトで、2つ目の丁香园·丁香医生は、省や市の名前をクリックすると省内の市や市内の区の単位の人数がわかります。
人民日報のサイトには「实时播报」があり、「预防手册」で予防マニュアルを見ることができます。
丁香园·丁香医生では「实时播报」をクリックすることで患者数や対策等のニュースを得ることができます。また「辟谣与防护」では流布されがちなデマについての説明を、「疾病知识」で新型肺炎やウイルス対策の知識を得ることができます。今回の新型肺炎の対応に当たっている病院のリストも掲載されています。
また、経済誌である「財新」のアプリでは、新型肺炎の「防疫全記録」としてニュース、経緯が時系列で追えるようになっています。また、「地图―新冠肺炎确诊病例实时动态」では、地域ごとの患者数をグラフで示してくれます。
このほか、中国で広く使用されているSNSである微信(WeChat)のスマホ決済アプリWeChatぺイの健康ツールからも同様に地域別の患者情報を見ることができます。
2.新型肺炎に関する中国の対策について
専門家は、繰り返し、早期発見と早期隔離が、原始的ではあるが、最も確実な対策としてその重要性を強調しています。全国の省・市・区で「重大突発公共衛生事件1級」が適用され、様々な対策がとられています。①戸籍人口だけでなく流動人口を含めれば人口1,400万人を超える武漢をはじめ、湖北省の多くの市州の公共交通機関の停止及び駅・空港の閉鎖。②春節休暇を2月2日(金)まで延長[1]、③全国で海外旅行を含む団体旅行を停止[2]、④イベントを中止・延期、⑤観光地等の営業・開館を停止、⑥多くの交通機関の長距離路線の運航を見合わせ、⑦企業や学校の再開を遅らせ、人が集まることをなるべく減らすことが呼びかけられています。⑧オフィスビルやスーパー、地下鉄駅等様々な場所で熱の測定が行われ、マスクの着用が呼びかけられ、指示に従わない人は公安当局へ通報されることとなっています。鉄道や航空会社は無料でキャンセルに応じています。1月21~25日までで、3,220万枚の鉄道の切符の無料キャンセルがあったとのことでした[3]。
また、短期間に大規模な病院が整備されています。武漢では、1月24日、旧暦の大晦日に工事が開始され、ピーク時には4,000人と機械設備、車両1,000台近くを動員し、24時間工事を続け、その模様はライブ中継され、国民のネット上の視線を受けながら2月2日に完成しました(火神山病院)。1,000床を超える病院がこのスピードで作られ、また、もう一つの病院も作られています(雷神山病院)。中国の伝統的な五行説では、肺は金に属し、火は金を克服するといわれているそうです。また、雷神は懲罰の神として知られています。武漢に隣接する黄岡市でも5月完成予定で新設中の病院を48時間で病院を改造し、今回の発熱患者の治療に投入するため1,000床の設備を整備するとのことでした。2月1日の報道では、既に306床の運用を開始し、205名の患者を受けれ、同日にはさらに288のベッドを運用開始するとのことです。17年前SARSのときにやはり北京で作られた病院は7日間で1,000床収容可能で病死率は1.2%を下回り、1,383人の医療スタッフからの感染例を出さずに治療に当たったとのことです。これを中国ならではのスピードと評する報道もあります[4]。
これらの対策で1月30日の時点で中央政府・地方政府合わせて273億元(1月26日の時点では112.1億元[5])が投じられているとのことです。
連日、確定診断数が増える中、患者が利用した鉄道やフライトの情報がSNS等で示され、同乗者に注意喚起しています。下記、URLでは、例えば地区名を入れると患者がその地区への移動等に利用した鉄道やフライトの情報が示されます。
このように中国では、人、カネ、そしてデジタルを駆使して様々な対策が行われています。
実際に北京で暮らしていると日本の町内会に相当するような単位でもワーキンググループが作られ、市政府の通知等に基づき、湖北省等から戻って来た人に、14日間、医学観察の下で外出せず、1日に2回の検温を求め、その他の地域から戻ってきた人にも14日間の検温やマスクの着用を求める通知を街中、春節休暇で休業中の店舗のシャッターなどに多数張り出しています。アパートやオフィスビル、大学などそれぞれが属するコミュニティで類似の呼びかけや所在や出入りの確認、入り口での検温、それぞれの対応策の連絡などがされています。ホールやエレベーターで定期的に消毒が行われ、消毒のにおいが鼻につくこともよくあることになってきました。
北京の空港は、ボディチェックが厳重なことでも知られていますが、スタッフはゴム手袋着用で従事しています。感染拡大阻止とは逆行しますが、顔認証のときとボディチェックの際に一瞬だけマスクを外すように言われます。
現在、患者数が増えている状況にありますが、一つには、検査体制の整備により、検査できる数が増えたため、疑似症例とされていた人たちから確定診断に移行する人が多いという説明がされています。湖北省のRNA検査は、当初一日200サンプルの検査が可能な体制から現在は4,000サンプルをこなせるようになったそうです[6]。また、治癒した人たちも、当初12日間経過を観察してから退院させることにしていましたが、体温が正常に戻ってから3日以上経過し、RNA検査2回(1日以上間隔を開けて実施)で陰性であれば、退院させることになりました[7] 。(2月2日には累計の治癒数は死亡数を上回りました[8]。肺炎は、日本のデータでは、若い世代では、人口当たり死亡数の少ない疾患です 。[9])
対応に当たっている専門家は、1月29日の報道で,患者数のピークの予測は困難としつつも、1週間から10日程度患者が増えるが、その後、一連の対策により、患者数の新規増加がそれまでにあったような大きな数を越えることはないのではないかとの見通しを示しています[10]。武漢の駅・空港の閉鎖から最長の潜伏期間と言われる2週間が過ぎるころ、そして中国の元宵節(2月8日)頃に相当します。
[2] 北京27日起禁止所有旅游团出行
[4] 病院整備に関する報道 刚刚,武汉火神山医院交付
千万网友"云监工"火神山医院!这是众志成城的英雄中国!
独家揭秘:"火神山"、"雷神山"名字怎么来的?
[6] 1月30日湖北省の記者会見から(注:日本では見れない可能性あり)
なお武漢市については、1月26日の報道で2000件とのこと。武汉市加快肺炎病原学检测 日检测可达2000例(来自财新客户端)
[7] 12日間の経過観察については、26日記者会見での武漢市長の発言。
湖北新型肺炎疫情防控工作新闻发布会
2回のRNA検査による退院については、1月30日専門家が説明。
なお、政府の治療マニュアルには、2回のRNA検査による退院の記載
[8] 本文中に前述の確定診断数等のデータを示すサイトによる。(2月2日17時現在)
[9] 平成 30 年(2018) 人口動態統計月報年計(概数)の概況 図7-1
[10] 访谈全文丨与钟南山面对面话疫情防控
钟南山:确诊人数或仍将持续升高 但我相信不会太长
病例还会不会大规模增加?听钟南山怎么说