【20-007】(更新)新型コロナウイルスによる肺炎の状況について
JST北京事務所 2020年2月10日(※2020年2月17日更新)
2月5日に国家衛生健康委員会が、診療マニュアルの試行第5版を発表しました[1]。
このマニュアルによれば、潜伏期は1~14日、多くは3~7日とのことです。1月23日に武漢の空港・駅等が停止され、翌24日から数えて2月8日が16日目となります。
対策の効果は見えつつあるのでしょうか。
衛生健康委員会のハイレベル専門家グループのリーダーは、早期発見と早期隔離が、原始的ではあるが、最も確実な方法と言っています。北京市の予防マニュアルでは、外出や食事を控えるように言われており、飲食店経営者等に対し、対策期間中、グループでの飲食の予約は、取消・延期を求めるようにという通知も出されました[2]。人が集まる機会をできるだけ少なくすることで、感染が拡大するリスクを減らそうとしています。中央政府も人が集まる機会に多くの感染者が出た事例を示し、警鐘を鳴らしています[3]。
また、湖北省でも隔離しての治療が大規模に続けられています。国家衛生健康委員会の会見では、患者の大多数について、「軽症」又は「軽型」の語で説明され、不必要に恐れることのないよう伝えています[4]。前述の診療マニュアルでは、「軽型」とされるのは、症状が軽微で、画像診断では、肺炎と確認できないものを言います[5]。
※ 1月26日までの全国の疑似症例8,866症例(うち4,021症例が実験室での検査を経て確定診断となった者。確定診断患者の41.38%が湖北省武漢市の患者)について分析した論文(未査読)では、確定診断者について重症肺炎、軽症肺炎、無肺炎症状の患者の割合をそれぞれ25.5%、69.9%、4.5%としています。(【20-013】確定診断者の疫学分析結果―新型コロナウイルス肺炎』で紹介しています。)なお、この論文は、その後、患者数の増加を踏まえ、取り下げられました。アップデートして提出したいという意向が示されています。
(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.02.10.20021675v2.full.pdf)
新型コロナウイルスへの感染が確認されているが軽症の患者を集めて治療するため、緊急のキャビン病院の応急備蓄を全国から集め、湖北省で使用することも記者会見で語られています[6]。2月5日から6日かけて、体育館や国際会議場がキャビン病院として準備を整えたり、使用が開始されたりした例などが報じられていました。症状も軽くキャビン病院のベッドで本を読む患者の姿などが見えます[7]。
このような中、湖北省以外の地域の確定診断者数の新規増加数は、2月3日の890人をピークとして、2月7日~9日は558人、509人、444人の推移をたどっています。湖北省では、2月4日の3,156人をピークとして、2月7日~9日は2,841人、2,147人、2,618人の推移をたどっています。
もちろん、長期的に数字を見る必要がありますし、依然として確定診断者数が増加している状況です。春節休暇が実質的に延長され、8日、9日も大 きな移動があったと思われること、特定の商業施設に関係すると見られる確定診断者が多数出ている地域で、外出回数の制限が行われるなど厳しい対策をとっている地域があること[8]などについても、引き続き注意が必要です。
また、国家衛生健康委員会のハイレベル専門家グループのリーダーである鍾南山院士は、2月7日午後の時点で、まだターニングポイントには至っていないとの慎重な見方を示しています[9]。一方、同日の国家衛生健康委員会の会見においては、対策の効果の一歩が現れたものとの見方が示されました[17]。
なお、2月8日、上海市の発表で飛沫核、エアロゾルによる感染に言及しました[10]。これに対して、中国疾病コントロールセンターは、現在、この経路による感染について、明確な証拠はないと説明しています[18]。また、ウイルスは乾燥した状態で48時間しか生存せず、空気中では2時間で活性が低下するとの専門家の見解があります[11]。
治癒・退院の人数も全国で増えてきています。累計治癒・退院数は、2月9日24時で3,281人となりました。治癒・退院した人の入院日数は、湖北省では20日間、湖北省以外では9日強(最短は海南省の5日、最長は広東省の12.75日。ちなみに2月1日の北京市の会見では、同日退院した4人の平均入院日数は10.25日)とのことです(2月4日のデータ)[12]。この日数の違いは、湖北省では、治癒後10~12日間の経過観察期間の後、退院[13]させていることにもよるとのことです。なお、前述の治療マニュアルでは、体温が正常に戻ってから3日以上経過し、RNAに関する検査2回(1日以上間隔を開けて実施)で陰性であれば退院できます。これらの手順を考えれば、軽症の方たちは、1週間前後で症状が改善しているのではないかと思います。
一方、一部の患者は、危険な状況になられています。重症者患者の数はなお増加傾向にあり、重症率は、湖北省で15%前後、湖北省以外では10%程度(2月3日のデータ[14])、全国では13.2%(2月5日のデータ[15])。マニュアルによれば、高齢者、持病のある方の治療経過がよくないとのことです。児童は、比較的軽いと記載されています[16]。
原始的な、しかし、最も確実な原則に基づく対策であり、感染の拡大防止に関しては、今後日数の経過とともに確実に効果を挙げていくことが期待できるといえるのではないでしょうか。さらに医療スタッフの懸命の活動により、重症で御苦労されている方達をはじめ、世界の患者の皆さまの一日も早い快復を願います。
2月11日夜から12日午前までの報道では、国家衛生健康委員会ハイレベル専門家グループのリーダーは、武漢に赴いている人たちを含む広東省の医療関係者とのテレビ会議において、予測はまだできないとしつつも、ピークは2月中下旬になるのではないかとの見通しを語り、春節休暇等から帰ってきた人たちが増えた状況下での予防・コントロールの状況が重要と指摘しました。さらに、彼は、新型コロナウイルスについてなお未知な部分が多いことも話しています。(2月中下旬との見通しは、数学モデルによると報じている報道もあります。)
また、やはり、厳格な予測は誰にもできないとしつつ、最近のデータを用いた数学モデルに基づく予測と実際の状況を見ながら、現在、全国の新規確定診断者数の増加が緩やかになってきていること、南方区域の発症のピークは2月中旬になるのではないかとの見方を示しました。
休暇等からの帰還により、さらに大きな発症のピークが出現するかについては、休暇の延長等により潜伏期間を過ぎていること、各地での厳格な監視により、問題があった場合でも隔離して治療されることから、新しいより高い発症のピークが出現することはないと信じているとの見通しを示しました。なお、退院について慎重な姿勢が取られていることから、退院数が増えていないという点にも言及しています。
これらのことを踏まえ、4月までには終息するとの見方を紹介している報道もあります。[19]
[2] 疫情防控期间 北京禁止各类群体性聚餐活动 违规者从严从重从快查处
[3] 返岗上班后,如何防范聚集性疫情风险?----新型冠状病毒感染的肺炎疫情防控焦点扫描之八
[5] 前掲「新型冠状病毒感染的肺炎诊疗方案(试行第五版)」p3、p6
[6] 前掲「2020年2月4日新闻发布会文字实录」
[7] 直击丨洪山体育馆方舱医院收治病患
武汉首个方舱医院开始收治病人
[9] 钟南山:疫情拐点还未到来
[10] 国家卫健委:前期疫情防控措施效果显现
[11] 疫情防控新闻发布会|新冠肺炎传播途径包括气溶胶传播_浦江头条_澎湃新闻
[12] 新冠肺炎疫情防控答问:什么是气溶胶传播?
[14] 2020年2月4日新闻发布会文字实录
北京已有9例新型冠状病毒感染的肺炎患者出院 平均住院天数10.25天
[15] 湖北省の記者会見から 湖北新型肺炎疫情防控工作新闻发布会
[17] 【数据解析】新冠疫情分析简报(2月5日)
[18] 前掲「新型冠状病毒感染的肺炎诊疗方案(试行第五版)」p3
[19] 钟南山院士:预计2月中下旬疫情可能到达高峰--社会--人民网 钟南山:疫情拐点无法预测 峰值应在2月中下旬出现-新华网 钟南山:新型冠状病毒肺炎疫情有望4月前结束 钟南山:新型冠状病毒肺炎疫情有望4月前结束