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【20-009】新型コロナウイルスによる肺炎に対応した研究プロジェクト等

JST北京事務所 2020年2月13日

 新型コロナウイルスによる肺炎への対応が続けられている中国では、大学をはじめ学校の開学延期がされ、研究費のファンディングエージェンシーである国家自然科学基金委員会(NSFC)の研究プロジェクトの申請期限も3月20日から4月20日に延期された[1]

 一方、この事態に対応すべく緊急に公募開始されたプロジェクトもある。多くの緊急対策プロジェクトが、中央政府、地方政府により公募開始されたり、研究が開始されたりした[2]。いずれも緊急対応として、研究の早期開始を意識している。科学技術部は、科学研究関係者が奮って重責を担い、全力で事態対応に取り組むことを呼びかけている。対策の第一線で論文執筆に臨み研究成果を対策に活用すること、自分の成功のみにとらわれず、実験データ、臨床病例、疫学統計等のデータの成果を共有することを求めている[3]

 企業等の取組みの進展を伝える報道も見られている。特に企業等の取組みについて網羅的に紹介することは困難だが、目についたものを以下に紹介する。

1.中央政府の緊急プロジェクト

(1) NSFC:新型コロナウイルスの起源、発病メカニズム、予防・治療に関する基礎研究[4]

〇1月22日に公募要領が示され、電子申請の期間が2月3~6日というタイトなスケジュール。研究開始は、3月15日からの予定。2年間で150万元を20件採択予定。
〇対象:

①新型コロナウイルスの構造・機能、感染のターゲットおよびメカニズム、他のコロナウイルスとの差異

②新型コロナウイルスの起源、変異と進化、新技術によるコッホの原則の再確認

③新型コロナウイルスへの感受性と流行のメカニズム

④新型コロナウイルスの感染の発生・発展等のメカニズム、院内感染防止の基礎研究

⑤新型コロナウイルスの応急的・一般的ワクチンの基礎研究

(2)科学技術部:新型コロナウイルス肺炎緊急対策科技プロジェクト

・1月21日には、科技部、国家衛生健康委員会、発展改革委員会、教育部、財政部等から成る対策プロジェクトのための連合会議を開催。国家衛生健康委員会ハイレベル専門家グループの長でもある鍾南山工程院院士を長とする14名の専門家グループを設置。ウイルスの起源、感染経路、モデル動物の開発、感染・発病メカニズム、迅速な免疫検査方法、ゲノム変化と進化、重症患者理療方策、応急保護抗体や迅速なワクチン開発、漢方医薬による予防・治療など10の領域の研究開発を進めることを決定した。[5]

・1月22日には第1次の8プロジェクトが緊急に開始され、同月27日に第2次プロジェクトを開始[6]、2月4日には、第3次まで含めて計16プロジェクトが進行中であることが記者会見で説明されている[7]

2.地方政府の緊急プロジェクト等

(1)湖北省科技庁:新型コロナウイルス肺炎緊急対策科技プロジェクト[8]

・1月21日開始。科学院武漢ウイルス研究所が牽引し、華中農業大学、華中科技大学同済医学院附属協和病院、華中科技大学同済医学院附属同済病院、武漢大学中南病院、武漢大学人民病院、湖北省中医院、武漢金银潭病院、湖北省疾病コントロールセンター等の機関が共同で対応。武漢ウイルス研究所の石正麗研究員がリーダー、華中農業大学の陳煥春院士が顧問、13人の科学者が専門家グループを構成。

・迅速検査技術製品開発、疾病の発生・展開・予後のメカニズム、臨床診断・治療、抗ウイルス応急薬物・抗体類薬物、起源動物研究、病原学・疫学研究、モデル動物による病理研究、ウイルス感染による免疫反応と炎症の研究、ワクチン研究等のプロジェクトを展開。プロジェクト経費300万元を充当[9]

(2)山西省科技庁:新型コロナウイルス感染による肺炎予防治療科学研究対策プロジェクト[10]

・1月23日、プロジェクトのガイドラインを発表。2月1日、診療方策(5プロジェクト)、有効薬物のスクリーニング(4プロジェクト)、ウイルスの起源(2プロジェクト)、漢方薬・使用医薬混合医療(3プロジェクト)の領域で14プロジェクトを確定。

・2月5日から毎日一度の報告を求め、関係者の協調による成果の早期実用化を図るとのこと。

(3)深圳市科学技術イノベーション委員会:新型コロナウイルス感染応急予防・治療プロジェクト[11]

・1月23日公募開始。対象は、予防・計測技術(早期・即時検査技術に重点)、治療戦略、薬物研究開発、ワクチン研究開発。採択件数は20件、各課題800万元以下を上限。研究期間は3年。公募期間は2月3~24日まで。

・疫学研究、臨床診療標準、治療性抗体研究開発については、1月23日現在で緊急に研究開発を開始。

(4)天津市科技局:新型コロナウイルス感染応急予防治療科技重大プロジェクト[12]

・1月28日公募開始。RNA検査(PCR法、ハイスループットシーケンシング)キット,侵襲性真菌病系列早期検査剤キット,IgM(免疫球タンパクM)検査試剤(化学発光法、POCT法)キット,新型コロナウイルスワクチン研究開発,抗コロナウイルス活性、漢方薬スクリーニングなど5領域を緊急実施のため募集。各プロジェクト300万元以下。

(5)湖南省科技庁・財政庁:緊急プロジェクト等[13]

・1月28日、省の科学技術庁・財政庁が、緊急プロジェクト開始のため、特別事態対応としての前払いによる支援を通知。

・聖湘生物社の蛍光PCR法によるワンステップ診断キットが、国家薬品監督管理局の審査を経て医療機器の登録および科技部の緊急プロジェクトによる支援が認められたと発表。同社のRNAワンステップ法は、様々なシーンで活用可能、リスクや汚染が小さく、短時間で高感度の結果が得られるとのこと。

(6)江西省科技庁・衛生健康委員会等:緊急プロジェクト[13]

・1月21日以来,省の科学技術庁、衛生健康委員会、疾病コントロールセンター、医療機関等で連携を取り、特別な事態に対応し、案件ごとに検討し、研究を先行させ、後でプロジェクト開始の関係手続きを取るという姿勢で、プロジェクトを準備。

・1月27日に第1次緊急プロジェクトの研究チームを決定。感染の伝播・拡散のダイナミクスと影響因子の研究、ウイルスのゲノム進化の研究、予防・コントロールに適した技術と効果の評価に関する研究等を含む。

(7)広東省科技庁:新型コロナイルス感染による肺炎流行対策科技緊急プロジェクト[13]

・広東省科学技術庁の庁長を長とし、国家衛生健康委員会のハイレベル専門家のリーダーを専門家指導グループのリーダーとする対応組織を編成、部門を超え、また、香港・マカオとの科技協力部署とも協調して、ウイルスの起源、対症薬品、ワクチン試作、重症患者治療等の第1次プロジェクトを実施。成果移転等に重点を置いて実施。

・衛生健康委員会と連携し、広範に大学、研究機関、医療機関、企業等を動員。

(8)広西自治区科技庁:新型コロナウイルス感染による肺炎緊急対策科技プロジェクト[13]

・プロジェクト申請のガイドラインを編成。予防治療技術集大成モデル研究、予防コントロール装備研究開発・活用、監視計測システム構築、予防・コントロール・診療・治療新技術・新手法・新製品の研究開発・応用、漢方医薬・民族医薬応用研究。

(9)山東省科技庁:治療薬・ワクチンを重点とした研究開発[13]

・1月27日、省科技庁庁長らによる会議を開催。省内の専門家を集めて、治療役・ワクチン技術等を重点に研究開発と成果の集約・応用を図ることを決定。

(10)福建省科技庁:新型コロナウイルス感染による肺炎予防・治療技術研究・製品開発プロジェクト13

・1月27日,福建省科学技術庁が、プロジェクトの緊急開始について通知。検査・診断、薬物利用、ワクチン研究開発、臨床治療等について、①新型コロナウイルス感染の感受性・流行メカニズムの研究、②RNA迅速検査技術診断試薬、免疫診断試薬等監視・検査技術、治療薬・ワクチン研究開発、③臨床予防治療技術研究。プロジェクト経費20~50万元。

(11)安徽省科技庁:緊急対策科学研究プロジェクト[13]

・安徽省衛生健康委員会とともにプロジェクトを開始。予防コントロールの必要性を重視し、臨床プロセス、画像診断、ウイルスゲノム、感染経路、漢方医薬の5方面を関係部署で研究。

(12)甘粛省:対策プロジェクト[13]

・大学、医療機関等の27名の専門家で対策プロジェクト専門家チームを編成。

・新型コロナウイルスの特性に関連し、感染経路、迅速診断技術、診療モデル、漢方医薬との共同治療予防コントロール、予防コントロールシステムと感染予防ガイドライン構築、消毒と廃棄物処理の6領域で22の対策プロジェクトを実施。

(13)陝西省科技庁:新型コロナウイルス感染による肺炎流行緊急予防治療プロジェクト[13]

・重点領域:①検査技術の研究(早期・即時検査技術、潜伏期監視技術に重点)、②感染源・感染経路、予防コントロール対策研究、③診療方策研究(危険・重症患者治療に重点)、④漢方医薬応用の研究、⑤予防コントロール装備の研究。

・①~③について省の主要医療機関が主導する申請を期待。④は、省の漢方医薬管理局関係組織、大学、研究機関の共同申請を期待。既に検査技術や装備の研究開発を開始している企業が①、⑤について申請することを期待。他機関や前述のリードが期待されている機関と連合しての申請を奨励。

(14)浙江省:新型肺炎公共プラットフォーム[13]

・1月27日、省の新型肺炎公共サービスプラットフォームをネット上で正式サービス開始。Q&A,情報提供、スマート診察等。

3.企業等の取組みの進展

(1)シーケンスデータ等を用いた研究のためのプラットフォーム[14]

・新型コロナウイルスのシーケンスデータは、GISAID(Global Initiative on Sharing All Influenza Data)などで公開されている。中国のBiomarkerTechnologies社は、昨夜8時からいくつかのツールと組み合わせて分析できるようなプラットフォームを無償公開している。

公開されたプラットフォーム http://ncovdb.biocloud.net/home

(2)同済大学と企業の協力によるワクチン開発[15]

・同済大学と企業(上海張江国家自主イノベーションモデル区幹細胞戦略バンク・幹細胞技術臨床実用化プラットフォーム)がmRNA合成プラットフォームの成果を活用し、ワクチン開発プロジェクトを開始。40日以内にワクチンのサンプルを開発することを目指したプラン。(1月28日報道)

(3)北京中関村管理委員会:新型肺炎対策自主イノベーション技術[16]

・中国のイノベーション・創業の拠点として知られる中関村管理委員会は、2月4日、新型コロナウイルス対策自主イノベーション技術(第1次)として選んだ86の中関村の企業の138の技術を発表した。

・いずれも、中関村の技術としてそれぞれが知的財産権を有しており、中国または世界の先端技術であり、新型コロナウイルス対策に密接に関連し、すぐにも現場に投入可能との特徴を有するという。

・具体的には、AI視覚チップによる多人数迅速検温技術、新型コロナウイルス検査試薬キット、隔離区域巡視検温広報ロボット、AI活用による感染予防コントロール等。

(4)北京市大興区:ウイルス試薬[17]

・北京市の開発エリアである大興区の若手リーディング人材が開発した15分で検査結果がわかる新型コロナウイルス検査試薬が、武漢市で今回の対策のため新たに整備された火神山病院で活用されているとのこと。(2月10日報道)


[1] 国家自然科学基金委员会关于推迟2020年度项目申请与结题时间等相关事宜的通知

[2] 疫情日志 | 多省份发布新型冠状病毒肺炎应急科技攻关专项项目指南

[3] 科技部提出:科研人员要勇挑重担,全力投入科技攻关任务,把论文写在抗击疫情的第一线

[4] "新型冠状病毒(2019-nCoV)溯源、致病及防治的基础研究"专项项目指南

[5] 科技部会同相关部门共同开展新型冠状病毒肺炎疫情应急科研攻关

[6] 科技部召开国务院应对新型冠状病毒感染的肺炎疫情联防联控机制科研攻关组第二次会议

[7] 疫情日志 | 科技部已启动三批16个新型冠状病毒感染的肺炎疫情科技应对应急攻关项目

[8] 省科技厅启动新型冠状病毒肺炎应急科技攻关项目

[9] 疫情日志 | 多省份发布新型冠状病毒肺炎应急科技攻关专项项目指南

[10] 山西省紧急立项14个新型冠状病毒感染的肺炎防治科研攻关项目

[11] 深圳市科技创新委员会关于发布2020年"新型冠状病毒感染应急防治"专项项目申请指南的通知

[12] 市科技局关于紧急发布"新型冠状病毒感染应急防治"科技重大专项项目启动方案的通知

[13] 各地科技部门积极采取措施为疫情防控提供科技支撑

[14] 百迈客首版"新型冠状病毒基因组数据分析综合平台"免费向科研人员开放

[15] 上海:新型冠状病毒mRNA疫苗研发正式立项

[16] 中关村发布首批抗击疫情的新技术新产品新服务清单
www.zgcnewth.com/2dim/record/pain/file/20200205/1580878228597349.pdf

[17] 北京研发出新版冠状病毒检测试剂 15分钟可出结果