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【20-014】中国、兼職による研究者のイノベーション・創業活動への奨励策を実施

JST北京事務所 2020年2月27日

 人力資源・社会保障部(人事・労務関係制度と社会保険事業を司る中央政府の組織〔日本の省に相当〕、以下、人社部)はこのほど、「事業単位*所属研究者によるイノベーション・創業をさらに支援・奨励することに関する指導的意見」(以下「指導意見」という)を発表し、政府関係機関の研究者の休職による創業、在職または兼職によるイノベーション・創業を支持・奨励することとした。科技日報が伝えた。以下に概要をまとめる。

「指導意見」は、国のイノベーション駆動型発展戦略の実施促進、発展の新原動力の増強を図るべき重要な施策として策定されたという。指導意見の適用は、大学や研究機関等に所属する専門技術職の研究者による研究開発と技術移転、およびこれらに関連する創業活動を対象とする。具体的には以下の通りである。

・事業単位所属の研究者(以下、所属研究者という)は、本職の業務を充分に遂行した上、兼職してイノベーション創出を行ったり、在職で起業したりすることができる。そして、兼職イノベーションや在職起業創設の期間中、本職における給与や社会保険を始めとする各種の福祉待遇が従来とおり与えられるほか、専門職の昇進や課題応募、機関内ポスト申請、奨励等あらゆる権利も継続して享受できる。

・所属研究者は兼職イノベーションや在職で起業する場合、兼業先または創設した企業でも専門職を持つことができる。更に、企業で兼職する場合は、当該企業の職員に同等の報酬、ボーナス、インセンティブストックオプション等を受けることができる。

・休職して企業を創設することについても、関連政策の充実化が求められている。要するに、所属先は、職務や年齢、キャリア、研究成果の形式、受賞と特許の有無などを条件として、所属研究者の企業創設を目的とする休職要請を制限してはいけない。また、休職期限について、基本は3年を超えないものとする。休職期限が切れ、創設した企業に利益が出ていない場合は、休職の延長を1回に限り申請ができるが、その期限は3年までとする。なお、同じ所属先で企業創設を目的とする休職要請は、累計6年間までとする。

・事業単位が所属研究者を企業へ出向させたり、企業の研究課題に参加させたりすることも支持・奨励する。そして、事業単位においてイノベーション志向のポストを設置するよう推奨する。

 このほか、同政策が条件を満たさない者に悪用されないよう、「指導意見」は所属研究者所属先の責任者に、人事管理の規範化、精査をしっかりするよう要求した。


*:事業単位は、政府が国有資産を利用して設立した政府系機関であり、主に教育、研究、文化、衛生保健等の公益事業に従事する。運営経費は主に政府財政資金より割り当てられる。

関連サイト

科技日報《人社部:鼓励科研人员兼职创新 在职办企业》2020年1月22日付