【20-015】新型コロナウイルスによる肺炎の診療マニュアル試行第6版等について
JST北京事務所 2020年2月27日
1.診療マニュアル試行第6版について[1]
2月18日付の新型コロナウイルスによる新型コロナウイルスによる肺炎の診療マニュアル試行第6版が公表された。2月8日付の試行第5版修正版と比較した主な特徴は次のとおり。
(1)感染経路
・主要な感染経路である呼吸器の飛沫と密接接触感染(試行第6版から「密接」の語を追加)に加え、第5版修正版では、解明が待たれるとしていたエアロゾル感染について、「密閉環境において、長時間、高濃度のエアロゾルにさらされる状況」でのエアロゾル感染が「可能」と記載した。
※なお、2月21日の記者会見において、中国科学院の院士が動物実験により、この3条件の下で感染の可能性を示す結果が得られたことを説明し、さらに、開放環境下でエアロゾルによる感染のリスクは極めて低いことを説明している[2]。
(2)診断の基準
・第5版修正版では、湖北省に限り、ウイルス検査の陽性を待たずに、画像診断で肺炎の症状が認められた場合、臨床診断病例として分類し、感染者として取り扱うこととしていたが、検査体制の整備により、臨床診断病例の区分がなくなった。
※2月12日には、湖北省の臨床診断病例が13,332人と発表されている[3]。その後、ウイルス検査等で精査され、確定診断者数の減少も発表されている[4]。
(3)治療方法
・第5版修正版までは、ウイルスに対する治療として、「現時点では、新型コロナウイルスの有効な治療方法として確認されたものはない」とされていた記述が削除された。
・第5版修正版に列記されていた薬品に加え、"磷酸氯喹"(Chloroquine phosphate リン酸クロロキン(マラリアの治療薬))と"阿比多尔"(Abidor)が追加された。利巴韦林(Ribavirin)については干扰素(Interferon)または洛匹那韦(Lopinavir)/利托那韦(Ritonavir)との併用が勧められている。これらの試用薬物については、10日を超えて使用しないことと同時に3種以上の抗ウイルス剤を使用しないことが求められている。薬品や治療方法に関する詳細については、下記に取り上げた点を含め、原典を参照されたい。
・治癒した人の血漿を利用する方法について、より具体的な記載となり、重症や危険な状態の患者の治療について、この治療法が追加された。具体的な用法・用量については、「新冠肺炎康复者恢复期血浆临床治疗方案(试行第一版)」を参照することを求めている。
※既に100名を超える人たちから血漿の提供があり、240回前後の治療用血漿を準備でき、200人以上の重症または危険な状態にある患者の治療に使えるという[5]。
・このほか、漢方医薬を活用した治療についてもこれまでの知見を踏まえた記述がされている。
(4)退院後の注意事項
・退院後、退院させた医療機関が、地域の医療機関との連絡・カルテの共有、地域の医療衛生機構や委員会への情報提供を行うことが求められている。
・治癒後の患者は、14日の健康状況のチェック、マスクの着用、風通しのよい一人部屋での生活、家族との近距離密接接触の機会を減らし、別に食事をし、衛生に留意し、外出を減らすことが勧められている。また、退院後第2週、第4週に診察を受けることを求めている。
2.ワクチン開発の進展[6]
2月21日の記者会見では、科学技術部からワクチンについては、早ければ4月下旬頃に臨床試験の申請がある見通しであることを示した。国家衛生健康委員会は、活性を失わせたワクチン、遺伝子工学技術を活用したワクチン、アデノウイルスベクターワクチン、核酸ワクチン、毒性を弱めたインフルエンザウイルスのワクチンの5つのアプローチの研究が進められていることを紹介した。
[1] 《新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版)》解读
新型冠状病毒肺炎诊疗方案(试行第六版)
[2] 中科院院士:气溶胶在开放环境中传播病毒几率极低
[4] 新版新冠肺炎诊疗方案为何取消临床诊断病例?专家详解
截至2月19日24时新型冠状病毒肺炎疫情最新情况
[5] 已有超100名康复者献出血浆,可对超200名重症患者进行救治