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【20-024】清華大学教授、中国のP3実験室整備・運営に対する政策提言

JST北京事務所 2020年4月22日

 清華大学医学院副院長の張敬仁教授はこのほど、重大な感染症への対応において、大学や研究所が一層重要な貢献を行うために、P3実験室の整備・運営政策を合理的に調整しなければならないと呼びかけた。中国科学報が伝えた。以下にその概要をまとめる。

 張教授は、「中国は重大感染症の病原体研究に関わるハイレベルな生物安全実験室として、SARS(2003年)以来、P3実験室を30、P4実験室を2つ相次いで建設してきた。P4実験室をそれぞれ中国科学院武漢ウイルス研究所とハルビン獣医研究所に置き、P3実験室を大学と研究機関に僅かに設置したほか、ほとんどが中央と地方のCDC(疾患予防・コントロールセンター)に集中している」と紹介した。

 また、張教授によると、ハイレベルな生物安全実験室に対する合理的で科学的な認識が一般の人々の間に足りないことと、同実験室の建設審査基準において病原体の漏洩に伴うリスクと潜在的なマイナス効果を過大に強調することは、中国での当該実験室の整備を妨害しているという。

 このような現状に対し、張教授は、米国等先進国の関連実験室の建設と運営に関する政策を参考にし、中国国内の一流大学で世界一流レベルのP3実験室を多く建設するよう提言した。

 このほか、張教授は2003年に発生したSARSについて、中国はその後同ウイルスおよび関連疾患に対する系統的な研究を停止し、今も有効な薬とワクチンができていないと語り、SARS感染の既存情報を利用して信頼できる動物モデルを構築しなかったことが大きな失敗だと指摘した。