北京便り
トップ  > コラム&リポート 北京便り >  File No.20-037

【20-037】《新型コロナウイルス》中国による白書の発表

JST北京事務所 2020年6月17日

 6月7日中国国務院は、新型コロナウイルス感染症対策に関連して3.7万字の白書を発表した。第1章が時間的経過を、第2章が感染拡大防止と治療の両面の取組みを、第3章が各界の力を集めた取組みを、第4章が国際協力・貢献について取り扱っている[1]

 China Dailyは、この白書のポイントについて、以下の23点を示している(データは基本的に5月末現在)[2]。白書本文の記述も加え紹介する。

1.94%以上の患者が回復。

・ 中国本土の確定診断報告のあった患者83,017人のうち78,307人が治癒・退院した。死亡者数は4,634人(治癒率94.3%)。

2.臨時治療センター(キャビン病院)の果たした役割

・ 武漢で体育館や展示施設等16カ所を10日強で臨時医療施設(キャビン病院)に転用。約1.4万床の病床を提供。全軽症患者を入院治療可能にし、約1.2万人が入院。約8,000人を治療、約3,500人が転院。院内感染ゼロ、死亡者ゼロを達成。感染拡大と重症化の防止に貢献。

3.漢方薬を92%の患者の治療に使用

・ 中国本土の確定診断報告患者の92%、湖北省の患者の90%以上が漢方薬の治療を受けた。医学観察段階から軽症、危重症に至るまで広範な段階で診断・治療に使用。

4.患者に対する無料治療

・ 全国で5.8万人次の精算、総医療費13.5億元(約1.9億米ドル)。確定診断患者一人当たりの平均医療費用約2.3万元。重症患者一人当たりの平均治療費用は15万元超。一部重症患者の治療は100万元超。すべてを国家が負担。

5.湖北省で3,000人以上の80歳以上の患者が回復

・ 個々人の病状に応じて、個別に対応して,少しでも望みがある限り、あきらめない治療を行った。

・ 70歳の患者の例では、医療スタッフ10人が数週間にわたり従事。150万元(約21.1万米ドル)を政府が負担して治療。

・ 7人は100歳以上。

6.最大規模の医療支援活動を展開

・ 中華人民共和国成立後最大規模の医療支援活動を展開。1月24日から3月8日かけて各地と軍から346の国家医療支援チーム,約42,600人(人民解放軍は4,000人強)の医療スタッフと965人の公共衛生スタッフを湖北省や武漢市に派遣。重要な医療機器も手配。

・ 全国の19の省・直轄市が湖北省の武漢以外の16市を分担して医療支援。

・ 全国から4万名の人員、数千台の機械設備を動員し、10日で1,000床の火神山病院、12日で1,600床の雷神山病院を建設。

7.厳格で効果的な情報公開システムを構築

8.中国共産党の強いリーダーシップによる指導

9.約400万人の地域住民が対策に従事

・ 約65万の地域で約400万人の人々が対策に従事。検温、地域の出入管理、感染者のスクリーニング、政策の周知、消毒等の業務に従事。

・ 多数の一般の人たちがボランティアとして協力。881万人が46万のボランティアプロジェクトに登録、2.9億時間以上、業務に従事。

10.科学技術が支えた対策

・ 83の緊急プロジェクトを展開。治療法、新薬・ワクチン開発、検査技術、ウイルス学・疫学、動物モデルの開発等の分野で全国の専門家、研究資源を動員。大学、研究機関、産業界が協力し、研究現場の成果を臨床現場や感染拡大阻止の前線で活用。

・ ワクチンについては、不活性化ワクチン、組換タンパク質ワクチン、弱毒化生インフルエンザワクチン、アデノウイルスワクチン、核酸ベースのワクチンの5つのカテゴリーで開発を進めている。現在までに、4つの不活化ワクチンと1つのアデノウイルスワクチンが臨床試験に進んでいる。

・ 10の薬品が診療ガイドラインに採用され、4つの薬品の臨床試験が承認されている。

・ ビッグデータや人工知能などの新技術も流行の予測や疫学調査に活用。ハイレベルの専門家と山岳地帯の疫学調査チームが5Gの技術を用いて遠距離でもリアルタイムに会話。人々の理解を得て、健康QRコードとデジタルの移動記録が、遠距離の移動、学校や職場、公共的な場所へのアクセス、その他の日常的な活動の基準として採用されている。正確で精密なリスクの評価とコントロールを可能にしている。「感染マップ」により、携帯電話上に症例が報告されたコミュニティの具体的な名前と場所および感染者数が表示される。

・ 今後とも、公衆衛生の緊急対応システムの改善を図る。また、"核心キーテクノロジー攻略新型挙国体制"("关键核心技术攻关新型举国体制"の戦略〔※英語版では、コア技術のブレークスルーのために全国的なリソースをプールするという新しい戦略〕)を強化する。

11.約1ヶ月で急速な感染拡大を抑制

・ 迅速な対応により1ヶ月強で急速な感染拡大を抑制した。約2ヶ月で本土の一日の新規確定診断者数をほぼ一桁に押さえ、約3ヶ月で武漢市や湖北省で決定的な成果を得た。

・ WHOや米国を含む各国に適時情報を提供。ウイルスのシーケンスデータを公開。

12.150カ国・4国際機関を支援

・ 27カ国に対して29の医療専門家チームを派遣。150カ国・4国際機関を支援。

・ WHOに総計5千万米ドルを拠出。

13.200の国・地域に対策に必要な物資を輸出

・ 706億枚のマスク、3.4億枚の防護服、1.15億個のゴーグル、96,700のベンチレーター、2.25億個の検査キット、4,029万個の赤外線検温器を輸出。

14.アフリカの対策への支援を拡大

・ 50カ国とアフリカ連合に医療援助物資を送り、7医療専門家チームをアフリカに派遣。

15.中国疾病予防・コントロールセンターは1月4日に米国に情報提供

・ 1月4日には、中国CDCの責任者が米国CDCのカウンターパートに相談(44の症例が報告された翌日。ヒトの間での感染を中国当局が発表したのは1月20日)。WHO、台湾等にも1月3日から定期的な情報提供。

16.グローバルなウイルスとの戦いにおけるWHOの指導的役割を堅実にサポート

17.中国はウイルスの犠牲者であり、グローバルなウイルスとの戦いにおける貢献者である

18.社会経済の発展へのウイルスの影響を最小にすべく努力

19.最も徹底して厳格で総合的な対策を実施

20.ヒトの間での感染が確定してすぐ情報を公開

・ 国家衛生健康委員会は、1月18日、19日にハイレベル専門家チームを武漢市に派遣。19日夜に精査と議論の末、ヒトからヒトへの感染を確認。20日に発表。

21.389.3億元の寄付を受け取り

・ 中国赤十字会と様々な事前組織が389.3億元(約54.9億米ドル)と様々な物資9.9億件を受け取った。

22.生命を至上とする対策

・ 生後30時間の嬰児から100歳を超える高齢者の患者まで費用を介せず治療・治癒。

・ 対価とリスクを顧みない献身的な治療とあらゆる方法を講じて用意した体外式膜型人工肺(ECMO)により武漢市の重症患者指定病院における9,600人強の治療において治癒率を14%から89%に向上。一般のウイルス性肺炎の治療水準を上回った。

23.武漢の外部への交通を遮断したことでウイルスの広がりを阻止


1. 中华人民共和国中央人民政府《抗击新冠肺炎疫情的中国行动
 China publishes white paper on fight against COVID-19 (full text)

2. Highlights from white paper on China's fight against COVID-19