【21-005】《十四五》第14次五カ年計画および2035年の長期目標の展望について
JST北京事務所 2021年02月02日
中国では、共産党第19回中央委員会第5回本会議(五中全会)で承認された「中国共産党中央委員会の国家経済社会開発第14次五カ年計画と2035年の長期目標の策定に関する建議」(以下「建議」という。)を受け、各界各層やシンクタンクにおいて、それぞれの分野での計画・政策の検討や分析・予測が盛んである。
今回は、深圳に本部を置く投資銀行である中信証券(CITIC Securities)の首席政策アナリストのレポート「第14期五カ年計画及び2035年の長期目標の展望[1]」について科学技術関係の記述を紹介する。なお、この報告書の巻末には、あくまで個人の見解であることが付されている。
・第13次五カ年計画における指標の達成状況(科学技術関連抜粋)
指標 | 2020目標 | 2019達成 | 達成率 |
研究開発費(R&D)投入度 | 2.50% | 2.19% | 88% |
特許保有数(1万人あたり) | 12件 | 12.5件 | 104% |
科学技術進歩貢献率[2] | 60% | 58.5% | 98% |
・企業は科学技術イノベーションの主体であり、産業インフラの高度化、サプライチェーンの現代化を推進し、また財政支出および減税による奨励、政府購入、金融支援等の政策を行う。
・研究機関は引き続き国家の戦略的な科学技術分野における重責を担い、科学技術プロジェクトの組織管理方式に自薦型のリーダーの公募の方式を実施する。研究機関の自主性を尊重し、知識・技術などのイノベーションの要素の価値を十分に体現する収益配分メカニズムを構築し、研究者の職務発明による成果から得られる権益の分配・共有のメカニズムをより良いものとする。
・国家中長期科学技術発展計画(2021-2035)は2020年末か2021年初めに発表される予定であり、人工知能、量子情報、集積回路、生命健康、脳科学、生物育種、航空宇宙科学技術、地底・深海等の分野で新たな国家重大科学技術特別プロジェクトを実施する。
・2020年5月に公表された「新時代における社会主義市場経済体制の整備の加速に関する意見」の要求に基づき、社会主義市場経済の下で、重要な核心技術について、新型の挙国体制を構築し、国家の資源をボトルネックとなる「核心部品」、「キーとなる基礎材料」、「先進的な基礎技術」、「産業技術インフラ」領域に集中。(重点的な支援対象を「中国製造2025」で定められた10産業分野からボトルネックとなるこの4つの領域へ移行させる。)
・そのために、第14次五カ年計画中に以下の政策が実施される見込みである。
重要プロジェクト |
2021~2035年を対象とする国家の中長期的科学技術計画において、これまでに実施された集積回路01,02プロジェクトのような一連の新しいプロジェクトを実施する。 |
税制の特例 |
・企業の研究開発支出の増加を奨励し、研究開発費控除および固定資産減価償却の加速政策を最適化。 ・ソフトウェアや集積回路等の重要な業種で特別税収優遇を実施。 |
金融支援 |
・製造業ローンの割合を引き続き引き上げ:政府産業基金の規模を拡大し、スタートアップ企業に重点を置く。 ・整合性のある業界の姿を誘導:核心的な重要領域の企業の上場のための融資を優先的に支援。 |
政府調達 |
・政府調達と入札に関する法を改正、新製品の初購入や注文サポートを強化し、中国発のイノベーションによる新製品に対しては、一定の割増価格を支払う。 |
パッケージ政策 |
・単純な保険料補助から、政府調達、財政的な奨励策及び金融支援等の包括的な支援政策の拡充を図り、イノベーションによる新製品の使用を奨励。 |
科学研究成果の移転 |
・実際に収益が得られる以前に知的財産権の所有権を所属機関と研究者が共有することを奨励することを主な内容とする職務発明の成果の権利帰属制度を確立し、研究成果の移転に関する課題の解決を図る[3]。 |
以上
1. 2020年11月4日付中信証券研究部主席政策分析師「"十四五"规划及2035年远景目标展望」
2. 経済成長に対する技術進歩の寄与を示す指標として用いられる全要素生産性(TFP)。技術進歩の寄与等は直接の計測が困難であり、一般にTFP以外の要因を控除した残差として推計される。
3. 例えば、この措置については、2018年12月の「国务院办公厅关于推广第二批支持创新相关改革举措的通知」に含まれている。