【21-018】《十四五》イノベーション型国家建設を全面的に支援し、新たな発展パターンの構築へ
JST北京事務所 2021年03月10日
1.概要
3月5日から開催されている中国の全国人民代表大会(国会に相当)において、第14次五カ年計画(「十四五」)が決定される予定である。
十四五のうち科学技術に関する内容について、2月26日に国務院広報室が開催した記者会見において、王志剛科学技術部長が説明を行った。[1]
その主な内容については、以下の通りである。
2.第13次五カ年計画(「十三五」)について
・「十三五」以来、我が国の科学技術力とイノベーション能力は大幅に向上し、歴史的、全体的、構造的な変化を実現した。全社会における研究開発費は2015年の1.42兆元から増大し、2020年には2.4兆元程が見込まれている。
・研究開発の投入強度は2020年には2.4%に達する見込みで、そのうち基礎研究費は2015年から倍増し、2020年には1,500億元を超える見込みである。2020年の科学技術進歩貢献率は60%を超えると予想され、目標が達成される見込みである。また公民が科学リテラシーを備えている割合も10%を超える。
・世界知的所有権機関(WIPO)が発表した「グローバルイノベーション指数」によると、中国は2015年の29位から2020年には14位に躍進した。
3.第14次五カ年計画(「十四五」)について
(1)6つの「新」が、科学技術の実力を際立たせて新たなステップとなる
①システムが基礎研究とキーとなる核心技術のブレイクスルーを推進し、科学技術イノベーション能力による「新たな飛躍」を実現する。
②科学技術の成果を経済社会の主戦場に全面的に取り入れ、質の高い発展である「新運動エネルギー」を形成する。
③科学技術人材チームの規模と質を統一して向上させ、速やかな人材の育成という「新態勢」を形成する。
④重点分野の科学技術体制の改革を深化させ、イノベーション創業という「新生態」を形成する。
⑤積極的にグローバルイノベーションネットワークに溶け込み、科学技術の開放的な協力が「新たな歩調」をレイアウトする。
⑥新型コロナウイルス感染症の研究における重要な問題を迅速に取り組み、全世界が共同して挑戦して対応するために、中国は「新たな貢献」を行う。
(2)「十四五」に向かい、五大措置は科学技術イノベーションの戦略的支持を発揮する
①産業サプライチェーンのハイエンド化推進をめぐり、キーとなる核心技術のブレイクスルーを加速し、人工知能、量子情報、生物育種等の分野において科学技術の重大プロジェクトを実施する。
②実体経済の発展支持をめぐり、科学技術成果の移転と応用を大規模に推進し、国家イノベーションパークやサイエンスパークにおいてハイテク産業クラスターを育成する。
③人民の生命健康の保障をめぐり、重大疾病の予防治療、創薬、医療機器等の研究開発および応用を強化する。
④炭素排出量のピークとカーボンニュートラルの目標の実現をめぐり、汚染防止、エネルギー資源の効率的な利用、気候変動等に適合する重大な技術的問題への取り組みと応用普及を大いに推進する。
⑤イノベーションシステムの全体的な効果を高めることをめぐり、人材の活力を引き出すことを重点に新ラウンドの科学技術システム改革を始動させる。
(3)高水準の自立自強を実現し、「4つの重点」を置く
①キーとなる核心技術のブレイクスルーに重点を置き、重点分野の技術的欠点を補い、新科学技術革命の最前線に向けて先発的な優位性を確保し、科学技術イノベーションにより産業サプライチェーンの安全を保障する。
②基礎研究および独創的研究の強化に重点を置き、生産の実践において基礎的な科学的問題の凝集を強化し、基礎研究および応用研究の協同発展を促進する。
③戦略的科学技術能力の強化に重点を置き、国家実験室の建設を加速し、国家重点実験室の体系を再編する。
④体制改革の推進に重点を置き、政府機能の転換を加速し、評価激励メカニズムを改革し、作風および学風の醸成を強化する。
(4)三大措置が科学技術人材制度の改革を促進する
①全社会における「四唯」(編者註:"論文・職位・学歴・報奨のみ"という過去の実績をもって選定すること)を断固として排除するという鮮明な方向を確立する。
②科学技術人材の称号が評価に影響される状況を打破することが、「帽子が空を飛び回る(編者註:現在の実力ではなく、称号(過去の実績)のみで評価されること)」、「帽子が重なる(編者註:同様に称号(過去の実績)のみで評価されること)」ことに対するブレーキボタンを押すことになる。
③科学研究員の負担を軽減するために特別な措置を展開し、科学技術計画表の簡素化を推進し、科学研究費の煩雑な精算を解決し、科学技術計画の検査を減少させ、科学技術情報の共有等を促進し、現場と科学研究人員の賛同を得る。
(5)「十四五」の期間中には、更に重要な任務がある
①企業の技術イノベーション能力を向上させることは、イノベーションによる発展を堅持し、新たな優位性を全面的に獲得するための核心的な任務であり、新発展モデルの構築を加速し、国内・国際の双循環を円滑にするための重要な任務でもある。
②引き続き広東香港マカオ大湾区国際科学技術イノベーションセンターの建設を着実に進め、香港の国際イノベーションセンター建設を支援する。
③科学技術イノベーションという主要なエンジンと、それぞれ特色を有する地域イノベーションの成長極を構築する。北京、上海、広東香港マカオ大湾区における国際科学イノベーションセンターの建設、質の高い地域イノベーションセンターの建設、地域イノベーションの協調発展システムを改善する。
④国家科学技術計画の管理改革を継続して深化させる。重大研究開発任務は「標ぼうして指揮を執る(編者註:オープンで公平な環境で採択された者が研究を主導する意)」ことを強力に推進し、非共通認識のプロジェクト(編者註:実施の是非について共通認識が定まっていない研究分野のプロジェクト)に対して研究費の支援をするための仕組みを完備する。科学技術計画中の全面的な青年科学者への支援を強化する。「十四五」期間中、改革の深化を継続し、更にイノベーション人材の活力を呼び起こし、科学研究の成果向上に力を入れる。
(6)「基礎研究十年行動計画」を制定する
①学科と研究開発の配置を最適化し、新興学科や人気のない学科、手薄な学科の発展を支援し、学際研究や学科が融合された研究を推進し、いくつかの基礎学科研究センターを建設する。
②戦略的科学計画と科学プロジェクトを制定し実施し、応用を志向した基礎研究を強化し、共通的な基礎技術の供給システムを完備する。
③国家実験室の建設を加速し、国家重点実験室の体系を再編し、基礎研究が体系化された戦略的科学技術力を構築する。
④基礎研究の体制を改革し、基礎研究への投入を増大し、学術への貢献とイノベーションの価値を核心とする評価ガイドを確立し、広範な科学研究人員による勇敢なイノベーション「無人地帯」(編者註:前人未到の地。まだ研究の手が入っていない分野)を支援する。
(7)今後の五年間、基礎研究への資金投入能力を継続して強化する
政府資金投入を主として、社会の様々なチャネルによる投入システムの形成を加速し、企業と社会が基礎研究への資金投入に力を入れるよう奨励する。
一方で、中央財政の投入が持続的に増加し、安定と競争が調和するよう支援体制を改善する。また企業が投入する基礎研究の税制優遇政策を研究の上制定し、企業が適切な方法で基礎研究に対する支援を増やすよう指導する。
(8)新型コロナウイルス感染症の研究は難関を突破しても気を緩めない
すでに17種類のワクチンが臨床試験を実施しており、そのうち7種類のワクチンがⅢ期臨床試験に進み、4種類がすでに条件付きで販売されている。
・2月17日までに、全国の重点人口へのワクチン接種は4,200万回を超えた。
・多くの者が関心を有するワクチンの有効性とウイルスの変異について研究を強化している。すでに7つの単一品種と1つの混合品種で臨床試験が承認され、3つの単一品種と1つの混合品種については海外で臨床試験が行われている(そのうち、開発が進展している中和抗体のⅢ期臨床試験の結果、患者の死亡防止に100%の効果があることが明らかになった)。
・持続的な疫病の予防と抑制を推進し、生命と健康分野における長期的な支援を強化し、病原学の研究と先端医療機器の欠点を補完する。
以上
1. "一图看懂"十四五"科技工作怎么干" 中国科普网2021年2月26日