北京便り
トップ  > コラム&リポート 北京便り >  File No.21-046

【21-046】中国の2019年度における「一定規模以上企業」R&D活動の統計分析

JST北京事務所 2021年08月12日

 中国科学技術部(MOST)がこのほど同部HPで発表した「2019年わが国の一定規模以上の工業企業のR&D活動統計分析」によると、中国の一定規模以上の工業企業[1](以下、「一定規模以上企業」という)のうち、2019年にR&D(研究開発)活動を行っていた企業は12.9万社あり、34.2%を占める。以下に概要をまとめる。

1.R&Dを行う一定規模以上企業の中で、8.5万社がR&D部門を設置し、一定規模以上企業全体の割合の22.5%(前年より3.3ポイント増)を占める。そして、研究開発活動を行う一定規模以上企業の資本別では、中国本土の国内資本企業が11.4万(87.9%)、香港・マカオ・台湾系企業が7,418社(5.7%)、外資系企業が8,232社(6.4%)であった。

2.全国の一定規模以上企業のR&D人員は、全国のR&D人員の62.3%を占める444.1万人であり、うち、女性が97.2万人で、同21.9%を占めた。また、FTE(フルタイム換算)統計では、一定規模以上企業のR&D人員は315.2万人年であり、そのうち研究者が97.1万人年で、全体の30.8%を占める。

3.2019年の一定規模以上企業はR&Dへの支出総額はおよそ1.4兆元に上り、前年より7.8%増えた。内訳は以下のとおりである。

・ 企業の資本別では、国内資本企業が圧倒的に多く1.1兆元を支出し、全体の80.3%を占める。その他、香港・マカオ・台湾系は1138.4億元(8.1%)、外資系は1613.8億元(11.6%)であった。

・ 業種別では、25業種は業種ごとの支出総額が100億元を超えている。このうち、計算機・通信・その他電子設備製造業(2,448.1億元)、電気機器・機材製造業(1,406.2億元)をはじめとする9の業種でそれぞれ500億元以上となり、全体の69.3%を占めた。

・ 地域別では、広東省、江蘇省、浙江省および山東省が1千億元を超え、これら4省のR&D経費総額が全国の50.1%を占める。

4.R&D経費投入強度(R&D経費の対GDP比)は1.31%、前年より0.08ポイント増加した。業種別では、鉄道・船舶・航空宇宙・その他輸送設備製造業と機器・メーター製造業はそれぞれ3.16%で同率でトップとなり、そしてこれら2業種および自動車製造業、化学原料・化学製品製造業等の9業種では、当該比率が全体平均値(1.31%)を上回った。

5.特許の出願[2]について、2019年に106万件の出願があり、前年より10.7%増加した。このうち発明特許は39.9万件で、前年より7.3%増加した。

また、発明特許の保有数では、2019年に121.8万件となり、前年より11.3%伸びた。発明特許保有量の内訳は、次のとおり。

・ 企業の資本別では、国内資本企業が全体の84.4%となり、香港・マカオ・台湾系企業と外資系企業はそれぞれ7.7%と7.9%を占めた。

・ 業種別では、計算機・通信・その他電子機器製造業が34%で割合が最も大きく、電気機器・機材製造業が14.3%で2番目に割合が大きかった。これら2業種の特許保有総数は、全ての一定規模以上企業が保有する有効発明特許の39.7%を占める。

・ 地域別[3]では、東部が88.1万件(全体の72.3%)、中部が18.5万件(同15.2%)、西部が11.9万件(同9.7%)、東北部は3.4万件(同2.8)であり、省市別では、広東省と江蘇省の全体に占める保有率がそれぞれ30.8%と14.9%となり他省市をリードしている。

6.技術取引について、2019年、全国一定規模以上企業の経費投入は476.7億元となり、前年より2.5%増となった。具体的に以下のとおりである。

・ 企業の資本別では、外資系は262億元を支出し、全体の51.9%(前年より2.9ポイント減)を占める。国内資本企業は205.7億元(前年より11.5ポイント増)を支出し、経費投入全体の割合の43.2%を占めた。香港・マカオ・台湾系企業は9億元(前年より0.7ポイント減)を支出し、経費投入全体の割合の1.9%を占めた。

・ 2019年の技術導入経費の対R&D経費比では、3.4%であり、前年より0.2ポイント減少。企業の資本別の割合では、外資系企業、国内資本企業、香港・マカオ・台湾系企業の順でそれぞれ16.2%、1.8%、0.8%となっている。

・ 企業が導入する技術の吸収に関連する費用は96.8億元で、前年より6.4%増加し、この費用の技術導入経費に対する割合は20.3%で、前年より0.7ポイント増加した。


1. 中国では、工業企業について、企業が主たる事業によって得た収入額を基準にして、一定規模以上工業企業と一定規模以下工業企業に大別する。この基準は国の経済発展等に伴って修正されてきている。1998年~2006年は全ての国有企業と主業収入が500万元に達した非国有企業を、2007年から2010年は国有企業も統計対象とされた主業収入が500万元に達した企業を一定規模以上工業企業に定義していたが、2011年以降、国務院の批准により、同基準は2千万元に引き上げられた。注:現時点で1元は約17.2円。
参考《规模以上工业企业》百度百科

2. 中国では、実用新案と意匠に関する知的財産権も発明と同様に特許(中国語で「専利」)の語が用いられる。ここでも実用新案や意匠に相当するものを含むと考えられる。

3. 中国の地域の区画は、行政区画、経済区画等複数の区分法があり、ここでいう「東部、中部、西部、東北部」とは、国家統計局が経済地域として区分したのである。詳細は以下のサイトを参照。
东西中部和东北地区划分方法》国家统计局,2011年6月13日

関連リンク:

2019 年我国规模以上工业企业R&D 活动统计分析》中国科学技术部,2021年6月11日