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【21-047】中国の中央財政科学技術計画について(全体概要)

JST北京事務所 2021年08月13日

1. 概要

 日本において大学の研究者が自身の研究を進めるための研究費は、所属する大学等の研究機関から配賦される内部資金と、競争的資金[1]に代表される外部資金で構成される。

 中国においても同様に、所属機関から配賦される研究費だけでなく、外部資金も獲得して研究を進めることが一般的である。

 今回、中国における代表的な外部資金である中国中央財政(中央政府)科学技術計画について紹介したい。

2.科学技術計画(特定プロジェクト、基金等)

 2014年、国家発展改革委員会により「中央財政による科学技術計画(特定プロジェクト・基金等)の管理改革の深化に関する方案」[2]を発出の上、国家戦略の必要性や政府科学管理機能および科学技術革新規則に基づき従来各部(日本の府省に相当)がそれぞれ管理していた公開競争方式を取るすべての科学技術計画(日本の競争的資金に相当)を5種類に統合した。

 以下5種類の科学技術計画は、すべて統一された国家科学技術管理プラットフォームにて管理され、重複申請や資金の集中が生じないよう調査される。

(1)国家自然科学基金

基礎研究と科学の最先端研究の探索に資金を援助し、人材育成とチームの育成を支援し、革新能力を強化する。

(2)国家科学技術重大特定プロジェクト

国家の重要な戦略製品と重大な産業化に焦点を当て、挙国体制の優位性を発揮し、設定期間内に統合的かつ協同的にブレイクスルーを果たす。

(3)国家重点研究開発計画

国の経済と国民の生活に関わる農業、エネルギー資源、生態環境、健康等の分野において長期的な発展が必要な重大社会公益性研究および産業のコアコンピタンス、全体の自主的イノベーション能力と国家安全に係る戦略的、基礎的、展望性で重要な科学的問題、重大な共通性のある基幹技術と製品、重大な国際科学技術協力について、重点特定事業に基づいて実施を手配し、部門や業界、地域の枠組みを越えたクロスボーダーな研究開発の配置と連携イノベーションを強化し、国民経済と社会発展の主要分野に持続的な支援と牽引力を提供する。

(4)技術イノベーション誘導特別プロジェクト(基金)

リスク補償、事後補助、イノベーション投資誘導等の方式を通じて財政資金の役割を発揮し、市場メカニズムを利用して技術革新の活動を導き、科学技術成果の移転および資本化、産業化を促進する。

(5)研究拠点と人材プログラム

配置を最適化し、科学技術イノベーション基地の建設と能力向上を支援し、科学技術リソースの開放・共有を促進し、イノベーション人材と優秀なチームの研究活動を支援し、中国の科学技術イノベーションの条件の保障能力を向上させる。

3.国家科学技術管理プラットフォーム

 上記のとおり、統合された5種類の科学技術計画は、すべて統一された国家科学技術管理プラットフォームにて管理されている。具体的には以下のとおり。

(1)府省横断的な会議制度の構築

・ 科学技術部が主導し、財政部、発展改革委員会等の関連部門が参加する府省横断会議制度(合同会議)を構築。

・ 合同会議では、科学技術発展戦略計画の審議、科学技術計画(特別プロジェクト、基金等)の設置、総合審査員会の構成、研究基金専門管理機関の選択の審議等を行う。

・ その上で、財政部は予算管理関連規程に従い、科学技術計画予算を配賦。

・ 各関連府省が密接に連携。

・ 重要事項は、手順に従い国務院に報告し、特に重要な事項は党中央に報告する。

(2)研究基金専門管理機関がプロジェクトを管理

・ 条件を備えた研究管理類似事業を行っている研究機関を規範化されたプロジェクト管理専門機構に改造。

・ 統一された国家科学技術管理情報システムを通じて、研究基金専門管理機関が各プロジェクトの申請、プロジェクト組織の審査、プロセス管理および研究終了の検収等を行い、目標の達成に責任を持つ。

・ 研究基金専門管理機関が関連科学技術分野のプロジェクト管理能力を備え、適切な法人管理構造を確立するよう理事会、監事会を設立し、定款を制定。

・ 合同会議が定める任務に従い委託を受け、業務を展開。

・ 研究基金専門管理機関に対する監督、評価、調整等を強化し、委託契約と関連制度の規程に従いプロジェクトを管理する。

・ プロジェクト審査専門家は、国家科学技術プロジェクト審査専門データベースから選定。

・ 条件を備えた社会化科学技術サービス機関の競争参画を促し、専門機構の市場化および社会科を推進。

(3)特別諮問委員会

・ アカデミアおよび産業界、経済界のハイレベルな専門家により構成される特別諮問委員会は、科学技術発展戦略計画、科学技術計画(特別プロジェクト、基金等)の配置、重点特別プロジェクトの設置及や廃止等、合同会議における意思決定の参考となる意見を提出する。

(4)統一的な評価および管理監督メカニズムの確立

・ 科学技術部、財政部は、科学技術計画(特別プロジェクト、基金等)の実績、戦略コンサルタント・総合審査員会および研究基金専門管理機関の職責全般について組織評価と監査を行う。

・ 科学研究における信用体系の構築を進め、「ブラックリスト」制度および責任調査制度を実行する。

・ 科学技術計画(特別プロジェクト、基金等)の業績評価は、公開競争等の方式で第三者機関に委託。評価結果は、中央財政資金配賦における重要な根拠となる。

・ 研究費の管理に係る監査監督を強化し、発見された違法行為に対しては断固として取り締まり、社会に公開し、警告教育の役割を発揮させる。

(5)動的調整メカニズムの確立

・ 科学技術部、財政部は、業績評価と監督検査結果および関連部門の提案に基づき、科学技術計画の動的調整意見を提出。

・ 目標の達成または期限到来により自動的に終了。

・ 継続的な実施が必要である場合、新科学技術計画を設立。重点プロジェクトの場合、科学技術部、財政部は関連部門と協議して提案、合同会議で承認。

(6)国家科学技術管理情報システムの完備

・ 統一された情報システムを通じて、科学技術計画の公募、ガイドライン公布、応募、審査と予算配賦、監督検査、終了時検収等の全過程について情報管理を行い、社会に非機密情報を公開し、社会の監督を受ける。

・ 統一情報システムに登録されていないプロジェクトについては、中央財政資金を申請できない。

4.研究基金専門管理機関について

 上記のとおり、府省横断合同会議により選定され委託を受けた研究基金専門管理機関が、大学等各研究機関で実施される科学技術計画に基づく研究プロジェクトを管理しており、研究費の執行にも大きな役割を担っている。(研究費は、研究基金専門管理機関から研究代表機関に振込される)

 研究基金専門管理機関の役割については、前述「中央財政による科学技術計画(特定プロジェクト・基金等)の管理改革の深化に関する方案」の他、科学技術部が発出した「中央財政科学技術計画(特定プロジェクト・基金等)プロジェクト管理研究基金専門管理機関管理暫定規程」[3]においても規定されている。

 2018年合同会議において、13の部門が推奨する24機関から以下の7機関が研究基金専門管理機関として選定され、さらに中国科学技術交流センターが主要な政府間/香港、マカオ台湾の特別プロジェクトを担当している。

①中国農村技術開発センター(中国农村技术开发中心)

②中国21世紀アジェンダマネジメントセンター(中国21世纪议程管理中心)

③中国バイオテクノロジー開発センター(中国生物技术发展中心)

④科学技術部ハイテク研究開発センター(科学技术部高技术研究发展中心)

⑤農業農村科学技術開発センター(农业农村部科技发展中心)

⑥国家衛生家族計画委員会医学・薬学衛生科学技術開発研究センター(国家卫生计生委医药卫生科技发展研究中心)

⑦工業・情報化部産業開発促進センター(工业和信息化部产业发展促进中心)

⑧中国科学技術交流センター(中国科学技术交流中心)

(※)国家自然科学基金は、国家自然科学基金委員会が所管・管理運営。

以上


1. 競争的資金 内閣府競争的資金制度ウェブサイト

2. 关于深化中央财政科技计划(专项、基金等)管理改革方案的通知(国发〔2014〕64号)

3. 中央财政科技计划(专项、基金等)项目管理专业机构管理暂行规定

関連リンク:

科学技術振興機構研究開発戦略センター 海外トピック情報「中国の中央政府による競争的ファンディングプログラム」

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