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【22-006】開放ライセンス制度によって特許使用を促進する

JST北京事務所 2022年02月17日

 2020年10月の中国全人代(全国人民大会)常務委員会で議決された「中華人民共和国特許法」の改正[1]によって、開放ライセンス制度が新しい制度として特許法に盛り込まれた。

 これは、ある特許について、あらかじめ定められたライセンス料を支払うことにより、誰でも実施できるようにする制度である。我が国においては、一部の企業が、同趣旨の試みを自主的に行っており、その説明には、「有償開放特許」との説明がなされている2。今回の中国における法改正では、特許(中国の特許法では「発明専利」)、実用新案(中国の特許法では、「実用新型専利」)、意匠(中国の特許法では「外観専利」)を対象とし、権利者の発意による声明に基づき、当局が公告等の業務を行う。

 この開放ライセンス制度に関して、国家知的財産権局知的財産権研究センター所属の王淇副研究員の「開放ライセンス[2]制度によって特許実施を促進する」と題する文章が12月2日付で国家知的財産権局webサイトに掲載された。以下にその概要を改正後の条文とともにまとめる。

 改正後の特許法は、従来の強制実施許諾制度[3]に加え、海外の立法も参考にして開放ライセンス制度を導入し、特許実施許諾の方法の選択肢を増やした。

 改正後の特許法では、開放ライセンスに関して以下の規定を定めている。

・ 第50条において、自己が権利を有する知的財産権について、開放ライセンスとする声明とその声明の撤回について規定している。同条では、特許権者は国務院の特許行政部門に対し、自己が権利を有する知的財産権を開放ライセンスとすることについて、書面により声明し、そして実施料の額と支払方法を明確に決めるよう求めている。当局の公告により開放ライセンスが効力を持つ。実用新案及び意匠については、権利の評価報告書を提出しなければならない。知的財産権の権利者が開放ライセンスの声明を撤回する場合は、書面によって行い、当局が公告する。撤回後も既に行われた開放ライセンスに基づく実施許諾は影響を受けない。

・ 第51条において、開放ライセンスによる実施許諾の獲得、年間特許料の減免を規定する。開放ライセンスによる実施許諾を希望する個人又は法人は、知的財産権の権利者に対する書面による通知と実施料の支払により実施許諾を得る。当事者間の協議により、通常の実施許諾を行うことも可能であるが、独占的・排他的な実施許諾を行ってはいけない。

・ 第52条において、開放ライセンス実施に関する紛争の処理について規定する。当局による調停や法廷への提訴が可能である。

 今度の改定は、これまでの特許の実務における実際のニーズに応じたものである一方、知的財産権関連政策法令や知的財産権の運用施策などとも併せて、特許制度の運用の質の高い発展を図るものと期待される。また、開放ライセンスの実施に当たって、王淇副研究員は、以下のように助言した。

・ 特許権利者の実施意欲を高めるために、開放ライセンス制度で年間特許料の減免制度を導入したことに加え、その他のインセンティブ政策の適用も配慮すべきである。

・ 知的財産権運営プラットフォームや知的財産権取引所と連携し、特許情報の入手や発信のための仕組みなどを含む特許開放ライセンスの市場化を推進する必要がある。

・ 国務院が進める社会全体の信用システムの構築の中において、知的財産権信用システムの構築に関連付けさせ、開放ライセンスの実施において起こった特許権利者の不正行為などを信用システムへ反映する。

 王淇副研究員によれば、開放ライセンス制度の導入によって、特許実施の質の向上、特許運営効率の改善、取引コストの低減、特許の価値実現、特許市場の拡張、イノベーション・クリエーション創出の促進などが期待できるという。


1.全人代は2020年10月17日に開催した常務委員会において、特許開放ライセンス制度の設立を含む「中華人民共和国特許法」改定案を審議して議決した。同法改正の詳細及び改正後の条文は以下のURLのとおりである。
www.gov.cn/xinwen/2020-10/18/content_5552102.htm
www.cnipa.gov.cn/art/2020/11/23/art_2197_155169.html

2.「有償開放特許」の説明例

3. 強制実施許諾制度とは、特許権者の同意を得ない状況下で、政府が方に基づき、他者にその特許を実施する権利を与える制度であり、中国の特許法では、第6章に定められている。2021年の改正では、第6章に開放ライセンス制度の規定が加えられたことにより、表題が「特許の強制実施許諾」から「特許実施の特別な許可」に改められた。日本の特許法では、裁定制度として定められている。

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