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【22-024】中国のEarth2.0計画について

JST北京事務所 2022年05月10日

 中国では、宇宙ステーションコアモジュール天和から分離した友人宇宙船神舟13号が4月16日に無事地球に帰還したことの報道が注目された。また、4月12日、Natureサイトに掲載されたニュースによれば、新しい宇宙関連のプロジェクトとして、太陽系外惑星を発見するための中国初のミッションの計画が4月中にも発表されるとのことである。

 このミッションは、恒星のハビタブルゾーン(habitable zone 生命居住可能領域)を周回する地球に似た惑星(Earth2.0)の発見を目標に、天の川の他の地域を探査する。液体としての水や生命が存在するための適切な条件を持っていることが期待される。

 天の川銀河ではすでに5,000以上の系外惑星が発見されており、その多くはNASAのケプラー望遠鏡が稼働していた2009年~2018年までの9年間に見つけられたものである。このうちのいくつかの惑星は、小さな赤色矮星の周りを回る岩石のような地球のような天体であったが、どれもEarh2.0の定義に合致しなかった。また、地球に似た惑星は、1年程度の公転周期を持つと考えられ、その計算には3回以上の公転周期のデータが望ましいとされるが、ケプラー望遠鏡は4年目に機器の故障により、当初計画されていた形での長期間の観測・データ取得が行えなかった。

 米国パサデナのカリフォルニア工科大学にあるNASA太陽系外惑星科学研究所の天体物理学者、Jessie Christiansen氏によれば、現在の技術と望遠鏡では、主星が100万倍重く、10億倍明るいとき、小さな地球のような惑星の信号を見つけることは非常に困難とのことである。

 Earth2.0と呼ばれる中国のミッションは、この困難を打破することを目指している。Earth2.0衛星は、7つの望遠鏡を搭載し、ケプラー望遠鏡が調査したのと同様な方面を4年間、観測する計画である。中国科学院の上海天文台でEarth2.0ミッションを率いる天文学者Jian Ge(葛健)氏によれば、この方面は、ケプラー望遠鏡の調査で非常によいデータが得られているので、成果が得やすいとのことである。

 現在、初期設計を終えようとしており、6月に専門家パネルによる審査を受ける。これに合格すれば、ミッションチームは、実際に衛星の製造を開始するための資金を受け取ることになる。チームは、2026年末までに長征ロケットで宇宙船を打ち上げる予定だ。

 Nature誌サイトでの掲載を受け、この計画に言及したサイト[1]では、2027年夏、観測開始、2031年までに、10数個のEarth2.0に該当する惑星を、そして5000個の地球に似た惑星を見つけることを目指すという。また、この計画は、中国科学院(CAS)の戦略性先導科技プロジェクト(Strategic leading science and technology project of Chinese Academy of Sciences)から支援されるという。CASの戦略性先導科技プロジェクトのB類、基礎・学際フロンティア領域の中に、「地球に似た惑星の形成、進化及び居住可能性」というテーマがあり[2]、2020年時点では、少なくとも3つのプロジェクトと55のサブプロジェクトを有していることに言及したサイト[3]がある。

 望遠鏡は、惑星がその前を通過したことを示す星の明るさの小さな変化を検出することによって系外惑星を探す。複数の小型望遠鏡を一緒に使用すると、科学者はケプラーのような単一の大型望遠鏡よりも広い視野を得ることができる。Earth2.0の6つの望遠鏡は、ケプラー望遠鏡の約5倍の空域の視界を有し、約120万個の星を一度に観測する。また、Earth 2.0は、地球近くの明るい星を調査するNASAのトランジット系外惑星探査衛星(TESS)よりも暗く、より遠い星を観察することができる。Ge氏は、Earth2.0 衛星はケプラー望遠鏡の10〜15倍の能力を持つと言う。

 衛星の7番目の望遠鏡は、どの恒星も周回していない自由に歩き回る天体と、海王星に似た星から遠く離れた系外惑星を調査するための重力マイクロレンズ望遠鏡とのことである。惑星や星の恒星の重力による星の光の歪み、変化を検出する。この望遠鏡は、膨大な数の星がある天の川の中心をターゲットにする。宇宙で動作する最初の重力マイクロレンズ望遠鏡になるという。

 Ge氏は、「私たちの人工衛星は、さまざまなサイズ、質量、年齢の太陽系外惑星を特定する、いわば星の国勢調査を実施することができる。このミッションは、将来の研究のために太陽系外惑星サンプルの良いコレクションを提供するだろう」と言う。

 Ge氏は、1ダースのEarth 2.0惑星を見つけることを望んでいる。データは、収集から1〜2年以内に公開する予定とのことである。すでに主として中国から約300人の科学者とエンジニアがチームに参加しているが、さらに世界中の天文学者が参加することを望んでいるとのことである。記事では、ケプラー望遠鏡も地球に似た惑星を見つける寸前だったのではないかというChelsea Huang氏(データシミュレーションコンサルタントとしてEarth 2.0チームと協力)の見解ケプラー望遠鏡の観測データと新たな4年間のデータを組み合わせることができることに期待を示すChristiansen氏のコメントを紹介している。

 なお、欧州宇宙機関(ESA)は、Planetary Transits and Oscillations of Stars (PLATO)と呼ばれる系外惑星ミッションを計画している。2026年打上げ予定であり、26の望遠鏡を有し、Earth2.0よりも大きな視野での観測を行う計画である。ただし、この衛星は2年ごとに異なる領域を観測するとのことである。


1.中科院:立项"地球2.0计划"!中国版"地外生命探测工程"将开启

2.先导专项

3.中国科学院比较行星学卓越创新中心暨B类战略性科技专项"类地行星的形成演化及其宜居性"2020年度工作总结大会在贵阳召开

関連リンク

China is hatching a plan to find Earth 2.0