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【22-032】テンセント社、今後10年間で100億元の基礎研究支援

JST北京事務所 2022年06月07日

 民間資本による基礎研究支援の「新基石研究員事業」(中国語:新基石研究员项目)が最近設立された。公益的な新型基礎研究支援事業として、創造的なイノベーション、研究者による自由探索に焦点を当てて運行されるという。科技日報が伝えた。以下にその概要をまとめる。

「新基石研究員事業」は、テンセント社が昨年設立した「持続的社会価値創出」戦略のための1千億元規模の特別資金を用いて、これからの10年間にトータル100億元(約1,900億円)を出資し、優秀な研究者が自ら選んだテーマで実施する「ゼロから1へ」の創造的なイノベーションに資する基礎研究を長期的に支援するものである。「新基石研究員事業」は、「研究者の主導の下で運営する」を原則とし、運営のための中核的な機関として科学委員会を設けており、初代の主席(長)には、施一公中国科学院院士/西湖大学学長が選ばれた。

「新基石研究員事業」では、数学・物質科学分野とバイト・医学科学分野において、これからの10年間で、中国本土(大陸部)と香港・マカオの優れた常勤研究者を対象に、計200~300人を支援するという。課題の公募は今年内に起動すると予定され、応募条件などの関連情報がこれから公開されることになる。

 同事業の設立について、施一公主席は、「これからの10~20年は中国の科学技術が量の蓄積から質の飛躍的発展へまい進するための重要な時期であり、基礎研究により多くのブレイクスルーを実現するよう求められている。」と語り、同事業で支援された研究者が、重大な科学問題の提出と解決、理論創出の推進、学問最先端の牽引、新しい研究領域の開拓などをもたらし、学術界のリーディング人材となることへの期待を示した。そして、民間資金として基礎研究を支援するテンセント社の当該取り組みに対し、同事業の科学委員会のメンバーの一人である潘建偉中国科学院院士/中国科技大学副学長から、「これは国による基礎研究投入への有益な補足で、科学界の宿願に応じたものだ。自由探索型の研究は、確定性に欠け、難しくてリスクが高く、時間がかかるが、柔軟性のある民間資金の参与は、自由探索に携わる研究者に対して,雪中に炭を送ることだ。」と評価された。

 テンセント社は基礎研究支援を長期的かつ熱心に進めており、2018年には、中国国内の研究者と共同して、若手研究者を支援する「科学探索賞」も創設している。

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