【23-005】2022年全国科学技術活動会議の概要
JST北京事務所 2023年01月19日
中国科学技術部(以下、科技部という)は2022年12月30日に全国科学技術活動会議(以下、会議という)をオンラインで開いた。2022年の科学技術活動および党「十八大」(中国共産党第18回党大会2012年開催)以来の科学技術イノベーション推進における実績を振り返った上、来る2023年の重点業務について見通しを示した。王志剛科技部長が活動報告を行った。科技部サイトが伝えた。以下にその概要をまとめる。
2022年と十八大以来の実績について主に以下が取り上げられた。
〇2022年の科学技術活動の実績
・ 重点分野における難関攻略の推進加速、コア技術の開発にブレイクスルー実現、国家重点研究開発計画79項目の全面実施、212件の技術を北京冬季オリンピック大会への応用、新型コロナウイルスに対応するワクチンや治療薬の開発
・ 国の戦略的科学技術力の増強において、国家実験室の整備加速、全国重点実験室の再編、基礎学科研究センターの整備発足
・ 技術イノベーションによって経済の安定促進において、企業の技術イノベーションキャパシティーに資する取組の実施、未来産業・サイエンスパーク整備の試行
・ 人民銀行(中央銀行)と共同して、イノベーション刺激に資する4,000億元の再貸付設立
・ 北京、上海等既存のイノベーションクラスターへの支援強化のほか、国家自主イノベーションパーク(2か所)、国家ハイテク区(8)、国家持続的発展アジェンダイノベーションモデル区(5)とイノベーション型都市(25)の新規設立
・ 科学技術進歩法の修正、奨励・インセンティブメカニズムの充実、研究成果評価の改革試行
・ 人材育成の加速、若手研究者の負担軽減、重点研究開発計画における若手研究者項目の増加
・ 外国籍人材の来中への便宜供与強化
・ 40部門を超えた横断型の協力の仕組の設立による科学普及推進強化
・ 科学倫理審査方法の制定などよる科学倫理ガバナンスの強化
・ 国際協力において、Deep-time Digital Earth(DDE)[1]や地球規模の海洋ネガティブエミッション(Global-ONCE: Ocean Negative Carbon Emissions)[2]等巨大科学プログラムの推進・提唱、中米や中欧、中国・ASEANなどの協力推進、および協力プロジェクトによる国家元首外交等への貢献(32プロジェクト)、多くの国との間で科学技術合同委員会の開催(48回)
〇十八大以降の10年間に、全国の研究開発費は1兆元から2.8兆元に、対GDP比で1.91%から2.44%に増え、世界でのイノベーション指数ランキングは34位から11位に上がった等誇るべき実績をなし遂げた。具体的には
・ 世界における中国科学技術力の地位が大幅に上昇。イノベーション駆動型発展戦略要綱、中長期科学技術発展計画などトップダウン設計の強化、基礎研究への支援強化(2012年の499億元から2021年の1817億元に増加)、量子情報、幹細、脳科学など最先端分野での重要成果の取得等が挙げられる。
・ イノベーション駆動型発展戦略実施によって、発展を駆動する強力なエンジンを形成した。国産大型飛行機、高速鉄道、炭素のクリーン応用、新型原子力発電、5Gの初大規模応用、人工知能応用や新エネルギー車生産販売、新型ディスプレー技術産業化の世界一などを誇る。
・ 戦略的技術力の強化と国家研究能力システムの再建を実現。国家実験室システムの整備加速、大学や研究機関の研究力改善、イノベーションにおける企業の主体的地位の向上、500m口径電波望遠鏡(FAST)など基盤施設の活躍などが目立った。
・ 食糧安全の確保、貧困脱出対策、環境対策、健康保健などを強力に支援し、社会進歩と民生改善へ貢献した。
・ 地域的なイノベーション推進によって新しい発展けん引力を形成した。香港・深圳・広州、北京、上海・蘇州は科学技術クラスターとして世界でのランキングがそれぞれ2、3、6位となった。そして、国家ハイテクパークも2012年の89ヶ所から177ヶ所に増え、全国35.9%の技術型中小企業、36.2%のハイテク企業、67.4%の科創板(中国版ナスダック)上場企業を集めている。
・ 科学技術体制改革において歴史的なブレイクスルーを実現。奨励、評価など基盤制度の改善、科学技術進歩法、科学技術成果移転促進法、特許法、ヒト遺伝子資源管理条例などの法整備推進、「掲榜挂帥」や「賽馬」など研究プロジェクト管理の新制度の導入、研究費の企業課税所得からの控除など税制優遇策の実施など。
・ 人材重視の強化。研究開発従事者は2012年の325万人から2021年の572万人に、論文高被引用者に数えられた研究者は2014年の111人から2022年の1,169人に、ノーベル賞をはじめ世界で重要な賞を相次いで受賞している。そして、若手研究者支援、外国人研究者の在中活躍支援などの環境づくりにも取り込んでいる。
・ 科学普及において、科学普及法の修訂、科学素養行動要綱など法令の整備、科学普及施設や用品などを対象とする税制優遇策の導入を行った。科学リテラシーを有する国民の比率は2010年の3.2%から2020年の10.56%に増加した。
・ 科学技術の国際協力において、161の国・地域と協力関係を築き、116件の政府間協力協定を結んでいる。国際熱核融合実験炉(ITER:)、1平方キロメートル電波望遠鏡(SKA : Square Kilometer Array)等巨大サイエンスプログラムに参加している。そして、200以上の国際機関、マルチメカニズムに参加し、57の国や国際機関と共同支援制度を持っている。
この他、会議は今後の科学技術推進について以下の重点業務を提出した。
・ 国の戦略的需要と長期的な発展に向けた国の戦略的科学技術力を強化する。
・ 国を挙げた体制を充実し、コア技術開発の難関攻略に取り組む。
・ 国家重大科学技術プログラムの実施を加速させ、新しい経済成長力を育成する。
・ 基礎研究を一貫して強化し、重点分野において前向きに配置する。
・ 自立自強の要求に向けて科学政策を実施し、科学技術体制改革を推進する。
・ 国際科学技術イノベーションセンター、地域科学イノベーションセンターの建設を統一に計画し、世界で先進的なイノベーション・創業生態圏を構築する。
・ 企業のイノベーション主体の地位を強化し、市場の優位性を生かしてイノベーションキャパシティーと競争力を育成するよう指導する。
・ 人材戦略の配置を改善し、高いレベルの人材を育てる
・ 国際協力交流を拡大し、世界で競争力のある開放的なイノベーションエコーを形成する。
会議は、中国科学院、中国工程院、国家発展改革委員会、教育部、工業情報化部、財政部など多数の関係省庁からも参加した。
1.中国の科学者が提唱、国際地質科学連合(IUGS: International Union of Geological Sciences)の初めての大型国際科学技術協力プロジェクトとして2019年に公式に始動。英国、ロシア、米国等の機関を含む12の国際組織・機関が創設メンバーとして参加。地球科学者とデータ科学者のグローバルな協力、交流のための国際プラットフォームを構築し、地球規模の地質ビッグデータと高効率なスーパーコンピューティング手法により完全な生命進化史を再現することを目標とする。2022年11月にUNESCO、持続可能な発展のための国際基礎科学年(IYBSSD2022)、IUGS、DDE共済によるオープンフォーラムが開催された。
https://www.iugs.org/dde
https://baike.baidu.com/item/%E6%B7%B1%E6%97%B6%E6%95%B0%E5%AD%97%E5%9C%B0%E7%90%83/24293397
2.2022年に持続可能な開発のための国連海洋科学の10年 (2021-2030年)も位置付けられた。
https://www.global-once.org
https://new.qq.com/rain/a/20220905A0010000
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