北京便り

【23-008】知網社への罰金と同社の改善策について

JST北京事務所　2023年01月30日

　5月13日に独占禁止法違反の疑いで調査が行われることが報じられた中国の文献情報データベース大手の知網（CNKI）社について、12月26日に市場監督局が独占禁止法57条及び59条に基づき、2021年の売上高（17.52億元）の5％に相当する8760万元の罰金が科され、他者に求めている独占的な協力契約の解除、ユーザーの負担軽減、内部コンプライアンス管理の強化等の改善を命じた。（同法第57条と59条は、日本の法律における「罰則」の章に相当する「法的責任」の章の条文であり、第57条は、罰金の金額を前年売上高の1～10％として規定しており、同法第59条において、具体的には、違反行為の性質、程度、持続期間等を考慮して決めると規定している。）

　調査の結果、知網社は、2014年以来，業界における支配的な地位を利用し、独占禁止法に違反する行為を行ってきたとする。具体的には、次の2点である。①継続的な大幅な値上げ、データベースの分割による価格の引上げを行ってきたこと、②学術ジャーナル出版社や大学が第三者に対して学術文献データの使用を許可しないこと独占的な協力を確保する協定を締結し、そして協定中の多様なメリット・デメリットの措置によりこの独占的な協力を実施してきたこと

　これを受け、知網グループは、処罰を受け入れるとともに15の是正措置を実施することを表明した。

1.ジャーナルや大学との独占的な協力の仕組みの徹底的な改革（是正）

①プラットフォーム業界における非独占的な協力モデルの構築の推進
・他者に対する独占的権利を放棄し、対等な協力、ウィンウィン関係の確立のための非独占的な協力モデルを構築する。

②独占的な協力協定の解除
・他者に対する独占的な協力協定の新規更新を中止し、ジャーナル出版社や大学との協議を積極的に行い、既存の独占的な協力協定をできるだけ早く解除する。

2.データベース利用価格の大幅な引下げ

③価格の引下げ
・学術文献データベース利用価格について、サービス内容を低下させずに3年間で30%以上値下げする。

④価格設定の仕組みの改善
・公正、合理的、非差別を原則として、科学的、オープンで透明なサービス価格メカニズムを確立する。同時に利用できるユーザー数による価格設定を取りやめ、コストベースで合理的な設定とする。

⑤不合理な販売方法の廃止
・出版物やジャーナルの様々な分類によるデータベースを分割して販売することを取りやめる。

⑥価格についてのユーザーとのコミュニケーションの仕組みの確立
・ユーザー中心のユーザー委員会を設置し、価格調整のためのユーザーとのコミュニケーションの仕組みを確立する。

⑦無料サービスの拡張
・バックナンバーの無料範囲を拡大し、「大学のユーザーが学外からアクセスするシステム」を無料で開放する。

⑧プラットフォームの公共福祉的な性格の強化
・社会的利益を第一に考え、「科学技術イノベーションに奉仕し、学術情報の流通を促進させ、社会的責任を担う」という方針を確立し、プラットフォームの商業性と公共福祉のバランスをとる。

3.著作者の合法的な権益の保護

⑨法律に従った著作権者の許諾の取得
・知網と著作権者、ジャーナル出版社、大学、その他の機関間のライセンスに関する問題を解決し、法律に従って著作権者の許諾を取得するように努める。

⑩著作権者への支払い方法の改善
・ジャーナル出版社との著作権者への対価の支払方法を改善し、著作権者のため、オンラインとオフラインを組み合わせた、便利で迅速な対価の申請、決済、支払いのためのチャネルを提供する、業界団体や著作権団体と協議して、著作権保護の実施計画を策定し、厳格に実施する。

⑪著者サービスの改善
・著者の正当な権利と利益を効果的な保護のために、著者サービスセンターを設立し、サービスプラットフォームを開発する。

4.関連サービスの持続的な最適化

⑫個人のための論文の剽窃（重複度）チェックサービスの提供
・教師、学生、研究者のニーズに応答し、個人が利用できる論文剽窃（重複度）チェックサービスを提供する。価格は、市場の主流製品と比べ高くならないようにする。

⑬学術上の不正行為の検出技術の向上
・学術上の不正行為の検出システムの技術的手段、アルゴリズム、データソース、著作権保護などを改善する。

5.コンプライアンスの強化

⑭コンプライアンスマネジメントシステムの整備
・企業活動のすべての面でコンプライアンス管理システムを確立し、ビジネスの効果的な管理を強化する。

⑮コンプライアンスリスク管理の強化
・コンプライアンス管理部門を設置し、独占禁止および著作権に関するコンプライアンスリスクのスクリーニングを行うとともに、コンプライアンスに関するコンサルティング、レビュー、トレーニング、評価メカニズムを改善し、コンプライアンスを確実なものとする。