【25-03】中国科学技術部、2035年の科技強国目標達成に向けた体制改革推進策を打ち出す
JST北京事務所 2025年02月03日
中国科学技術部(MOST)理論学習中心グループ[注]は、「科学技術体制改革を深化させ、中国式現代化を力強く支える」と題した文章を、2024年第18期の中国共産党機関誌「求是」に寄稿した。12年11月に開かれた中国共産党第18回党大会(十八大)以降の科学技術イノベーション創出や科学技術体制改革などによる進展と、22年10月に開かれた中国共産党第20回党大会で定められた35年までの科技強国建設という戦略目標の達成に向けた科学技術体制改革の施策などについて論じている。以下にその概要をまとめる。
党の十八大以降の進展について
・ 世界における科学技術イノベーション指数をベースとしたランキングにおいて、中国は2012年の34位から2023年には12位に上がり、研究開発費や研究開発従事者数、ハイレベル論文投稿数、特許数などで、複数年連続で世界上位を維持し、有人宇宙飛行や月探査、北斗ナビゲーションシステム、深海・地球深部探索などで一連の重要な成果を得た。
・ 科学技術体制改革の推進において、①中央科学技術委員会の設立とMOSTの改組による科学技術指導・管理体制の強化、②重要科学技術プロジェクトの立案と組織・管理体制の改善、③国家実験室を牽引役とした中国の特色ある国家実験室体系の整備、④科学研究経費管理制度の最適化、科学技術に関する監督・評価システムの改善、⑤研究成果移転に関する法令・施策の整備、⑥研究者対象のインセンティブメカニズムの強化、若手人材育成・活用の重視、⑦地域的科学技術イノベーション創出システムの整備、⑧科学技術に関する国際交流・協力の拡大などの成果を得た 。
2035年の科技強国目標達成に向けた今度の取り組みについて
・ 新たな挙国体制を健全化させ、重要科学技術イノベーション創出体制を整備する。具体的には、戦略計画、政策措置、重要任務、研究人材、研究拠点、地域イノベーションなどの全面的配置を強化し、国家実験室システムの整備、国立研究機関やハイレベル研究型大学、科学技術リーダーシップ企業の位置づけ・配置の最適化、さらに協働的な国家戦略科学技術システムの構築を進める。
・ 企業の科学技術イノベーションにおける主体的地位を強化し、科学技術イノベーションと産業イノベーションを高度に融合させる。
・ 企業の主体的地位を制度面から徹底させ、科学技術リーダーシップ企業育成制度の確立、リード型・高速成長型リーダーシップ企業育成への注力、企業による国家重要科学技術難関攻略の支援、科学技術イノベーションに相応する科学技術金融体制の構築などを進める。
・ 教育・科学技術・人材体制の改革を一体的に推進し、科学技術、教育と人材の好循環を形成する。
・ 教育と科学技術の協働による人材育成制度の充実、科学技術の発展と国の戦略的需要をけん引とする学科設置や人材育成モデルの確立、若手人材の発見・選抜・育成制度の改善、イノベーション創出・実績・貢献度などを指標とする人材評価制度の導入、研究者が安心して研究に専念できる制度の整備を進める。
・ 科学技術プログラム管理を改善し、イノベーション創出に資する資源の配置を最適化する。
・ 組織的な基礎研究を強化し、科学技術支出における基礎研究への配分比率を高め、競争的支援と安定的支援を結び付けて基礎研究を支援する制度を充実化するとともに、財政資金で支援される研究プロジェクトにおける経費「包括的請負制度(包干制)」 の対象範囲拡大、研究者に対するより大きな技術ルート選択権の付与、そして、「課題に対するリーダーの公募(揭榜挂帅)」や「早い者勝ちの競争方式(赛马制)」、「ある分野で優れた研究者が陣頭指揮する(链主制)」など新たな手法の実行を徹底する。
・ 科学技術に関する国際開放・協力のレベルを高め、世界的競争力を持つ開放的なイノベーション創出環境づくりに努める。
・ 政府ベースによる科学技術協力の持続的深化、民間交流ルートの開拓、ハイテク人材移民制度導入の模索、中国国内での国際科学技術組織の設立奨励、国際的なビッグサイエンスプログラムやプロジェクトの設立主導などを進める。
[注1]理論学習中心グループは、中央や地方の各級政府および行政管理機関に設置される党委員会や党グループの幹部を対象に、理論的素養と政策決定能力の向上を目指して党の理論、路線、方針、政策および国の重要発展戦略などについて習得・議論させる学習活動を組織するグループ。
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