【25-16】成果の産業化を後押し 中国、科学技術サービス業の体制強化
JST北京事務所 2025年06月06日
中国では、科学技術成果の産業化を進めるために、科学技術関連サービス産業の整備・強化が図られており、金融面を含めて総合的に推進されている。5月19日、工業・情報化部(日本の経済産業省に相当)は、同部など中央政府の9部門が国務院の承認を得て「科学技術サービス業の高品質発展加速に関する実施意見」(以下「実施意見」)を発表したと明らかにした。「イノベーション主導、市場志向、融合的発展、系統的推進、質の優先」を原則とし、研究成果の技術移転と産業化を加速させ、科学技術イノベーションと産業イノベーションの融合発展を強力に支援するよう求めている。
以下に、工業・情報化部の公式サイトに掲載された関連内容をまとめる。
「実施意見」では、研究開発や技術移転、企業育成、技術普及、検査・認証、情報技術、エンジニアリング技術、科学技術金融、知的財産権、科学技術コンサルティングなど科学技術サービスの重点分野において全面的な推進を図り、科学技術サービス業の高付加価値化、スマート化、グリーン化、融合化を進めるよう求めている。また、科学技術サービス業の持続的なエコシステムを形成するために、①サービス主体の育成・強化、②一体化した技術市場の整備、③サービス品質の持続的な改善、④標準システムの整備強化、⑤専門的人材の育成・確保なども要求している。
このほか、科学技術サービスの発展において、統一的な計画の強化、中央部門間の連携や中央・地方間の提携、地域間協力メカニズムの充実、体制・制度の改革、政策支援の拡大、開放協力の深化などを推進する必要性も強調している。
「実施意見」の発表に合わせ、5月15日に行われた工業・情報化部の記者会見では、同部科技司(局)の魏巍司長が、これまでの科学技術サービス業の実績について、以下のように紹介した。
・ 政策体制がより充実した。中央レベルでの「実施意見」の発表のほか、北京や上海、重慶はじめとする地方でも、一連の関連施策が打ち出されている。
・ 科学技術サービス業の産業規模が拡大した。一定規模以上の科学技術サービス企業の売上高は2019年から23年の間に平均12.3%増え、全国技術取引契約の成約額は2024年に6.8兆元(前年比11.2%増、1元=約20円)に達し、「第14次五カ年計画」の「技術要素市場特別計画(2021~2025年)で定められた5兆元の目標を前倒しで達成した。
・ サービスシステムがさらに健全化した。現在、技術取引所3カ所、国家技術移転地域センター12カ所、重点技術移転機構420社からなる技術移転システムが構築されており、各種の科学技術型企業インキュベーターは1.6万社に達し、全国95%の県レベル以上の地域をカバーするインキュベーションシステムを形成している。そして、国家産業・金融共同プラットフォームによる企業支援融資は1.1兆元を超え、2023年時点で登録されている科学技術サービス法人機関は全国で211.8社に上った。
・ サポート体制がより強化された。中国各地に設立された製造業イノベーションセンターは国家レベルが33カ所、省レベルが316カ所となっている。うち、国家レベルのイノベーションセンターでは、2024年末現在、コア技術を672件開発し、発明特許を7077件出願、690件の技術成果の移転を実現した。さらに、各種インキュベーターから生まれた科学技術型企業は、2024年末時点で30万社を超えた。
・ 開放・協力がより拡大している。2024年、技術輸出額は前年比8.8%増加。重点技術移転機関が推進した国際技術移転案件は968件で、成約額は181.6億元に達した。中国国内の科学技術型企業インキュベーターは50を超える国・地域に進出し、世界的に有名な海外のインキュベーターも中国国内に支店を開設し、世界とつながるインキュベーションネットワークが築かれている。
また、同記者会見では、今後の科学技術サービス業全体の質の高い発展に向け、技術移転の推進やインキュベーターの整備、技術市場の改革など、工業・情報化部が進めている施策についても説明があった。例えば、優良企業38.1万社、3090の金融機関、800件を超える金融商品を集約したプラットフォームを通じて、科学技術の成果、産業、金融の三者間情報共有メカニズムを確立し、150を超える主要金融機関が、初期段階にあるプロジェクトや先進製造業のクラスター企業などに5400億元の融資を行ったことなどが紹介された。
参考リンク
- 1.中華人民共和国工業・情報化部「工业和信息化部举行“推进科技服务业高质量发展”新闻发布会」
- 2.中華人民共和国中央人民政府「工业和信息化部等九部门印发《关于加快推进科技服务业高质量发展的实施意见》」