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【25-19】《人工知能》米中のAI人材、世界の57%を占める

JST北京事務所 2025年07月15日

 北京で開かれた「2025世界デジタル経済大会」(7月2~5日)で、東壁科技データ有限公司(2024年1月に深圳市で設立。以下「東壁」)は、国連工業開発機関投資・技術移転促進事務所(UNIDO ITPO Beijing)と共同で「グローバル人工知能(AI)研究実態レポート」を発表した。レポートでは、人材と論文を中心に米中両国のAI研究における実態を分析している。以下に北京日報が伝えた概要をまとめる。

 レポートは、約20万人の世界各国の研究者および9.7万件のハイレベルなAIに関する論文について分析してまとめたもの。AI研究人材の分布が世界的に見れば不均衡で、一部の地域に集中していると指摘し、米国と中国のAI人材が世界の57.7%を占めていると紹介している。具体的な内容は以下のとおり。

1) AI人材について

・ 米国のAI人材は約6.3万人で世界最多。中国はそれに次ぐ5.3万人で、2015年の1万人未満から年平均28.7%という急成長を遂げた。

・ 所属機関の内訳は、米国ではスタンフォード大学が2385人、MITが2191人、グーグルが2569人、マイクロソフトが2461人などとなっており、学術界と産業界がバランスよく分布している。これに対し中国では、中国科学院が3453人、清華大学が2667人、北京大学が2123人、テンセントが992人、アリババが633人となっており、学術界が主導している状況が見て取れる。

・ 学術界と産業界におけるAI人材の流動性について、米国ではカーネギーメロン大学と現地企業の流動率が37%に達しているのに対し、中国では、大学と企業間の人材流動率は15%未満にとどまっている。

・ 2025世界デジタル経済大会で同時に発表された、レポートのコアデータに基づく「グローバルAI人材トップ100」に選ばれた100人のうち、米国の機関に所属する研究者は20人、中国の機関に所属する研究者は55人だった。

2) AI論文について

・ 学術界では中国の機関が競争力を示し、中国科学院が高インパクト論文数で世界1位(585本)となった。さらに、清華大学や北京大学もトップ10に入った。

・ 産業界では米国がリードし、グーグル、マイクロソフト、Metaの3社が発表した論文数は5896本で、中国AI企業上位3社(テンセント、アリババ、ファーウェイ)の総数の1.8倍に達した。

3) 米中それぞれの優位性について

・ 米国のAI研究は、基礎理論、技術イノベーション駆動・バランス型発展の面で優れており、特に機械学習、インテリジェントロボット、エキスパートシステムなどの分野で大きな優位性がある。

・ 中国のAI研究は、応用志向、産業連携という特徴があり、コンピュータービジョン(論文数が米国を40.8%上回る)、ナレッジグラフ(同50.1%上回る)、自然言語処理(中国がやや上回る)などで優位性を示している。これらは、中国が自動運転、インターネット応用、知識管理の分野で巨大な市場需要や豊富な応用シーンを有していることと関連しているとの分析もある。

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