【25-20】アジア初の第4世代高エネルギーシンクロトロン放射光装置（HEPS）、来年世界に公開
JST北京事務所 2025年07月18日
北京市郊外の懐柔区で整備が進められている懐柔科学城（サイエンスパーク）は、中国の総合的国家科学センターの一つで、北京市の三城一区（3つのサイエンスパークと北京経済技術開発区を含むイノベーション型産業集積モデル区）の一角を占めており、多くの研究施設が整備されている。
今回、その一つである、高エネルギーシンクロトロン放射光源（High Energy Photon Source, HEPS）について、同施設ビームライン副主任の陶冶氏から紹介文と写真を提供していただいたので、以下に掲載する。
【陶冶氏からの紹介文】
高エネルギーシンクロトロン放射光源（HEPS）は、アジア初の第4世代高エネルギーシンクロトロン放射光装置であり、2026年に世界中のユーザーに向けて公開される予定です。
HEPSのエネルギーは6GeV（ギガ電子ボルト）、エミッタンスは35pm.rad、貯蔵環の周長は1.36キロメートル、ビーム強度は200mA（ミリアンペア）で、世界で最も明るいシンクロトロン放射光源となり、ユーザーに高エネルギー・高輝度・高コヒーレンスのX線を提供すべく、現在建設が進められています。HEPSは80以上のビームラインステーションを設置することができます。
HEPSは北京市懐柔区に位置し、施設全体のレイアウトは巨大な拡大鏡のような形をしており、X線を用いて物質の微視的な構造や機能を解明するという意味が込められています。
HEPSの俯瞰図。（2025年6月撮影）
第1期工事では15本のビームラインステーションを建設します。うち14本はユーザー用ビームライン、1本はテスト用ビームラインです。これらは2つのグループに分けて工事が進められ、ロングビームラインは3本建設する予定です。詳細は下記の表をご参照ください。
| Group1 | Beamlines | Features |
| Tender spectroscopy | Bending magnet，2-10keV spectroscopy | |
| XAFS | routine and quick XAFS，4.5-45keV，plus 350nm microprobe | |
| Hard X-Ray Imaging （350m long） | 1 undulator/2wigglers，10-300keV, Phase/Diffraction contrast imaging | |
| Transmission X-ray Microscope | full field 20nm resolution imaging and spectro-imaging | |
| Macromolecular Crystallography | 1mm spot, standard and serial protein crystallography | |
| SAXS | pink beam, lest optics | |
| Optics Test | 1 undulator and 1wiggler, Optics online metrology and R&D | |
| Group 2 | NanoProbe （180m long） | Nano mode, <10nm; InSitu mode, <50nm; ptycho, BCDI; SEM |
| Coherent Scattering | 8-25keV, CDI and XPCS; Rigaku XPSA 4M detector | |
| Engineering Materials | 50-170keV， XRD, SAXS, PDF; Eiger16M CdTe detector; | |
| Structural Dynamics （200m long） | 15-70keV, ultrafast diffraction and imaging; nanoholography; | |
| High Pressure | 150nm focusing, diffraction and imaging, Eiger16M CdTe detector | |
| Low-Dimension Probe | surface and interface scattering, surface XPCS | |
| High Energy resolution spectroscopy | Nuclear Resonant Scattering and X-ray Raman spectroscopy | |
| Nano ARPES | 100-2000eV，100nm, 5meV@200eV, APPLE-KNOT undulator |
2025年は加速器とビームラインのテスト運営期間です。現在、HEPSのエミッタンスは93pm.radに達しており、15本のビームラインはすべて、今年5月にビームを出力しました。現在、さらなる調整と最適化を図っています。
HEPSは2026年に世界中のユーザーに向けて公開する予定です。日本の研究機関や産業界のユーザーの皆様にHEPSを利用していただき、HEPSでの実験を通じて基礎研究や産業応用の分野で画期的な成果を上げていただけることを期待しています。また、世界中の優秀な人材の皆様にHEPSにお越しいただき、ともにシンクロトロン放射光技術の発展を推し進めていくことを願っています。
実験ホール内の光ビームライン。
3本のロングビームライン施設。手前から順に、ナノプローブ線ステーション（180m）、硬X線イメージング線ステーション（350m）、構造動力学線ステーション（200m）。
硬X線イメージング長光ビームライン実験施設。2024年10月12日、HEPSの第1号挿入装置から発射された高エネルギーX線が、350メートル離れた実験施設に到達しました。
高分解能分光測定装置のビームラインで進められている「乾坤」X線ラマン分光計の調整作業。
HEPSの最新情報については、ウェブサイト（https://heps.ihep.ac.cn）をご覧ください。