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【25-23】世界人型ロボット運動会の日程発表 14日に開幕

JST北京事務所 2025年08月14日

 8月14日に開会式を迎える世界人型ロボット運動会の競技日程が8日に発表された。26の競技種目に5大陸16カ国の280チームが参加する。

 26種目には、陸上競技、サッカーなどのスポーツ種目のほか、ダンスや武術(演武)などのパフォーマンス競技、ホテルや医療機関、工場、倉庫を想定した一定の条件下で競う応用シーン種目が含まれる。応用シーン種目については、足ではなく車輪で移動するロボットの参加も認められている。

 会場は、2022年冬季五輪会場の一つであった国家スピードスケート館「アイスリボン」で、14日夜に開会式が開かれる。

 競技日程は以下のとおり。大会主催者の一つには中央ラジオテレビ総局が、実施機関には中央ラジオテレビ総局北京総局、北京ラジオテレビ局が名を連ねており、これらのサイトや関連メディアで日本からも視聴できる可能性がある。

1.  15日午前:16種目。陸上1500メートル、サッカー、魂ロボット一つの動き[1]、フリーボクシングなど。決勝は4種目[陸上1500メートル、グループダンス、バスケットボール、集団ダンス]。

2.  15日午後:16種目。陸上競技400メートル、サッカー、武術(演武)、工場での資材搬送など。決勝は5種目[陸上競技400メートル、武術(演武)、卓球、工場での資材整理、功夫格闘技]。

3.  16日午前:13種目。陸上競技100メートル、サッカー、自由体操、工場での資材搬送決勝など。決勝は5種目[跳躍(その場高跳び)、自由体操(9つの規定動作と最大3つの自由動作)、工場での資材搬送、医療現場での薬品包装、倉庫での混合物の選別]。

4.  16日午後:10種目。シングルダンス決勝、フリーボクシング準決勝、ホテルでの受付サービスなど。決勝は3種目[立ち幅跳び、シングルダンス、ホテルでの清掃サービス]。

5.  17日午前:7種目。陸上競技4×100メートルリレー、100メートル障害走、サッカー3対3、自由格闘技、ホテルシーンでの接客サービスなど。決勝は5種目[100メートル障害走、サッカー3対3、自由格闘技、ホテルシーンでの接客サービス、医療現場での医薬品の仕分け]

6.  17日午後:競技種目5種目。陸上100メートル、4×100メートルリレー、サッカー5対5など。決勝は4種目[陸上100メートル、4×100メートルリレー、サッカー5対5、魂ロボット一つの動き]。

 17日午後の競技終了後、閉会式が開かれる。一部競技(バスケットボール、卓球、グループダンス、格闘技)では、観客がロボット選手とのインタラクションを体験できるものもあるという。

 審査を経て、参加が確定したのは280チーム。大学などの教育機関から192チーム、企業が88チームとなっている。大学チームは清華大学、北京大学、上海交通大学、武漢大学、華中科技大学、山東大学、湖南大学、北京科技大学、北京情報科学技術大学などで、さらに北京人民大学付属中学校、北京第十一学校、中央民族大学付属中学校の3つの中学校[2]チームも参加する。企業チームには天工、宇樹科技(ユニツリー)、加速進化(ブースター)、松延動力、傅利葉、星海図など、中国のヒューマノイドロボット製造企業が多数参加する。また、自由格闘技に、柔道やテコンドーのメダリストを含む6人の五輪選手で構成されるクラブチームが参加することも注目されている。

 国外からの参加は、米国、ドイツ、オーストラリア、ブラジルなど15カ国。サッカーに集中しており、日本からも大学院生・学部生有志のチームが参加する予定だ。サッカーは、「2050年に人間のワールドカップ優勝チームにロボットのチームが勝つ」という目標を掲げてスイスに設立された国際NPOの下で開催されているロボカップの蓄積が大きいようで、アジア太平洋ロボカップ国際理事会も大会主催者に名を連ねている。このロボカップの目標は、日本の研究者が提唱して始まったものだ。

 サッカーには、中国国内26チーム、国外18チームが参加。ロボカップで優秀な成績を収めたチームも複数含まれている。今回は準備期間が短かったこともあってか、全チームが中国のBooster T1を用いて、それぞれのチームが作ったプログラムで競うことになる。ロボカップは、前述の大きな共通目標のため、参加者がプログラムをオープンにすることが提唱され、開催されてきた。オープンにされたプログラムをもとに世界の参加者が新たに積み上げていくことで、共通目標へ向けた発展が図られている。5対5と3対3の試合では、試合開始時に人間が起動してからは、ロボットが自律的に動いて得点を競い合う。

 今大会の運営に当たるロボカップ関係者は、有志による参加を評価 しており、日本をはじめ、若い世代の活躍に大きく期待していた。

 大会のために整備されたパンダアイなどの施設は、大会後もデータ取得など来年以降の大会やロボット産業、科学技術の普及のために残される。また、中国国内を対象にロボットのレンタルを進め、人材の育成、技術の発展を促していくという。大きな注目を集めたこの大会は、来年以降も開催される見込みで、施設の整備や外国チームの招へいを含め、多額の投資がされており、力の入れ方がうかがえる。中国内外で大きな関心を集めており、各種リソースに対する吸引力を持つ「磁石効果」が働くことが期待されている。電気自動車で、一部地域でバスやタクシーでの導入を義務付け、関連産業の育成・発展を図ったように、政府のイニシアティブがマーケットづくりや各種リソースの「磁石」となり、人材やモデルチェンジ、イノベーションのエコシステムにつながる可能性がある。

 来年はぜひ、日本からの参加者や日本開発のロボットがより多くの種目にエントリーし、中国や世界の参加者と競い合ってほしい。中国においてはロボットの発展が急速に進んでいるが、日本でもロボット関連の取り組みがさらに活発化することを願っている。


1. 7月31日付ルール(第2次発表種目V5.1)では、出場者が自由に内容をデザインできるとして、以下の内容が例示されている。才能披露パフォーマンス部門(例:絵画、書道、音楽作曲/演奏、マジック、平均台歩行、片手支えなど)、シーン作業部門(例:搬送、組み立てなど)、人間とロボットのインタラクション部門(例:将棋対局、インタラクティブな演劇パフォーマンスなど)、教育科学普及部門(例:切り紙、陶芸など)など

2. 中国の中学校には、初級中学と高級中学があり、それぞれ日本の中学校、高校に該当する。

 

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