【25-29】北京でロボット弁論大会開催 人間とチームを組み、人間との間でも舌戦
JST北京事務所 2025年11月13日
今年4月に、世界初のロボットによるハーフマラソン大会を人間のハーフマラソン大会と同時に開催した北京経済技術開発区(北京亦庄)で11月9日、第1回中国(国際)ロボット討論大会が開かれた。
北京、上海、広州、天津など中国各地の企業や大学から14チームが参加し、松延動力という企業の「小諾」チームが優勝した。
予選は人間とロボットがチームを組んでディベートを行い、準決勝ではロボットが他チームの人間とディベートした。決勝戦ではロボット同士のディベートが行われた。
審査は、ディベートの勝敗を評価基準とせず、ロボットの論理性、言語表現力、マルチモーダル対話、スキル展示、臨機応変の5つの観点で採点。ロボットの大規模モデル訓練とハードウェアとの調整を総合的に試すものとなった。
ロボット同士の対戦となった決勝戦では、「ロボットは人類を支配するか?」をテーマに湖北大学チームのヒューマノイドロボットと、松延動力「小諾」チームの半身バイオニックロボットが議論した。賛成側の豊富な引用に対し、反対側は論理的欠陥を突いた。比喩で共感を生む一方、反対側は「鍵を発明する者がいれば、その鍵を開ける鍵を発明する者もいる」と応酬した。
河北大学「小禾」チームと松延動力「松美美」チームは「人類の戦争消滅の是非」をテーマに議論した。ここでは論理の競い合い、異なる見解の議論、言語表現での面で論争が繰り広げられ、マルチモーダル対話能力だけでなく、大規模モデルや演算能力、推論能力といった知能の進化が試されるものとなった。
結果は松延動力「小諾」チームが優勝、湖北大学チームが準優勝、松延動力「松美美」チームが3位となった。河北大学「小禾」チーム、思曦ディベートチーム、人開金鵬団、一起加速進化チーム、超美ディベートチームが優秀賞を受賞した。
優勝チームのプロジェクトマネージャーは、「優勝は感動的だった」とし、「ロボットの言語論理表現が予想を上回った」と述べた。自社開発のバイオニックロボットにディベート用データや対話管理などの特別訓練を実施したようで、本番では大規模モデルの推論能力も十分に検証できたという。
松延動力は、清華大学や浙江大学等の出身メンバーが設立した企業だ。今回、同社から弁論大会に参加したロボットは、上半身のみのロボットだが、同社は、1万元(1元=約22円)を切る価格の人型ロボットを、11月から12月のオンラインショッピングセールスシーズンに投入している。身長94センチ、重さ12キロだという。
同社のロボットはこれまで、ハーフマラソン大会で2位と4位となり、8月に開かれた世界人型ロボット運動会ではその場幅跳び、体操で1位、シングルダンスで2位だったことが、発売を発表したSNSに記載されている。このように、中国で開催される多くのロボット競技会は、わかりやすい性能の証明の場になっている。
ロボット・エンボディドAIの「大脳」(知覚・認知・意思決定)、「小脳」(運動制御)、「肢体」(本体ハードウェア)という3つの側面のうち、ハーフマラソンでは、小脳と肢体が、今回は大脳が重点的に試された。
今大会の意義について、中国技術市場協会人工知能・伝播専門委員会執行理事長で河北大学新聞伝播学院院長の彭焕萍教授は、「ロボット討論は複雑な意味環境において情報の差異を正確に捕捉し、論理的な論点を生成する必要があり、ロボットが複数回の推論、事実検索、意味誤り訂正を通じて、従来の大規模モデルにありがちな『ハルシネーション』『論理飛躍』などの問題を克服することを要求する。これはエンボディド知能の『頭脳』に対する極限テストである」と述べた。中国技術市場協会人工知能・伝播専門委員会理事長の趙雲沢教授は、ロボットディベート大会の開催自体が科学実験であると指摘。「これはAI技術の発展や大規模モデルアルゴリズムの最適化を大きく促進すると同時に、AIと人文・社会科学の深い融合、そして実践シーンにおけるヒューマンマシンインタラクション技術のさらなる発展を促す」と述べた。さらに、「人間(炭素ベース)の思考様式とシリコンベースの思考様式の対抗演習は長期的な研究テーマとなり、この大会は人類の思考の限界を探求することになる」との見解を示した。
北京の亦庄地区では、日系大手を含む多数のロボット関連企業が立地する「産業基盤」と、競技会で明確に示される命題としての「実践シナリオ」が推進力となり、多くの競技会が開催され、ロボット産業の振興を図っている。
今回の大会は、中国技術市場協会人工知能・伝播専門委員会、北京経済技術開発区ロボット・スマート製造産業局が主催し、中国人民大学新聞学院、北京大学新聞・伝播学院、河北大学新聞伝播学院、湖北大学新聞伝播学院、科大訊飛株式会社、北京亦庄ロボット科技産業発展有限公司が共催した。
参考リンク
- 北京市科学技術委員会「首届中国(国际)机器人辩论大赛决赛在北京经开区举办」