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【19-013】「中国版エンティティー・リスト」制度の導入と方針

2019年6月11日 中倫律師事務所東京オフィス

 2019年5月31日、中国商務部は、「中国版エンティティー・リスト」制度の導入を予定していると発表した。

「中国版エンティティー・リスト」[1]にリストアップされる可能性が示唆されているのは、市場のルールに従わず、契約の精神に反し、非商業目的で、中国企業に対する経済的封鎖や供給中止を行い、中国企業の正当な権利及び利益を著しく害した外国企業、組織又は個人である。

 中国商務部の報道官・高峰氏は、中国政府が「中国版エンティティー・リスト」制度の導入に至った理由について、次のように述べた。

 世界経済の先行きが不透明で、不安定要因が多い中、単独行動主義、保護貿易主義が台頭し、多国間貿易体制は厳しい局面を迎えており、正常な国際経済と貿易活動にマイナス影響を与えている。外国の一部エンティティーは、非商業目的で、正常な市場ルールと契約の精神に反しており、中国企業に対する市場からの締出しや供給中止等の差別的措置をし、中国企業の正当な権利及び利益を害し、中国の国家安全及び利益に危害を与えている。さらには、世界的なサプライチェーンの安全を脅かし、グローバル経済に衝撃をもたらし、関連企業や消費者の利益を損う事態が発生している。国際経済及び貿易ルール並びに多国間貿易体制を維持し、単独行動主義、保護貿易主義に反対し、中国の国家安全、公共利益及び企業の法的権利や利益を保護するため、中国政府は、「中国版エンティティー・リスト」制度の導入を決定した。

 中国政府が当該制度を導入するにあたっての法的 根拠に関し、同氏は、中国の「対外貿易法」、「独占禁止法」、「国家安全法」等の法律法規を挙げ、中国政府は、これら法律法規に基づき、「中国版エンティティー・リスト」制度の導入を決定したものであり、非商業目的で、中国企業に対して市場からの締出しや供給中止又はその他差別的措置をし、中国企業又はかかる産業に実質的損害をもたらし、中国の国家安全に脅威又は潜在的脅威を及ぼす懸念がある外国法人を含む組織又は個人を同リストに列挙する予定である、と述べた。

 同リストに載せられた組織又は個人に対し、今後どのような措置を予定しているかの問題に関して、同氏は、具体的な措置については近日中に公表する予定であると述べた。


[1] 中国語は「不可靠实体清单」、英語は「Unreliable Entity List」と訳されている。日本語に直訳すると、「信頼性のない実体のリスト」となるが、ここでは、「中国版エンティティー・リスト」と称する。

中倫律師事務所 東京オフィス

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※本稿は、中倫律師事務所発行の「中国法律ニュース ~速報~『中国版エンティティー・リスト』制度の導入と方針」を中倫律師事務所東京オフィスの許諾を得て転載したものである。