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【20-002】中国の新・外商投資管理制度について

2020年1月20日 中倫律師事務所東京オフィス

 中国では、2020年1月1日の「外商投資法」施行に先立ち、「外商投資法実施条例」を始め、多くの行政法規や部門通達等(下表を参照)が公布されました。

 これらの新たな法律規定は、「外商投資法」の内容が抽象的であり、実行性に欠けるという外国投資家の指摘を受けて作成されたもので、「外商投資法」をより具体的かつ明確に実施することを目的としており、対中投資に大きく影響するものです。

新・外商投資管理制度の法律根拠:

①外商投資法(2019年3月15日公布)

②年度報告の「多報合一」の改革の関連作業に関する通知(2019年12月16日公布、国市監信【2019】238号)

③一部の規範性文書の廃止に関する公告(2019年12月25日、商務部公告2019年第59号)

④外商投資法実施条例(2019年12月26日公布、国務院令第723号)

⑤「外商投資法」適用の若干問題に関する解釈(2019年12月26日公布、法釈【2019】20号)

⑥「外商投資法」の実施を徹底し、外商投資企業の登記・登録作業を適切に行うに関する通知(2019年12月28日公布、国市監注【2019】247号)

⑦一部規則制度の廃止に関する決定(2019年12月28日公布、商務部令2019年第3号)

⑧外商投資情報報告規則(2019年12月30日公布、商務部、市場監督管理総局令第2019年第2号)

⑨外商投資情報報告の関連事項に関する公告(2019年12月31日公布、商務部公告2019第62号)

 当事務所は、昨年の「外商投資法」に関する紹介に続き、上記の新たな法律規定に基づく、中国の新・外商投資管理制度を順次ご紹介して行く予定です。

 まず今回は、外商投資に関する新たな行政手続きの枠組をご紹介致します。

1.従来の許認可手続き

 中国の外商投資に関する行政手続きは、大きく分けて次の4項目です。

①商務部門による、外資利用(合弁契約や定款等)に対する許認可。

②発展改革部門による、プロジェクト(固定資産投資)に対する確認審査。

③市場監督管理部門(旧工商行政管理部門)による、外商投資企業の登記又は届出。

④各業界の主管行政部門(例:医薬品の場合は薬品監督管理部門)による参入条件に対する許認可

 このうち①については、試験的に2013年から上海自由貿易試験区で、2015年から全国自由貿易試験区で施行が開始され、2016年からは全国範囲で、事前の許認可から事後の届出(ネガティブリスト非該当分野への投資)へと変更されました。

項目 主管当局 審査内容
外資参入 商務部門 外資利用(合弁契約や定款等)に対する許認可
プロジェクト 発展改革部門 プロジェクト(固定資産投資)に対する確認審査
会社登記 市場監督管理部門 外商投資企業の設立、変更及び抹消等の登記又は届出
業界参入 業界主管行政部門 参入条件の具備に対する審査認可

2.新たな行政手続き

「外商投資法実施条例」に基づき、上記1.①の商務部門による外資利用に対する許認可(ネガティブリスト該当分野への投資)又は届出(ネガティブリスト非該当分野への投資)が廃止されました。これにより、1979年の「合弁企業法」施行以後長く行われてきた商務部門の許認可制度は、完全に終了することとなりました。

 代わりに、2020年1月1日から「外商投資報告制度」が実施され、外国投資家又は外商投資企業は、「外商投資情報報告弁法」に基づき、企業登記システム及び国家企業信用情報公司システムを通じ、主管商務部門へ情報報告を行うこととなりました。

 情報報告の方法及び内容等は下表のとおり。

方法 内容
初期報告 企業登記システム 企業の基本情報、投資家及びその実質的支配者の情報、投資取引情報等の情報又はその変更状況を報告する
変更報告
抹消報告 市場監督管理部門より商務部門へ情報共有される 抹消手続き(解散・清算する場合)又は変更登記手続き(外資から内資へ変更する場合)をもって抹消報告とみなされる
年度報告 国家企業信用情報公示システム 企業の基本情報、投資家及びその実質的支配者の情報、企業経営並びに資産及び負債等の情報、ネガティブリストに係る場合は関連業界参入許可情報を提出する

 具体的な投資活動において、対象業種がネガティブリストに該当するか否かや該当する場合の出資比率の条件等が満たされているか否かの審査は、原則として市場監督管理部門が登記手続きを行う際に審査することになりますが、「『外商投資法』の実施を徹底し、外商投資企業の登記・登録作業を適切に行うに関する通知」に基づくと、業界の主管行政部門が業界参入許可情報を審査済の場合、市場監督管理部門は重複審査しないとされています。但し、この点については、実務上、どのように運用されるのか(当局間の情報共有及び判断基準等)注目する必要があります。

 なお、上記1.の②~④は、下級行政機関への権限移譲や手続きの簡略化等の規制緩和がされていますが、制度自体に大きな変更はありません。

中倫律師事務所 東京オフィス

代 表・パートナー弁護士:李美善  E-mail:mslee
パートナー弁護士:孫彦  E-mail:mslee

■掲載の内容は広く一般から収集した情報を独自にまとめたものであり、当所及び当所弁護士の法的意見を述べたものではありません。
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※本稿は、中倫律師事務所東京オフィス発行の「中倫東京事務所ニュースレター『中国の新・外商投資管理制度について』」を中倫律師事務所東京オフィスの許諾を得て転載したものである。