【13-30】上海連続1位 OECD学習到達度(PISA)調査
2013年12月 4日
経済協力開発機構(OECD)は12月3日、3年ごとに実施している学習到達度調査(PISA)結果を公表した。前回、2009年調査で初参加し、調査分野である「数学」「読解力」「科学」全てで1位の成績を収めた上海は、今回も引き続き3分野で1位の座を占めている。
今回の調査は、OECD加盟国34とパートナー国・地域31の生徒(年齢15歳3カ月~16歳2カ月)51万人を対象に2012年に実施された。
日本は、OECD加盟国の中では「読解力」と「科学リテラシー」でそれぞれ1位、「数学リテラシー」で2位(1位は韓国)。前回の2009年調査より「統計的に有意なレベルで向上している」と評価された。ただし、OECD加盟国以外の参加国・地域を含めた順位では、上海だけでなく、「数学リテラシー」でシンガポール、香港、台湾、マカオ、「読解力」と「科学リテラシー」で香港、シンガポールが、それぞれ日本より高得点を取っている。
「数学リテラシー」で日本より好成績を挙げたこれらアジア各国・地域に見られる特徴として、成績最上位者の割合もまた日本をしのぐ、という結果も明らかになった。日本は、レベル5、6という最も高い習熟度の生徒が約24%おり、OECD平均の13%をはるかに上回る。しかし、上海は、55%以上の生徒がこのレベルにあり、台湾、香港、韓国、シンガポールも同じレベル5、6の習熟度に達していた生徒の割合が、30~40%に上っていた。
上海は、「読解力」と「科学リテラシー」でも、成績最上位者の割合が最も多い。「読解力」「科学リテラシー」とも、日本が約18%だったのに対し、それぞれ25.1%、27.2%と大幅に上回っていた(OECD平均は、「読解力」約9%、「科学リテラシー」約8%)。
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テレビ回線を通じ、日本の記者向けに会見したシュライヒャーOECD教育局次長は、上海の生徒が最高の成績を挙げている理由について「教員が時間をかけて深く能動的に生徒に関わっている。さらに教員の自己学習、教員同士の連携、よりよい先生を必要としている学校に適切に配置していることなどが効果を上げている」と語った。さらに「他の国、地域同様、生徒集団を代表するようなサンプリングをしている」と、上海の調査対象生徒の抽出に偏りがないことを強調している。また、中国の調査範囲を2015年に北京を含む6市省に拡大する計画も明らかにした。
上海の基礎教育は、公平性も保たれており、2006年以降、幼稚園の入園率95%以上を維持しているなど高い水準にあることが伝えられている(2011年 5月23日張珏・上海市教育科学研究院副院長「先駆けて、バランス良く、科学的に発展--上海のPISA2009調査での結果を見て」参照)。
OECDプレスリリース「OECDのPISA2012調査で、アジア諸国が上位を占める」
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