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【15-14】国際シンポジウム「上海自由貿易試験区とアジア」を開催

2015年 6月 8日 中国総合研究交流センター編集部

 5月26日、政策研究大学院大学(GRIPS)想海樓ホールにて、国際シンポジウム「上海自由貿易試験区とアジア」(ジェトロ・アジア経済研究所、上海社会科学院、政策研究大学院大学、朝日新聞社主催、一般社団法人世界貿易センター東京、国立研究開発法人科学技術振興機構中国総合研究交流センター共催)が開催された。

 上海自由貿易区は2013年9月29日、正式に開設されて以来、その動向が注視されている。本シンポジウムでは上海自由貿易区の現状や課題に対する取り組みや将来的なビジョンについて活発な議論が展開された。

 開会挨拶では白石隆政策研究大学院大学学長・ジェトロ・アジア経済研究所所長、王振上海社会科学院副院長、小島明世界貿易センター東京会長がそれぞれ上海自由貿易試験区、そしてアジアのこれからの成長などについて期待を寄せるスピーチを行った。

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写真1 白石隆 政策研究大学院大学学長

 基調講演は上海社会科学院世界経済研究所研究員の張幼文氏が登壇し、「中国の自由貿易試験区と対外経済関係のニューノーマル」というテーマの報告を行った。1周年を迎えた上海自由貿易区の3つの特徴(ネガティブリストによる管理、政府による途中・事後の監督管理、金融改革)を説明した上でサービス業の解放拡大、「中国製造2025」国家戦略の拠点としての機能、金融の開放、外資法改正などについて言及した。そして、さまざまな分野での開放の途上で問題点も少なからず孕んでいるものの、将来的に多くの可能性を秘めている点を強調した。

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写真2 張幼文 上海社会科学院世界経済研究所研究員

 またジェトロ・アジア経済研究所新領域研究センター 経済地理研究グループ研究員の磯野生茂氏も基調講演に登壇し、GSMシミュレーションモデルによる上海自由貿易区の将来を予測し、世界そして日本への影響などについても論じ、最も望まれるパターンと最も現実的なパターンを提示した。

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写真3 磯野生茂 ジェトロ・アジア経済研究所 新領域研究センター 経済地理研究グループ研究員

 パネルディスカッションではジェトロ理事の平塚大祐氏がモデレーターを務め、パネリストには基調講演の張氏、磯野氏に加え上海浦東改革・発展研究院院長の朱金海氏、政策研究大学院大学客員教授の大辻義弘氏、ジェトロ・アジア経済研究所 新領域研究センター 上席主任調査研究員の大西康雄氏により活発な議論が行われた。

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写真4 パネルディスカッションの様子

 張氏はこの1年間でネガティブリストが190項目から139項目まで絞られ、行政手続の簡素化や透明性の向上が図られ、また大胆な規制緩和が行われたことによって、金融、教育など、いままで主に国営企業だけに許されていた業種への一般資本の参入が可能となり、今後、外資企業からのさらなる投資が見込まれると主張した。これに対し大西氏は、外資から見るとそれでも開放の程度が十分ではないと応じた。

 一方、朱氏は上海自由貿易区の今後の課題として、商業と資本の連動性を更に向上させる必要があると説いた。また、中国全体において、自由貿易区に関する取り組みの経験がほとんどなかったため、これからは、どのようなものでも果敢にチャレンジし、その経験値を積み上げる必要があり、また、その経験を同じ取り組みを行っている天津、福建、広東の自由貿易区に積極的に還元すべきだと述べた。

 閉会挨拶では沖村憲樹科学技術振興機構特別顧問が今後の中国そしてアジアに対する可能性に期待し、アジア青少年サイエンス交流事業「さくらサイエンスプラン」との連動もひとつの有効な手段であることを訴えた。