【15-19】王勇氏が国際交流基金賞受賞
2015年10月26日 小岩井忠道(サイエンスポータル編集長)
国際交流基金は19日、今年の国際交流基金賞を王勇・中国浙江工商大学東亜研究院院長ら2人と1団体に贈ると発表、同日都内のホテルで授賞式が行われた。
写真1 賞状を手にする王勇氏(左は安藤裕康国際交流基金理事長)(国際交流基金提供)
同賞は、学術、芸術その他の文化活動を通じて国際相互理解や国際友好親善に大きな貢献をした人たちに贈られる。王氏は浙江省平湖県生まれ。1982年杭州大学外国語学部日本語科を卒業した翌年、北 京日本学研究センターの前身である大平学校で学んだ。大平学校の正式な名称は在中華人民共和国日本語研修センターだが、日 中国交正常化に大きな役割を果たした大平正芳首相(当時)の訪中をきっかけとして1980年に設立された。日本人教師が、中国人教師教育を担ったのが特徴だ。
王氏は、そこで日本と日本語に出会い、以来、中国の日本語研究と日中文化交流に大きな役割を果たしてきた。これまで44冊に上る著書・編著書があり、代表的な著作は日本語でも出版されている。聖 徳太子が当時の東アジア世界の中で果たした役割を虚像と実像をまじえ大きなスケールで描き出した研究も有名。日中間の文化交流は書物を通じた知的交流が特徴だとして、シルクロードになぞらえて「ブックロード」と 名付けたことでも知られる。現在、復旦大学日本研究中心特別招聘(しょうへい)教授、浙江省哲学社会科学重点研究基地首席教授も兼ねる。
日本語であいさつした王氏は、恩師として日本人の名前を次々に挙げ「独創的研究は自問自答に始まるとの教えは、私のあらゆる学術研究の原点になっている」「芸に遊ぶという本当の学問の面白さを味わい、学 問の道を興味津々と歩むことができた」など、恩師たちに対する感謝の言葉を述べた。
写真2 あいさつする王勇氏(国際交流基金提供)
王氏以外の受賞者・団体は、作曲家の冨田勲氏とルーマニアのシビウ国際演劇祭。冨田氏の最新作「イーハトーヴ交響曲」は、今年5月に中国政府の要請で北京でも上演され、大きな反響を呼んだ。シ ビウ国際音楽祭は1993年のシビウ学生演劇祭を起源として1994年に発足した。年々、規模が拡大し、現在では6月の10日にわたる会期中、7 0を超える国から約430もの団体が参加する欧州でも指折りの国際演劇祭となっている。