【16-11】10周年迎えた中国高校生長期招へい事業
2016年 7月20日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)
国際交流基金日中交流センターの中国高校生長期招へい事業「心連心」が10周年を迎えた。7月15日、都心のホテルで「第十期生帰国前報告会」に併せて「設立十周年記念レセプション」が開かれ、日本在住の招へい生OB、OGや支援者の高校教師、ホストファミリーなども交えて、10周年を祝った。
報告会では、昨年9月から北海道から沖縄まで26道府県、29の高校で勉学、部活動に励んだ中国人高校生31人が1人1人、阿南惟茂日中交流センター長から修了証書を授与され、11カ月間の日本生活の感想を述べた。31人の中には、熊本県立宇土高校で学校生活を送っている最中に熊本地震に遭遇し、神奈川県に避難した後、京都府の立命館宇治中学校・高等学校に転校、さらに帰国直前、再び宇土高校に戻るという希有な体験をした侯天妍さんのような生徒もいる。
写真1 報告会の様子。中央は阿南惟茂センター長。
「地震の時に何で私だけ熊本を離れるのかという気持ちだった。熊本での貴重な思い出を大切にしたい」。31人の日本での生活ぶりを紹介したビデオの中で、侯さんが京都から3カ月ぶりに再び宇土高校に戻り、全校生の前であいさつする姿も紹介された。来賓としてあいさつした胡志平駐日中国大使館公使参事官も、侯さんに対するホストファミリー、宇土高校の教師、生徒たちの暖かい対応に感謝の意を表していた。
写真2 胡志平公使参事官
日中交流センターは、日中の青少年交流・市民交流を目的として2006年に国際交流基金の中に創設された。中国高校生長期招へい事業「心連心」は、設立初年度からスタートした。毎年、30人前後の高校生が中国から招へいされた高校生たちは、9月初旬から翌年7月下旬まで日本各地に分かれ、ホームステイ先や学生寮に滞在しながら、日本の高校生たちと同様の生活を送る。ビデオやあいさつの中で、何人かの生徒たちが強調していたのは、部活動の体験だった。中国の高校は勉学一辺倒で部活動というのはない、という。
横須賀総合高校で剣道部に入ったという李依桐さんは、練習がつらくてやめようと思った時、顧問の先生からかけられた言葉を紹介した。「学校は友達を作る場。自分だけ強くなろうとせずに、相手の気持ちも考え、理解して一緒に強くなるのが大切だ」。この一言で疲れているのは皆も同じと気づき、練習を続けた結果、同じ学年の強い相手に勝つことができたと報告し、会場の温かい笑いを呼んだ。
堀俊雄日中交流センター事務局長によると、06年の第一期生から今回修了証を授与された第十期生まで合計329人のうち、すでに高校を卒業している招へい生徒は268人。この中で、進学や就職で再来日し、現在日本に在住している数は125人に上る。例えば第一期生37人のうち、8人が日本で就職しており、大学院生が2人、大学生が4人いる。高校を卒業したばかりの第8期生では、8人が日本の大学で学び、他に4人が予備校に通う。「高校を出た47%が再来日しているという数字は大きいといえるのでは」と堀氏は胸を張る。
今回、修了証を授与された第十期生を代表してあいさつした李顔秀さんからも、「優しく接してくれた方々への感謝の気持ちを持ち、招へい生としての責任を理解できたのは、中国にいては分からないことだった。11カ月の有意義な経験を生かし、中国に戻ってからも頑張りたい」と、頼もしい言葉が聞かれた。
写真3 李顔秀さん