【16-15】日中の科学技術発展のための強固なネットワーク―20周年を迎えた全日本中国人博士協会
2016年 8月24日 中国総合研究交流センター編集部
8月20日、日本医科大学大講堂で「全日本中国人博士協会設立20周年記念式典ならびに深圳市2016東京科学技術イノベーションフォーラム」が開催された。
日本で博士号を取得した中国人により組織されている全日本中国人博士協会が今年で20周年を迎え、この式典には日本全国から、また中国から多くの中国人博士号取得者および関係者が参加した。
全日本中国人博士協会は1996年、日本の教育機関、研究機関、民間企業など活躍する中国人博士ら、日本で博士号を取得後中国へ帰国した博士らにより設立され、研究協力と学術交流の促進、情報共有、日 中両国の各分野において架け橋としての役割を果たし、社会に貢献することを主な目的としている団体である。
博士協会は発足以来、電子ネットワーク、年会、国際シンポジウム、セミナーなどを通じて会員同士で、また会員と国内外の研究者と間で学術交流、研究交流を展開し、日 中の科学技術振興に関する活動を積極的に行ってきた。また四川大地震、東日本大震災、直近では江蘇省塩城市の竜巻災害など、日中両国で大きな災害が発生した際には、復興支援のための募金活動にも力を尽くしてきた。
写真1 記念式典の集合写真
深圳市駐日経済貿易代表事務所代表の于智栄氏による開会挨拶につづき、滕勁兵全日本中国人博士協会会長は96年の設立から現在までを回顧した。協会はこの20年間、一歩一歩健全に発展をつづけ、設 立当初49名であった会員数が徐々に増加し、現在では576名となり、20年後の設立40周年の際には会員数が1000名となるように、そしてさらに日中の相互理解に貢献したいと目標を語った。
写真2 滕勁兵会長によるスピーチ
基調講演では「東アジアの学問に国境なし」というタイトルで、元内閣総理大臣の鳩山由紀夫終身名誉顧問が登壇した。鳩山氏は日中関係には困難な時期もあるが、そ のような中でも活躍しつづける会員各位の存在そのものに大変意義があり、大きな役割を果たしてきたことに敬意を表したいと述べた。
写真3 鳩山由紀夫終身名誉顧問
企画講演では各分野の専門家による講演が行われた。和歌山大学副学長でもある呉海元教授は「視覚をもつコンピュータ」と題して最新の顔検出技術や頭部三次元姿勢推定、顔 特徴点の検出などについて豊富な写真や動画を用いて分りやすく説明した。
写真4 和歌山大学の呉海元教授
産業界からは華為技術日本株式会社の李軍軍常務執行役員が登壇した。李軍軍氏は自社の技術動向を中心に論じたが、そ こから中国企業の研究開発人材と研究開発費の投入の度合いが日本企業のそれらを上回る勢いにあることが伺えた。
写真5 華為の李軍軍常務執行役員
本式典の会場である日本医科大学付属病院医師の李卿氏は森林医学の可能性について非常に魅力ある議論を展開した。李卿氏は森林浴がストレスなどに起因する生活習慣病に対して効果があることを、長 年にわたる実証実験によって明らかにした。李卿氏によると、森林浴によりNK細胞が活性化され免疫機能が改善し、また血圧や血糖値を下げる効果もあることが判明したという。
写真6 日本医科大学付属病院の李卿医師
企画講演の最後には、科学技術振興機構中国総合研究交流センターの米山春子参事役が、中国総合研究交流センターがこれまで展開してきた日中の科学技術交流について、各事業を具体的に紹介しながら論じた。場 内からは特に「日本・アジア青少年サイエンス交流事業」(さくらサイエンスプラン)に対する関心の高さが伺えた。
写真7 科学技術振興機構の米山春子参事役
祝賀・懇親会では、中華人民共和国駐日本国大使館の陳三虎参事官、景春海参事官から、協会のこれまでの功績を讃えるとともに今後の更なる発展を期待しているとのスピーチがそれぞれ寄せられた。
写真8・9 陳三虎参事官・景春海参事官