【16-22】日中韓の信頼関係まだまだ 中国の影響力拡大予測回答は減少
2016年11月7日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)
日本の民間非営利団体「言論NPO」が2日発表した中国、韓国のシンクタンクと共同で行った日中韓3カ国の世論調査の結果、3カ国とも他の2国に対し「信頼できない」とする答えが多数を占めた。一方、1 2月に開催予定の日中韓サミットでは「関係向上に向けた広範な話し合い」を望む人が、3カ国とも3割程度を占めることも明らかになった。今後10年間のアジアにおける中国の影響力が拡大する、と予想する答えが、参 加国とも昨年に比べて軒並み減っているのも目を引く。
この調査は、今年6月から9月にかけて言論NPOが中国と韓国のシンクタンクと共同で実施した。訪問留置回収法(日本)、対面式聴取法(中国、韓国)で合計約3,500の回答を得ている。
日本では、中国に対し76.1%、韓国に対し57.6%の回答者が「信頼できない」と答え、中国では、日本に対し78.9%、韓国に対し61.1%が「信頼できない」と答えた。また韓国では、日 本に対し75.7%、中国に対し61.0%が「信頼できない」と答えた。
昨年の共同世論調査と比べてみると、日本の中国に対する見方は、「信頼できない」が77.1%から1ポイント低下したが、「信頼できる」も9.0%から6.8%と約2ポイント低下している。韓 国に対しては、「信頼できない」は69.2%から約11ポイント低下、「信頼できる」が15.6%から23.1%へと7ポイント以上増えている。
昨年の共同世論調査に比べ、中国の韓国に対する見方が大きく変化しているのが目を引く。「信頼できない」とする答えが、昨年の36.8%から約24ポイント増える一方、「信頼できる」という答えが、昨 年の56.3%から34.9%へ約20ポイント急減している。
こうした結果について、言論NPOは「3カ国の間で信頼関係ができていないことが明らかになった」としている。
図1 10年後のアジアにおける中国の影響力
(言論NPO提供)
共同世論調査が重視しているアジア地域の将来に対する3カ国民の意識について、いくつかの重要な変化があったことを言論NPOは指摘している。一つは、昨 年の調査結果との比較から明らかになった中国の影響力に対する見方の変化。今後10年間のアジアにおける中国の影響力が拡大する、と予想する答えが過半数を占めているのは3カ国共通だが、い ずれも昨年より減少している。
中でも中国自身、影響力が拡大すると予想する答えが明らかに減っているのが目立つ。昨年は82.5%だったのが、今回が66,4%にとどまり、1.6%だった「減少する」が5.7%に増えている。中 国の影響力が「拡大する」と予想する答えは、日本でも昨年の60.3%から51.9%に、韓国も80.0%から71.2%に減っている。
日本の影響力について、日本自身は「増大する」との答えが昨年の17.8%から28.5%に増えたが、中国、韓国で「増大する」と見る人は、それぞれ10.2%から11.6%、19.8%から22.9%へ とわずかな増加にとどまった。
12月初旬に開催予想の日中韓サミットで議論すべき課題については、3国で答えが割れた。日本では「北朝鮮の核問題」が51.2%と最も多かったのに対し、中国では「首脳同士の信頼関係の向上」( 30.9%)、韓国では「歴史認識問題」(44.0%)を挙げる答えが最も多かった。日中韓で比較的多くの人(3割程度)が一様に「議論すべきだ」として挙げたのは、「日中韓の関係向上に向けた広範な話し合い」だ った。
図2 日中韓サミットで議論すべき課題
(言論NPO提供)