【16-23】中国科学技術行政官一行の歓迎会開催 日本の訪中経験行政官とも交流
2016年11月16日 小岩井 忠道(中国総合研究交流センター)
日本・アジア青少年サイエンス交流事業「さくらサイエンスプラン」の一環として来日した中国科学技術行政官一行40人の歓迎会が11月10日、東京都内で開かれた。交 流事業を担う科学技術振興機構中国総合研究交流センターが主催した。前日、日本に着いたばかりの一行は、日本側参加者たちと懇談するとともに、川崎市中原区文化協会会長で日舞・扇乃会代表でもある藤嶋とみ子さん( 藤嶋昭 東京理科大学学長夫人)らによる日本舞踊など日本文化体験ショーを楽しんだ。
一行は、同日午前に内閣府、文部科学省を訪問したのに続き、11日は科学技術振興機構や中小企業基盤機構などを訪れた。12日に関西に移動して、京都、奈良、大阪の企業の研究所や工場と大学を訪問し、日 本の科学技術の現場を見た後、16日午前、関西空港から帰途につく。
さくらサイエンスプランは、アジア地域と日本の青少年が科学技術の分野で交流を深めることを狙い、アジア各国から招いた青少年が1~3週間の滞在中に日本の科学技術に触れ、あ るいは日本の研究者と短期の共同研究を行う。2014年に発足して以来、招聘(しょうへい)者の数も年々増え続け、3年目の今年度は、約5千人の予定。中 国の科学技術行政官を対象にした特別プログラムも毎年実施されている。
今年、招聘された一行は、中国科学技術部の5人に加え13の省、自治区、市から選ばれた地方の科学技術行政官35人からなる。総勢40人中、女性が13人含まれており、科 学技術行政分野でも女性の活躍が進む中国の実情をうかがわせる人員構成となっている。さくらサイエンスプランの特徴の一つは、招聘者を原則、日本滞在の経験がない40歳以下の青少年、としていること。招 聘者を代表してあいさつした団長の姜小平 科学技術部国際合作司調研員は、「特に近年、中国と日本の関係が悪い時に大きな予算を確保して両国の友好に大きく貢献したことに感謝したい」と、さ くらサイエンスプランに謝意を表した。加えて「今回の一行は、日本の要請に応じ、ほとんどが初めての日本訪問者。日本の科学技術の先端を見、日本人の親切さや日本文化にも触れて、成果を挙げてほしい」と 団員たちに要請した。
姜小平 科学技術部国際合作司調研員
姜氏に先立ってあいさつした駐日中国大使館の呉松一等書記官は、さくらサイエンスプランがスタートした2012年に中国科学技術行政官特別プログラムで来日し、内閣府、文部科学省、経済産業省のほか、地 方の大学、企業などを訪ねた経験を持つ。当時は海南省の行政官だった。氏は「さくらサイエンスプランにより日本を訪問ができたのがきっかけで、駐日中国大使館勤務となり、今 こうして皆さんとお会いすることもできた。1週間という短い期間だが、自分の目で日本を確かめ、帰国してからも両国関係について考えていただきたい」と 中国科学技術行政官特別プログラム招聘者の後輩たちに呼びかけた。
呉松一等書記官
呉氏の前に主催者を代表して歓迎のあいさつをした沖村憲樹科学技術振興機構特別顧問は、先月、中国政府の招きで日本の科学技術行政官、大学・国立研究開発法人の研究者・管 理担当者ら77人と共に中国を訪れたばかり。1週間、北京や地方都市で中央・地方の科学技術政策担当者と意見交換し、科学技術施設、関連企業などを見学してきた。
沖村憲樹科学技術振興機構特別顧問
この訪問は、中国科学技技術部が今年からスタートさせた「中日若手科学技術担当者交流計画」による。同計画は、さくらサイエンスプランの意義と実績を評価した駐日中国大使館の積極的な働きかけもあり、実 現した。10月に沖村氏とともに訪中した一行は、科学技術振興機構の人間以外、ほとんどが初めての中国訪問だった。歓迎のあいさつの中で沖村氏はこの訪問に触れ、「日本の若い行政官たちは、中 国のあまりの発展ぶりにびっくりして帰ってきた」ことを紹介した。呉氏も「中国の科学技術行政官が日本に招聘されるさくらサイエンスプランによる一方的な交流だけではなく、中国科学技術部の予算で日本の行政官、研 究者の中国招聘が実現した」と計画の意義を強調した。
会場には、中国を訪問したばかりの文部科学省の行政官ら3人の姿もあった。水野晋輔 大臣官房人事課給与第二係長は、「日本なら一つの研究施設に1台しかないような大型機器が2台設置されていた。理 由を聞いたら、急な研究変更などに備えて2台置いているとのこと。日本とは研究予算の規模が全く違う」と、科学技術行政における中国の勢いを肌で感じた驚きを率直に語っていた。
日本舞踊と着付けを楽しんだ行政官たち(後列、前列は藤嶋とみ子さん=左端=ら日舞・扇乃会会員)